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最近若い世代を中心に、ソーシャルメディアを使ってファッションにサステイナビリティーを求める活動がみられる。
個人消費者が大きなカギを握るファッション業界において、トレンドを作る若者から起こるサステイナビリティ活動は、スマートフォンを駆使する彼らならではの業界に訴えかける活動といえるだろう。
今回は、今若い世代がファッションにサステイナビリティーを求めている理由、ファッションをサステイナブルにしようとする様々な取組みを、オランダの活動を例にして紹介する。
忘れてはならないファッション業界の大惨事、ラナプラザ
サスティナブルファッションのムーブメントを起こすきっかけとなったのが、2013年4月24日にバングラデシュで死者1,134人、負傷者2,500人以上を出す最悪の惨事だった。
起きた原因は震災や津波など自然災害ではなく、ファッション産業が引き起こした完全な労働災害である。
事故は前日に予兆が出ていた。前日の4月23日、壁や柱にひびが入っているのを発見したラナプラザの従業員らがその事実をマネージャーに報告、地元警察は検査のための退去命令をマネージャーに出していた。
しかし、ビルのオーナーであるラナ氏は問題ないと主張。工場のマネージャーらはその意見に従い、従業員に仕事に戻らなければ、解雇の可能性があるとも話していた。
8階建て5つの縫製工場が入居しているビルでは、Benetton, Mango, Primark, Walmartなど、錚々たる欧米ビッグブランドの服飾品の下請けをしていた。
解雇を恐れた従業員がいつも通り出勤した翌日、午前9時頃にビルが停電し、違法に増築したビルの上層部に設置された発電機が稼働した。発電機の振動と動き出したミシンなどの機械の振動が共鳴して建物を揺らし、8階建てのビルの崩壊を引き起こした。
ファッション産業の汚点となった未曾有の惨事だ。
photo by rijans
消費者としてのミレニアル世代のファッションに対する意識
この事故から、グローバル展開する欧米や日本の大手衣料品業者が、バングラデシュの劣悪な労働環境や安価な労働力に依存して利益を上げている状況が浮き彫りとなり、世界的に業界の論議を生んだ。
消費者もこの事故にショックを受け、自分のお気に入りのブランドがどのような活動をしているのか調べたり、所持する服がどこでどうやって作られて来たのかを疑問に思い始め、それを追求する活動も出てきた。
Guerdianの記事では、80年代以降に産まれた若いミレニアル世代の44%が、より環境に優しい布地を衣類に使用したいと考えており、60,70年代に生まれたジェネレーションXの34%、団塊世代の30%と比較して、ミレニアル世代はサスティナブルなファッションに大きな関心があることが分かった。
マッキンゼー&カンパニーが出した「The state of fashion 2018」の調査結果でも、世界中の約60%のミレニアル世代が、持続可能な会社によってサスティナブルな方法でデザイン、生産された服に対してはもっとお金を払うつもりであることが判明している。
ただ単に安く流行を追ってゴミとなる服はクールではないと、関心を示さなくなっている若者も多くなってきているのだ。
携帯を使って新しい流行や思考をすばやく取り入れられるのも、ミレニアル世代の特権だ。サスティナブルファッションを支持する若いデザイナーや女優、俳優などの影響も大きくある。
最も有名なのは、環境に優しいファッションを発信するためにインスタグラムのアカウントを設定した、幼少期はハリーポッターでお馴染みのEmma Watsonだ。
彼女のインスタグラムからは、サステナブルに作製されたオシャレな洋服が、更新されるごとにミレニアル世代の目を奪っている。
サスティナブルファッションのオランダでの活動
このトレンドを反映して、オランダ・アムステルダムに2018年「Fashion for Good」という、サステイナブルなファッションの関心とその取り組みを発信する展示スペース、イベントスペースが登場した。
ここでは、常設展、企画展、イベント、ウェブサイトを通じて、「For Goodな(永続的に社会的意義のある)」ファッショントレンドとその作り手に関する情報を積極的に発信している。
展示室への訪問者はこの常時展示品を無料で観覧することができる。
Fashion for Goodの共同創始者であるMcDonough氏は、同社の理念として「5つの良いこと」を掲げて言っている。
「良いファッションとは、単に見栄えがよいファッションではありません。
安全、健康、そして再利用とリサイクルのために設計された良い素材。成長し、循環し、共有され、そして全員に利益をもたらす良い経済。再生可能でクリーンな持続可能なエネルギー。すべての人が清潔で利用可能な良い水。そして公正で安全、そして尊厳のある生活と労働条件である良い生活の、5つがあって成立します。
良いファッションは、単純に生産し浪費するのではありません。生産し、更新し、修繕する世界に向かって、5つの枠組みで実現するのです」と話す。
同Webサイトでは、消費者の生活に服が関わってくるサイクルを説明している。新しい服が必要かどうかの最初の検討から、再利用までのサイクルを全体的に考えてもらうように消費者を啓蒙している。
例えば、消費者が購入するものは、熟考の上必要と判断し、良い選択で選ぶことが勧められている。
良い選択とは、買うブランドのウェブサイトや企業責任報告書を読むことで社会的および環境的なコミットメントに関する情報を共有しているかを確認し、大好きなブランドを選定する点から入り、大ブランドであれば、ファッション透明度指標のランキングもチェックする。
欲しい製品が決まれば、そのラベルを確認し、各材料の割合を見る。同じ材料100%から作られた製品は一般的にリサイクルが容易だからだ。
有機繊維は生物多様性に優れており、有毒化学物質が生産に使用されていないため、綿または天然繊維を買うならば、有機的なものを選択する。
さらに、Fairtrade®マークや、グローバルオーガニック標準などの、認証マークがあるかどうかもチェックする。
最後に、さらに知りたいことがあれば企業への質問を促進。ウェブサイトに情報が見つからない場合は、その店舗のスタッフに問い合わせるか、メールまたはソーシャルメディアでブランドにメッセージを送信する。
このような消費者から始まる啓蒙活動をすることで、企業に圧力や影響を与えていくことをFashion for Goodの展示では勧めている。
業界の立場からもファッションのサステナビリティを図る指標が出てきた。
Fashion Revolution社が指標する最新のFashion Transparency Index(ファッション透明度指標)では、150のグローバルファッションブランドの社会的および環境的な政策、行動、および影響について共有し評価する。
評価の基準は、政策&コミットメント、ガバナンス、生産履歴管理、アセスメントサイクル、社会的サステナビリティの5つで形成されている。
「最も透明性の高いブランドはまだ50%をわずかに上回っているだけなので、全く理想とは程遠いですが、我々の意識に明らかな変化があります」とFashion Revolution社の代表De Castro氏はコメントしている。
Fashion Transparency Index (p26)
オランダの地域的な活動としても、壊れた洋服を修理する「リペアソン」など、古くて新しい活動が出てきている。
Facebookをお使いの方ならご存じだろうが、Facebookを集客のプラットフォームとして活用し、気軽にイベントや会合を開催できる。リペアソンで提案するのは、「日曜日の午後、6-12人の小グループで気軽に集まり、洋服の修繕を一緒にやりませんか?」というもの。
ボタンが無くなったジャケット、少し穴の開いたジーンズ、くたびれてしまったセーターなど、修繕、修理したいものを持ちより、イベントの間にそれを修繕するという企画だ。
2人のデザイナーが各自にアドバイスや修繕の技術を教えてくれるため、初めての人でも安心して参加できる。参加者は自分の古くから愛する服飾物を、自分の手を動かし創造的思考を働かせて、新しいものに生まり変わらせることができるイベントなのだ。
場所や飲み物代、材料費として10ユーロ(1300円程度)を集める代わりに、主催者は以下のものを持ってきてほしいと参加者にFacebook上で訴える。
「裁縫に関する以前のスキルなどは必要ありません。私たちはただ、あなたが取り組むべき課題、そしてあなたの衣服を大事に保存する方法を学ぶ意欲を、持ってきてほしいと思っています」。
このような活動は新しいサスティナブルファッションのコミュニティを形成し、共通の趣味の友達作りなどの社会的形成にも役立っている。
消費者から、コミュニティから、生まれるサスティナブルファッションの活動。ファッション業界は新しい指標を持ち、特にソーシャルメディアを駆使する若い世代の消費者の期待に応えていく必要がある。
日本では一時期服を捨てる「断捨離」が流行っていたが、今後は服を買う時からその持続性を考え、「修繕する」形が流行っていく日もそう遠くないのではないだろうか。
文:米山怜子
編集:岡徳之(Livit)