アマゾンの「プライム・エア」、DHLの「パーセル・コプター」に加え、中国アリババ傘下のフードデリバリー「餓了麼(ウアラマ)」の取り組みなど、デリバリードローンの開発競争は激化の様相を呈している。
ビッグネームが名を連ねるデリバリードローンの開発競争で、イスラエル発のスタートアップに熱い視線が注がれている。
イスラエル・テルアビブで2013年に設立された「Flytrex」だ。ドローンオペレーター向けの自動飛行デリバリー管理システムを開発しており、現在アイスランド・レイキャビクや米ノースダコタなどでデリバリードローンの試験運転を実施している。
2017年1月に300万ドル(約3億3,000万円)、2018年1月に750万ドル(約8億2,500万円)を調達。
このほど米連邦航空局(FAA)のドローン・インテグレーション試験プログラムへの参加が認められ、ノースカロライナ州で2019年中にデリバリードローンの試験運用を開始する見込みだ。
アイスランド・レイキャビクでは、地元のEコマース・フードオーダープラットホームAha.isと提携し、同プラットホームで予約された料理をドローンで配達する取り組みを2017年から実施している。
Flytrexが提供する通常のドローンデリバリーサービスは、予約した人の家にもっとも近い所定の着陸ポイントまでドローンが配達し、そこまで予約した人が取りに行く仕組みになっている。
現在、レイキャビク市内には14カ所のドローン着陸ポイントが設置されている。
レイキャビクでのドローンデリバリーの様子(YouTube Flytrexチャンネルより)
一方、アップグレード版のデリバリーサービスでは、予約した人の家の上空まで飛行し、ワイヤーを使いデリバリーボックスを裏庭に降ろすことが可能だ。現在、アップグレード版デリバリーは、所有者から許可された一部の住宅のみで提供されている。
今後、許可を得て利用できる住宅を増やしていく計画だ。このアップグレード版デリバリーでは、ドローンが荷物を降ろす作業をアプリから指示するという。
ドローンデリバリーを活用することで、デリバリー時間の短縮だけでなく、温室効果ガスや交通渋滞を緩和することも可能になるかもしれない。
Aha.isによると、デリバリードローン1台あたり配達車3〜4台分のデリバリーをこなすことが可能という。ドローンの1時間あたりのデリバリー数は15件。配達員だと3件ほど。圧倒的な効率化も実現できる。
一方米ノースダコタでは、2018年9月からKing’s Walkゴルフ場でドローンによるフードデリバリーを開始。Flytrexのアプリで予約すると、所定の着陸ポイントまでドローンがスナックや飲み物を届けてくれる。
King’s Walkゴルフ場でドローンデリバリー(YouTube Flytrexチャンネルより)
2019年に米ノースカロライナで開始されるドローンデリバリー実験。FAAが同国航空システムにドローンを統合する際、どのような規制が必要になるのか、それを見極めるために実施される実験だ。Flytrexのほかにもいくつかのドローン企業が参加している。
市場調査会社Coherent Market Insightsによると、世界のドローンデリバリー市場は2018〜2026年にかけて年率22.3%で伸びる見込みだ。
アマゾンやDHLなど大手企業を相手に、小さなスタートアップFlytrexがどのような活躍を見せるのか、大きな期待が寄せられる。
文:細谷元(Livit)