2018年8月に発表した「ドローン・ポリシー1.0」でドローン・ソフトウェア分野への注力を明らかにし、さらに同年末ドローン専用プラットフォーム「Digital Sky」をローンチしたインド政府。
2019年1月には、ドローン回廊の構築と事業者のライセンシングを担当する専門政府機関の設立を検討していることを明らかにするなど、2018年後半頃から本腰を入れてドローン活用を進めていく姿勢を国内外に向け発信し続けている。
インド政府の野心はこれにとどまらない。
2018年末地元紙エコノミック・タイムズが伝えたところでは、インド民間航空省のシェファリ・ジュンジャ次官補が世界VCサミットで、インド政府主導で「世界ドローン連合」の創設を検討していることを明らかにした。
ジュンジャ次官補によると、世界ドローン連合は2015年にインドのモディ首相が提案し、後に世界121カ国が参加するようになった「国際太陽光連合(ISA)」のような組織を想定しており、ドローン利用に関する共通の目的設定、技術・法規制の標準化を目指すという。
世界ドローン連合創設に向け、インド政府はすでにイスラエルと欧州連合に働きかけを行っている。
現時点で、地域別では欧州の「欧州ドローン連合(Drone Alliance Europe)」や米国の「商業ドローン連合(Commercial Drone Alliance)」などがあるが世界規模の組織は存在しておらず、ドローンの開発・利用は各国独自の裁量で進められている。
新しいテクノロジーが世界中に広く普及するためには、技術・法規制の「標準化」がカギになることが多い。もし世界ドローン連合のような世界的組織が創設されれば、ドローンの普及を後押しすることになるはずだ。
英マンチェスター大学傘下のイノベーション研究所が2013年に発表したレポートは、標準化とイノベーション普及の関連についていくつかの示唆を与えている。
新しいテクノロジーを標準化すると、取引コストが低下し、国家間の貿易が促進することが考えられる。また、標準化によって取捨選択が起こり、注力分野における開発速度が高まることも見込まれる。
そうなると、新しいテクノロジーへの信頼度が上がり、一層の投資資金が流れ込み、テクノロジーが確立・定着する。
この状態になれば、規模の経済を追求し、コストを抑え利益率を高めていくことも可能となる。
さらにこれがインセンティブとなり、新たな投資を招き、テクノロジーが広く普及するという流れだ。
インド政府がイニシアチブを取り設立した国際太陽光連合のこれまでの動きは、世界ドローン連合の今後の展開を予想する参考になるかもしれない。
国際太陽光連合は、2015年11月英ロンドンのウェンブリー・スタジアムでインドのモディ首相が設立を提案。同年12月にパリで開催された国連気候変動会議で、当時のフランス大統領フランソワ・オランド氏とモディ首相が共同で同イニシアチブの開始を宣言した。
国際太陽光連合の目標は、温室効果ガスを削減するために太陽光の利用を増やそうというもの。インド政府は2022年までに太陽光発電量を100ギガワットに、また2030年には太陽光を含む非化石燃料による発電割合を40%に高めることを目指している。
国際太陽光連合の包括協定にはこれまで世界73カ国が調印(批准は50カ国)。包括協定への調印・批准は行っていないものの、連合に参加している国はこのほかに50カ国ほどあり、合計120カ国以上が参加する大規模なイニシアチブに拡大している。
インド政府が設立を目論む世界ドローン連合。国際太陽光連合のような世界的なイニシアチブに発展することになるのか。今後の展開に注目していきたい。
文:細谷元(Livit)