INDEX
2019年3月12日、あしたのチームが、「中小企業のシニア雇用に関する調査」の結果を公表した。
調査概要は、2019年2月19日~21日。全国の、従業員5人以上300人未満の企業の経営者、20歳~79歳の男女を対象としている。有効回答数は、300人。内訳は、東京都・大阪府に本社を置く経営者が150人、東京・大阪以外の道府県に本社を置く経営者が150人となっている。
結果、以下のようなポイントが明らかになった。
- 定年後のシニア人材を採用したことがある中小企業は、都市部で34.7%、地方で43.3%
- シニア雇用意向については、都市部で51.4%、地方で55.3%。いずれも過半数を超える
- シニア人材に期待することは、「即戦力としての活躍」。不安なことは、「本人の健康状態や親・配偶者の介護等による、急な退職・休職」
- 給与査定方法については、「成果に応じて給与を変動させ、年齢に応じた給与の調整は行わない」がトップ
中小企業における、シニア雇用の実態
調査ではまず、「あなたの会社に、現在60歳以上の従業員は何人いますか」とたずねている。
結果、都市部の企業では平均「3.0人」、地方の企業では平均「5.7人」となった。都市部に比べて、地方の企業で60歳以上の従業員数が多いことがわかる。
また、60歳以上の従業員を1人以上雇用しているという回答は73.7%だった。
次に、「あなたの会社で定年後のシニア人材を採用したことがありますか」と質問した。
「ある」という回答は、都市部で34.7%、地方で43.3%という結果が出ている。
調査を行ったあしたのチームでは、「若年層の人口流出などにより人材確保が難しい地方企業では、定年後のシニア人材も貴重な労働力として雇用しているのかもしれない」と分析している。
シニア雇用に対する意識
調査では、「65歳超雇用推進助成金」の認知・利用状況について調べている。
これは、厚生労働省が65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用環境整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成する制度だ。
結果、「名前は聞いたことがあるが、内容までは知らない」、「知らない」の割合を除いた認知割合は都市部で43.4%、地方で48.6%となっている。
またすでに申請・利用している企業の割合は都市部で4.7%、地方で12.0%。地方企業の1割以上が、助成金を利用してシニアを雇用していることがわかった。
つづいてシニア雇用意向について、「あなたの会社で今後、定年後のシニア人材を採用したいと思いますか」、と質問した。
今後、シニア人材を「採用したい」・「やや採用したい」をあわせた割合は、都市部で51.4%、地方で55.3%となった。いずれも、半数を超える結果となっている。
採用したい理由としては、人材確保のほか、「信用できる」、「様々な経験・スキルが、会社全体に効果が期待できそう」、「若手を育成していくためにも経験者が必要」などが挙がった。
採用したくない理由では、「力仕事やパソコン作業など業務内容がシニアにとって適応が難しいと考えられる」といった回答のほか、「仕事を覚えて慣れるまでの速度に対する不安」や、「教育をするリソース不足」などの声が出ている。
シニア人材に対する期待と課題
シニア採用意向のある経営者に対し、「あなたの会社では、どのような効果(成果)を期待してシニア人材を採用したいとお考えですか。」と質問した。
もっとも多い回答は、「即戦力としての活躍」68.8%だった。次いで、「技術やノウハウの継承」53.1%。都市部と比べて地方で「技術やノウハウの継承」の回答割合が多くなっている。
同社では、「深刻な少子高齢化の中、事業そのものや、その土地ならではの技術・ノウハウを継承していくために、次の世代に伝えていく役割をシニア人材に期待しているのかもしれない」と考えているようだ。
つづいて、シニア雇用に対する不安や課題について、「あなたが定年後のシニア人材を採用(受け入れを)することに対し、不安に思うことや課題をお答えください。」とたずねている。
第1位は、「本人の健康状態や親・配偶者の介護等による、急な退職・休職」で58.1%となった。
シニア世代は、本人の健康状態の不安に加え、親や配偶者も高齢であることから介護等で急に働けなくなってしまうことが予想されるという。「戦力として期待するからこそ、急な退職・休職をリスクと感じる経営者が多い」と考えられるようだ。
第2位は「雇用者としての安全配慮(健康管理・労働環境整備など)」38.1%。4割近くが回答した。
同社では、「シニアを雇用する場合、勤務時間・シフトや、設備面などこれまで以上に安全配慮をしなければならないと感じるのかもしれない」と推測している。
第3位は「シニア人材の査定・人事評価」で、26.9%となっている。
調査では、シニア人材の給与査定方法についても調べている。「シニア人材を採用する際に、給与査定はどのように行ないますか」とたずねた。
もっとも多い回答は、「成果に応じて給与を変動させ、年齢に応じた給与の調整は行わない」で39.4%。年齢に関わらず、他の社員と同じ条件で成果を基準に評価したいという意見が多い結果だ。
同一労働・同一賃金、モチベーションの維持といった理由がみられた。
次いで「成果に応じて給与を変動させるが、年齢に応じた給与の調整を入れる」28.8%。成果に対して評価はするものの、年齢に応じた水準を設定し、人件費を抑えたい考えがあるようだ。
一方で「昇給や昇進はなくし、一定の給与を支払う」も16.3%みられた。安全に無理なく働いてもらいたいということのようだ。年金との兼ね合い、との理由も上がっている。
「どのように報酬を決めるべきかわからない」の回答も14.4%ある。経営者にとっても経験や前例が少ないため、シニア人材の給与査定をどうするか、正解のわからない課題になりそうだという。
最後に、シニアに対するイメージを調べた。「シニア(65歳以上)に対するイメージをお答えください」と質問している。
第1位は「真面目である」40.7%、第2位は「仕事が丁寧」32.3%。仕事に向かう姿勢に関する、ポジティブな評価が上位となった。
一方で、「身体が衰えている」31.0%、「IT・機械に弱い」29.7%、「フレキシブルな対応が難しい」29.3%といった弱点も挙げられている。
この結果について同社では、「弱点があっても、『真面目』で『仕事が丁寧』な人材は、取り組み方を工夫すれば弱点をカバーできる可能性が期待できる。人材不足や、人生100年時代を背景にセカンドキャリアへの関心・ニーズが高まる中、中小企業にとってはシニア人材を活用する体制・準備を整えることが必要となってくるのではないか」との考えを示している。
<出典元>
「中小企業のシニア雇用に関する調査」
あしたのチーム