大学や企業向けにリアルタイムアンケートシステム”respon (レスポン)”を提供しているレスポンは2019年3月28日、アンケートに対する自由回答をAIでリアルタイムに仕分けする新システムを開発したと発表した。
現在、大学や大規模な企業イベントなどで実証実験を進めており、2019年中のサービスリリースを予定している。
スマホを使ってアンケートに回答できるリアルタイムアンケートシステム
“respon”はスマホを使ってアンケートに回答できるリアルタイムアンケートシステムである。
参加者が自分のスマホから質問の回答を送ると、その集計結果がリアルタイムにビジュアル化され、参加者へ即座にフィードバックされる。
同社によると、当初は大学などの教育機関向けのアクティブラーニング・ツールとしてサービスを開始したが、最近では企業の展示会やセミナー、研修、学会など、さまざまなイベントでも活用が広がっているという。
大きな特長は「選択回答」だけでなく、「自由回答」のアンケートも実施できること。教員が授業中に”respon”で学生に意見を求めると、教室にいる全員の自由回答がリアルタイムに集計され、スクリーンやスマホ画面上に表示される。
「挙手して一人ずつ発言する」という従来の方法では、授業時間内に意見を言える学生の数が限られていたのに対し、”respon”なら、数百名の学生が受講する大教室であっても、全員が意見を発信し、その場で閲覧・確認・共有できるため、学生の参加意欲を高めることができる。
ただ、これまでは、投稿された数多くの自由回答の中から「ユニークな意見」を探したり、「多数派の意見」「全体の傾向」などをその場で分析したりするのは、アンケート実施者(大学ならば教員)のスキルに大きく依存していた。
これが数十人単位なら人間のスキルで対応できたが、企業などの大規模イベントとなると、数千~数万に及ぶ自由記入のコメントが集まることがある。こうした大量のコメントの場合、それらをイベント中に分析・分類することは非常に難しい。
こうした課題を解決するために、レスポンではAIを使ったテキスト解析エンジンを新たに開発。自由回答の文章を瞬時に解析して分類する「AI仕分けシステム」の実用化に成功した。
このシステムは、投稿された自由回答をAIが解析して類似のコメントごとにグルーピング 回答の傾向をわかりやすくビジュアル化するとともに、各グループの中で特徴的なコメントの抽出も行う。
この解析エンジンを使うことで、どんなに大量の回答であっても、瞬時に「どのような回答が多いか」を分析・仕分けできるようになる。
AIを活用した活用する新しい双方向型教育スタイルの構築へ
レスポンでは、2018年よりこのシステムの開発を進めており、解析エンジンの精度や有効性を検証するために、東洋大学が過去に “respon”を使った授業で集めた大量の回答データをサンプルとして改善を進めてきた。
そうした中、2019年1月18日、同大学の松原聡副学長による特別講義において本システムの運用試験を実施。AIをリアルタイムに授業支援ツールとして活用する新しい双方向型教育スタイルのレビューを行った。
その結果、「AIの文書仕分けにより、学生の意見の傾向が即座に明確になった」「ユニークなコメントも抽出されるため見逃すことがなくなった」「学生にとって、自分と似た意見の人やまったく違う意見の人がどれくらいいるのかがすぐにわかることは、従来の授業ではあり得なかった」などの感想が寄せられた。
また、4月1日に行われる、ある大企業の入社式においても同システムが使われる。
全国5カ所の入社式会場を中継し、”respon”で数千名の新入社員に対してリアルタイムアンケートを実施。「将来の夢」について質問し、参加者の自由回答を会場にて分析する。新入社員全員の回答の仕分けに加え、会場ごとの傾向も出力し、その結果を比較する予定だ。
なお、このAI仕分けシステムは現在特許出願中。”respon”の新たな付加サービスとして、2019年中にサービスを開始する予定である。