評価額10億ドル(約1,100億円)を超える未上場企業は「ユニコーン」と呼ばれている。CBインサイトによると、現時点でインドでは13社のユニコーン企業が存在する。
そのうちの1社であるフードテック企業Zomato(評価額20億ドル)は、事業の1つであるフードデリバリーにおいてラストマイル・デリバリーの強化のためドローンや電動サイクルを導入する計画だ。
2008年レストラン検索プラットホームとして登場したZomatoだが、現在はデリバリー、レストラン予約、テイクアウトなど飲食に関わるさまざまなサービスを提供している。
インドを含む世界24カ国で事業を展開しており、サービス利用者は5,500万人。プラットホーム上で登録されているレストラン数は140万店以上、1カ月あたりのオーダー数は2,800万件に上る。
さまざまな事業を展開するなかで、主力となるのがフードデリバリーだ。2018年1月時点で、全事業におけるフードデリバリーの売上高比率は35%だったが、2018年末には65%にまで上昇した。
インド国内のデリバリー体制を整えるため、Zomatoは2017年に地元ロジスティクス企業Runnrを買収。Runnrには1万人を超えるデリバリー人材が登録されている。デリバリーは主にバイクによって行われている。
Zomatoのデリバリー人員
またZomatoは2018年末、インドのドローン開発会社TechEagleを買収。TechEagleが開発しているのは、ハブ間の飛行を可能にするドローンネットワーク。
Zomatoは、レストランからハブまでドローンで運び、そこからバイクや自転車などで注文者まで届けるラストマイル・デリバリーの仕組みを構築しようとしているようだ。
中国・上海でアリババ傘下の「餓了麼(ウアラマ)」が試験運用しているデリバリーサービスと同様のものと考えられる。
インド国内ではこれまでドローン利用が厳しく規制されており、デリバリードローンの利用は難しいとされてきた。しかし、2019年3月に「ドローン・ポリシー2.0」が施行されることで、デリバリードローンを利用できるようになる。
産業ドローンの飛行を全面的に禁止してきたインド政府だが、ドローン利用を促進するために「ドローン・ポリシー2.0」を含め、近年さまざまな取り組みを行っている。
2018年8月、インド政府はドローンの種類や飛行条件を規定した「ドローン・ポリシー1.0」を発表。国内のドローン利用を促進するためのルール作りの第1歩として、多くの関係者から注目を集めた。
ただし飛行条件は厳しく、夜間飛行禁止や目視外飛行禁止などが含まれており、この条件下ではドローンデリバリーは難しい状況だった。
しかし、2019年3月から施行される「ドローン・ポリシー2.0」では空飛ぶタクシーの利用などを想定したルール作りがなされており、目視外飛行を許可することが盛り込まれている。これによりドローンデリバリーもルール上可能となる。
インドの多くの都市では大気汚染が深刻化している。Zomatoはドローンを利用することで、バイク利用を減らしたい考えだ。
2019年2月、Zomatoはこの一環でラストマイル・デリバリーに電動サイクルを導入することを発表。バイクから電動サイクルにシフトし、今後2年でデリバリーにおける電動サイクルの割合を40%にする計画だ。
現在、自転車でデリバリーを行っている人員はインド12都市に5,000人ほどいる。Zomatoは電動サイクルメーカーと連携し、デリバリー人員に電動サイクルを提供するという。
インドでは「世界ドローン連合」を創設する計画が浮上するなど、ドローンに関する動きが活発化している。そのなかでZomatoはどのような形でドローンデリバリーを実現するのか。その動向から目が離せない。
文:細谷元(Livit)