1,000メートル超えの高層ビルが増える未来、危険作業を担う壁登りロボット

高さ828メートル、現在世界でもっとも高い超高層ビルはアラブ首長国連邦ドバイにそびえ立つ「ブルジュ・ハリファ」。2位は2016年上海に登場した「上海中心」(高さ632メートル)。

建築技術の進歩とともに高層ビルの高さは今後も伸びていく見込みだ。現在サウジアラビア・ジッダで建設中の「ジッダ・タワー」は高さ1,008メートル。クウェートでも1,000メートルを超えるビル建設が計画されているという。1,000メートルを超える高層ビルは「ハイパービルディング」と呼ばれ、中国や英国などでも建設構想が持ち上がっている。


(画像)ドバイの高層ビル

高層ビルの高さが伸びるにともない困難となるのが、外壁の清掃やメンテナンスだ。現在多くの高層ビルでは、屋上から吊り下げられたゴンドラに乗った人が清掃やメンテナンスを行っている。ゴンドラが強風にあおられるなどしてケガをしたり、死亡したりするケースは少なくない。

2012年5月には、当時タイでもっとも高かった「バイヨークタワー2」で、ゴンドラのワイヤーが切れ3名が死亡する事故が発生。2018年12月にはマレーシア・クアラルンプールの高層ビルでゴンドラの故障事故が発生。作業員2名が救助される事態となった。


(画像)高所での作業

高層ビルの増加にともない増える高所での危険な作業。このような危険な作業を人間に代わり行うことができるロボットの開発が急ピッチで進められている。高所での作業を行うロボットの1つとして空飛ぶドローンに期待が寄せられているが、もう1つ注目を集めるカテゴリが存在する。それが壁を登るロボットだ。

垂直な壁を登り、外壁やガラスの清掃/メンテナンスを実行できるロボット。吸着技術の開発が進んでおり、さまざまなシーンでの応用が期待されている。

中国の経済メディア、チャイナ・マネー・ネットワーク(CMN)によると、2018年12月バイドゥ・ベンチャーズなどはシリーズAの調達ラウンドで北京のRobot++というスタートアップに291万ドル(約3億円)を投じた。

このRobot++、清華大学や北京航空航天大学出身の研究者らが集まるロボットスタートアップ。主に壁を登るロボット開発に強みを持っており、造船、パイプライン、高架橋、港湾など用途に合わせた壁登りロボットを提供している。

Robot++の壁登りロボットは、磁力を利用して壁に吸着するタイプ。磁力タイプのロボットは他のタイプに比べ吸着力が強く、比較的重いものを搭載することが可能だ。


(画像)Robot++が開発した船舶のサビを除去する壁登りロボット

造船分野向けのロボットは、船のサビを除去する装置を搭載し、外板部を毎分10メートルで移動できる。大型船の外板部は高さが何十メートルになる場合も多い。これまで人手で行ってきた高所でのサビ除去作業を安全に行えるようになる。ロボットを使った場合、サビ除去のコストは人手の半分に抑えられるという。

Robot++は調達資金をさらなる研究開発に投じ、ロボットの活用範囲を広げる計画だ。

新華社通信が2018年11月に伝えたところでは、中国浙江大学でも壁登りロボットを開発しており、船舶のサビ除去などに活用される予定という。このロボットは、1時間あたり40平方メートルのサビ除去が可能で、これは10人分の相当する作業量という。


(映像)中国浙江大学で開発されている壁登りロボット(YouTube新華社通信チャンネルより)

船舶の外板は鉄鋼のため磁力を使って吸着できるが、磁力が使えない素材に対しては、他の方法を用いることが可能だ。主な方法として吸引力を使うもの、ヤモリのメカニズムを応用したもの、静電気を応用したものなどがある。これらは各国で実用化に向けた研究開発が進められている。近い将来、さまざまな壁登りロボットが登場してくるだろう。

文:細谷元(Livit

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