一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)では、2013年から全国のビジネスパーソンを対象とした、職場や仕事に関する意識調査を実施している。
第9回となる今回の調査(※)では、働き方改革と副業について取り上げている。その主な結果は、以下のとおりだった。
- 働き方改革の効果は約3割のビジネスパーソンが「実感している」。2017年に行った前回の調査と比較し10ポイント以上増。
- 年代別にみると20代の4割が働き方改革の進捗を実感している一方、50代・60代は3割をきる。
- 働き方改革の効果を実感する理由は、「有給取得」「残業減」「ムダな業務・会議減」がトップ。前回調査と比較して「女性活用」は大きく後退。
- 働き方改革を実感できない理由は、「ムダな業務・会議が減らない」がダントツでトップ。「給与格差がなくならない」「有給が取得できない」が続く。
(※)調査概要
- 調査名称
第9回「ビジネスパーソン1000人調査」【働き方改革と副業編】 - 調査期間
2018年9月28日~2018年10月9日 - 調査対象
日本能率協会総合研究所「JMARリサーチモニター」のうち、全国の20歳~69歳までの正規・非正規雇用の就業者
(企業や団体で働く正社員、役員、経営者、契約・嘱託社員、派遣社員。ただしパート・アルバイト、医師・弁護士などの専門職業、自由業を除く) - 調査方法
インターネット調査 - 回答数
1,000人 - 属性
- [性別]男性559人、女性441人
- [年代]20代156人、30代236人、40代239人、50代212人、60代157人
- [雇用形態]男性(正規447人、非正規112人) 女性(正規191人、非正規250人)
- [勤務先従業員数]5,000人以上158人、1,000~5,000人未満167人、300~1,000人未満157人、100~300人未満174人、100人未満344人
働き方改革の効果を「実感している」のは、ビジネスパーソンの約3割
・あなたは、職場での「働き方改革」が進んでいると実感していますか。(単一回答)
調査対象のビジネスパーソンに、職場で働き方改革が進んでいると感じるか聞いたところ、「とても実感している」(4.4%)、「やや実感している」(26.8%)あわせて、3割が実感しているという結果に。
一方で、「あまり実感していない」(39.6%)、「まったく実感していない」(29.2%)あわせ7割近くは、実感していないと回答した。
2017年時の調査より「実感している」と答えた割合は11.9%増加している。
20代ビジネスパーソンの約4割は働き方改革の進捗を実感、50代以上では3割未満
調査結果を年代別でみると、働き方改革の効果について20代の38.5%が実感していると答えた一方、年代が高まるにつれ数値が下がり、50代では25%、60代では28%と後退。
この結果についてJMAでは、若い年代のビジネスパーソンは人事部や上司から残業削減・有給取得を強く推奨されていることから、実感につながっているのだろうと推測している。
また、50代以上は長時間労働が会社への貢献となる従来からの価値観から、変化に戸惑いを感じているかもしれないとしている。
働き方改革の効果を感じている正規職員は35.1%、非正規職員では24.3%
雇用形態別にみると、正規職員の35.1%が「実感している」と答えたのに対し、非正規社員では24.3%にとどまり、10ポイント以上の差が開いた。
JMAは、給与格差が是正されない現状がこの結果につながっていると推測している。
働き方改革を実感する理由は「有給所得」「残業限」「ムダな業務・会議減」
・「働き方改革」として、具体的にどのようなことを実感していますか。(複数回答)
働き方を実感していると回答した312人に対し、その理由について聞いた。結果「有給休暇が取りやすくなった」(32.4%)との回答が最も多く、「残業が減った」(31.1%)、「ムダな業務・会議が減った」(23.4%)が続いた。
女性活用進捗の実感は2017年調査より後退
一方「女性活用が進んだ」を、働き方改革を実感する理由として挙げたビジネスパーソンは調査対象者のうち11.2%(前選択肢のうち8位)にとどまった。前回調査では24.1%(3位)だったのと比較すると10ポイント以上のマイナスとなる。
働き方改革を実感していない理由のトップは「ムダな業務・会議が減らない」がトップ
・「働き方改革」を実感していない理由は何ですか。(複数回答)
働き方改革を実感していないと回答した調査対象者(688人)に対し、その理由を聞いた。
結果「ムダな業務・会議が減らないから」(29.2%)がトップで、「正社員と非正規社員の給料の格差がなくならないから」(22.7%)、「有給休暇がとりにくいから」(21.1%)が続いた。
この結果についてJMAでは、働き方改革をすすめるにあたり、残業時間削減・休暇取得推奨に加え、会議をはじめとしたコミュニケーションを含む業務の見直しが重要となっていることが示唆されるとしている。
なお2017年の調査と比べると、「有給休暇がとりにくいから」は7.1ポイント、「残業が減らないから」は5.5ポイント減少している。
副業に興味があるビジネスパーソンは約4割、経験者は約2割とひらきあり
・あなたの会社では副業が認められていますか。(単一回答)
現在の職場で副業が認められているか聞いたところ、「認められている」と答えたのは16.9%にとどまり、認めていないは約半分となる48.4%となった。
・現在の職場に勤務しながら副業することについて、関心はどの程度ですか。(単数回答)
これをふまえ副業について、現在の職場で仕事をしつつ「やってみたい」と答えた調査対象者は全体の41.5%にのぼった。
一方、経験者は18.1%にとどまり、希望と実際とのギャップがみられた。20代にかぎってみると、「副業をやってみたい」との回答が6割を超えている。年代が高まるごとに、副業への関心が低下するという傾向がみられる。
副業しいたい理由は「収入増」が9割でダントツのトップ。副業をしたくない理由は「時間に余裕がない」(6割)が他を引き離しトップ
・副業をやってみたい理由は何ですか。(複数回答)
副業をやってみたいと回答した人(340人)に対して理由を聞いたところ「収入を増やしたいから」(90.0%)がほかを大きく引き離した。
・副業にあてる理想的な時間(単一回答)
副業にあてる理想的な時間については、「1割以上2割未満」(58.5%)が1位で、「2割以上3割未満」(23.2%)、「1割未満」(22.6%)が続いた。全体をみると、2割未満との回答が8割を超えている。
・副業をやりたくない理由は何ですか。(複数回答)
副業をやりたくない(262人)にその理由を聞くと、「時間に余裕がないから」(59.9%)がほかを引き離してトップに。「本業がおろそかになるから」「会社が許可していないから」(いずれも20.2%)が続いた。
ビジネスパーソンの“今”をデータで読み解く
第9回「ビジネスパーソン1000人調査」【働き方改革と副業編】
JMA