エンジニアはティンダーで発掘。女子大生起業家「川井優恵乃」が挑戦する美容業界のアップデート

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2018年はビューティーテック元年と呼ばれ、「美容」×「テクノロジー」でさまざまなイノベーションが起こった。時代の流れを受け、「美容」×「テクノロジー」の領域で新たな挑戦をすべく立ち上がった美容系スタートアップ企業が、次々と進出を果たしている。

今回は、「美容整形」×「テクノロジー」で美容アップデートを起こしている株式会社Meily(メイリー)の代表取締役であり、美容医療SNS 『Meily』の産みの親でもある川井優恵乃氏から話を伺った。

美容医療の市場規模は年間7,200億円と言われ、市場としては相当大きい。しかし業界変化が長年起きていないために、ユーザーの検索利便性や不安を解消するための代表的なツールがこれまで登場してこなかった。

この業界にテクノロジー面から変化を起こし、「美容医療に悩むユーザーへ価値のある情報をスムーズに届けたい」と立ち上がったのが川井氏だ。なぜ、彼女はその世界を変えようと立ち上がったのか。

川井 優恵乃
株式会社Meily CEO/中央大学休学中
1995年生まれ。中央大学経済学部休学中。株式会社Meily 代表取締役。顔の整形にかけた金額は430万円を超える。同大学4年生の時にMeilyを立ち上げる。NOW株式会社・YJキャピタル株式会社・EastVentures株式会社・フリークアウト本田氏をはじめとする複数の個人投資家から2回の資金調達を実施。

原体験があるから“美容医療の不安”を取り除きたい

—— 川井さん、今回はよろしくお願いします。早速ですがこの記事ではじめてMeily(メイリー)を知る読者のために、簡単にサービス内容について教えてください。

川井:Meilyを一言で伝えると、“美容医療のSNS”です。美容医療や整形といった経験をした人だからこそ話せる体験や悩み、クリニックの口コミなど経験者の声をMeilyでシェアしてもらうことにより、美容整形の“分からないこと”で悩む人を減らしていきたいと思います。

――なぜ、「美容医療」をテーマにサービスを起こそうと思いましたか?

川井:理由は大きく2つあります。『⒈私自身の美容整形の原体験』と『⒉美容整形に関する情報を共有するプラットフォームの必要性』を感じたからです。

1点目は美容整形の原体験が関係します。私が顎の整形をしたとき、術後に顎が長くなるという経験をしました。原因は腫れですが、その時点では気がつかず「失敗したのかな?」という気持ちに襲われました。

担当をしてくれた先生に相談をしたのですが、先生は「大丈夫だよ、もう少したてば落ち着くよ」としかおっしゃらず、すごく毎日が不安で仕方がありませんでした。

伸びた顎が気になってそのままでは外に出られないのでマスクで隠して生活していたぐらいです。とにかく腫れが引くまでの2ヵ月は「元に戻らなかったらどうしよう?」という不安な気持ちでいっぱいでした。


――『美容整形に関する情報共有プラットフォームの必要性』についても詳しく教えてください。

川井:これまで美容医療は、“情報の非対称性がある分野”でした。つまり、美容医療の情報を求めている人は多くいるのに、情報が無かったり、見つかったとしてもTwitterやブログなどに点在するため、集めるまでに時間がかかったりするのです。

私の場合は原体験もあり、「実際に同じような手術を受けた人に意見を聞きたかった」と思っていました。確かに最近ではInstagramやTwitterでも1万以上の美容整形アカウントが情報を発信していますが、それでもオフ会やDMなどで話を聞いてみると、同じ気持ちを持つ人が多かったです。

エンジニアはTinderでマッチング採用

――ご自分の体験、同じように悩む周囲の声から美容整形プラットフォームの必要性を感じ、Meilyを作ろうと立ち上がったのですね。

川井:そうです。みんなも同じように悩むのであれば、「いっそ自分がアプリを作ったらよいのではないかな?」と考えました。

最初に韓国の整形に特化したWebサイトを自作しました。このときに「美容整形についてのレポートを書いてくれませんか?」と180人ぐらいにお願いしたところ、30人ほどが協力をしてくれました。内容を拝見して驚いたのが、とにかく情報が細かかったことです。中には写真をつけてくれる人もいました。

こうした反応から、美容整形に悩むユーザーは情報を共有できるサービスやアプリを必要としていると、手応えを感じましたね。

とにかくユーザーにとって価値のあるサービスを提供するためにも、「まずはエンジニアが絶対必要だな」と探し始めました。この当時は価値を届けることを優先して考えていたため、会社を起こすまでは考えておらず、結果として起業しました。

――ここから仲間集めがスタートしたわけですね。エンジニアはどのようにして探しましたか?

川井:最終的にTinder(ティンダー)というマッチングアプリを使い、今のメンバーに出会いました。最初は同じ大学の理系の人などに声をかけたのですが、すでに別のプロジェクトにアサインされていたり、内定が決まっていたりとなかなか人が集まらなくて・・・。

Tinderを触っていた時に、トップ写真に職業が出てくることに気付き「エンジニア」「デザイナー」をスーパーライクしていました。

――Tinderを使ったリクルート・・・。まさに新しいタイプのメンバー集め!

川井:そうですよね。このとき返信が一番早かったエンジニアさんに「美容医療に関するアプリを作りたいんです!」とメッセージで概要を伝え、プレゼンを聞いてもらうために会いました。このときは自分で作ったプロトタイプを見てもらうなどして、少しでもエンジニアさんに興味を持ってもらえるよう必死でした。

――そこから話はトントン拍子に進みましたか?

川井:おかげさまで、最初に会ったエンジニアさんとその彼が所属するチームメンバーが加わってくれました。初回の打ち合わせ以降、彼が所属するチームメンバーに会ったり、実際に美容整形をしたことのある私の友人にも、彼らに会ってもらいユーザーの声をヒアリングしてもらったりと、何度かやり取りをした上でジョインしてくれました。

当時は全員が副業での参加でしたが、現在は資金調達も済んでいるため、専業でコミットしてくれています。彼らがMeilyのビジョンに共感してくれたのはもちろん、私が美容整形の市場を把握していることや、ユーザーニーズの高さからも、「挑戦しない理由は何もない」と同じ船に乗ってくれました。

「420万で人生を変える」整形で自信のある未来へ

――ここからは、川井さんご自身のことについて伺います。今回Meilyを開発するにあたり、整形という原体験が背景にありますが、整形のきっかけやそのときの感情など教えてください。

川井:高校生の頃から二重にするためにアイプチをしていましたが、常に取れていないかが不安だったり、アイシャドウがうまく乗らなかったりして悲しかったので、その頃から「絶対に将来は二重にしよう」と決めていました。

初めて整形をしたのは大学生の時です。もう結構勢いでした。試しに“切らないで二重にできる″というクリニックへカウンセリングに行き、モニターで少し安くできるということだったので、それならやっちゃおうぐらいの気持ち。


川井さんの整形前の写真

――率直にはじめての整形をした感想はどうでしたか?

川井:患者のことを考えてくれる先生で、腫れなどによって日常生活に支障が出ないよう、「1年間幅が変更できるから、最初はナチュラルな二重がおすすめだよ」とアドバイスをしてくれました。施術後も特にまぶたが腫れることなく過ごせたため、「こんなもんなんだ」と最初は思いました。

そのあと、より二重を強調したかったので再度手を加えてもらったのですが、すごく腫れちゃって。そのタイミングでサークル合宿があったので、そのまま行きましたがみんなにバレました。正直、前が平気だったからと甘く見てましたね。

まだその時は整形を隠していたので「いや、大丈夫、大丈夫。整形じゃない」みたいな感じで言ったんですけど。みんなあんまり触れない感じでしたし、ちゃかす人もいない。「前の目元も良かったのにね」という優しい感じでした。

そこから顔の整形を重ね、およそ420万円近くをかけました。これはレクサスと同じぐらいの金額です。いわば顔面課金ですね。

――整形がナチュラルになじむときとそうではないときの両方を体験したのですね。実際に整形前後では、周囲の接し方や対応に変化はありましたか。

川井:かわいい子の仲間入りができたかなと思います。女の子たちの態度の変化が一番うれしいです。過去の私はスクールカーストだと底辺にいるような陰キャラでした。しかし今はかわいい子たちからご飯へ誘われ、一緒に行ける機会が増えました。

美容整形をしても「生きたいように生きられる」社会

――美容医療・整形に対するハードルや価値観は昔に比べて変わってきてはいると思いますが、やはり世間にはまだネガティブな印象を持つ人も少なくありません。Meilyはサービスを通してどのように周囲の価値観を変えていきたいと思いますか?

川井:まず世の中に伝えたいことは美容整形をしたからといって、その行為を批判するのではなく、「ほっといてほしい」です。どれだけ自分が生きたいように生きる世の中に、誰も口出ししないというのは美容整形にとっても同じテーマかなと。

しかしカジュアルに整形をし過ぎてもいいのかと言われるとそれもまた違うと思います。だからこそ美容整形の良い面だけを伝えてアピールするのではなく、リスク面や失敗例をしっかりと伝えることがMeilyの役割です。

「リスクがあることは分かるんだけど、でもそれでも私は整形をしたいんだよね」、それだったら別に整形をしても良いんじゃないという世の中にしていきたい。

――自分の意思決定で整形しているにも関わらず周囲から批判されるのは、違いますよね。Meilyを運営する中でこうした思いを感じたことがありますか。

川井:最近、ザ・ソーシャルというネット型配信番組にMeilyを取り上げていただきました。その時に頂戴した800件ぐらいのコメントを全て拝見させていただいたところ、やはり批判的な内容が多かったです。

やはりまだまだ世の中、特に30〜40代以降の男性が絶対否定的なんだなと思いました。別に否定的でもいいです。ただ、ほっといてほしい。整形をすることに関して受け入れられないのであればそれでいいから、なんでわざわざ「絶対僕は反対です」とコメントするのだろうと疑問を持ちます。

でも何かしらに批判したい人は一定数いる。日々の鬱憤(うっぷん)とか。それが美容整形っていう大多数が批判できるものだから、鬱憤晴らしに使われてると思うんです。

――実際に川井さん自身は心無い言葉を投げかけられたことはありますか?

川井:いいえ、私が接する人々の中で反対な人に会ったことはありませんよ。もしかしたら言わないだけかもしれません。

整形で見た目を変えて、その先にある自分に自信を持ちたい、生活をより良くしたいなど誰にも迷惑をかけないなら別に良いのではと、私たち以降の世代は絶対に強く思うと考えます。これからどんどん若い人が出てくるごとに、ほっといてくれる世の中になっていくんじゃないかと思います。

――最後に、Meilyというサービスを通してどのようなことを世の中に実現していきたいか、読者に向けてメッセージをお願いします。

川井:美容整形は、LGBTなどと同じでマイノリティーな部分だと思います。だからこそコミュニティーも出来はじめているので、そこでやっぱり幸せになれる人もいるんだよと知ってほしいです。

それに否定するような世の中じゃなくて、あってもいいよね、マイノリティーも普通のことだよねと思える寛容な世の中にしていきたいと思います。

文:杉本 愛
写真:西村 克也

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