2015年から国家戦略特区では、家事負担軽減によって女性の社会進出を活性化する目的で、「家事支援」分野において外国人就労が可能となっている。該当する東京都・神奈川県・大阪府などでは、パソナが提供するハウスキーピングサービス「クラシニティ」をはじめ計6事業者が家事代行サービスを提供している。

今年4月に施行予定の「改正出入国管理法」では、就労目的の新たな在留資格「特定技能(1号・2号)」が新設。一定の専門性や技能がある外国人労働者の受け入れ拡大が見込まれる。

そんななかパソナ総合研究所では、国家戦力特区で家事支援人材として活躍するフィリピン人スタッフを対象として、日本での就業の満足度や課題点、将来の就業意向などをヒアリング調査(※)した。

主な調査結果は以下のとおりとなった。

  • 97%のスタッフがサービス利用者との関係が良好と回答。93%が、現在3年間の在留期間の延長を希望。
  • ハウスキーパーとして日本で働く魅力は「給与・社会保障」(78.3%)、「住込みでない」(65.7%)、「日本人の人柄が良い」(60.2%)など
  • 日本でハウスキーパーとして働く際に困難だったのは「日本語」(84.9%)が圧倒的多数を占めトップに
  • ハウスキーパーと日本企業の関係は、75%が「改善の余地あり」と回答。その理由は「言語の壁」がトップ
  • スタッフの97%が、3年間のハウスキーパー終了後に、「また日本で働きたい」と回答。新しい在留資格には98%が「興味がある」と回答

※調査概要
調査方法 : インターネットを通じたアンケート方式
調査期間 : 2018年11月9日~30日
調査対象 : 国家戦略特区において家事支援に従事しているフィリピン人スタッフ(本調査に協力いただいた所属会社より計275名に配信)
回答者数 : 166名

<回答者の属性>
性 別 : 全員女性
年 代 : 30歳未満(26%)、30代(58%)、40代(16%)
滞在期間 : 半年未満(35%)、半年以上~1年未満(12%)、1年以上(53%)
日本語力 : 日本語能力試験N1~N3(2%)、N4(27%)、N5(19%)、学習歴はあるがスコア無し(52%)

ハウスキーパーの97%がサービス利用者との関係が良好

国家戦略特区でハウスキーパーとして働いた女性のうち、97%にも上る女性がサービス利用者との関係が良好と回答。また93%は、3年間の在留期間について「可能であれば延長したい」と回答している。パソナは、この結果を受け就業への満足度が高いことが、これら回答の背景にあると語っている。

日本でハウスキーパーとして働く魅力は「給与・社会保障」(78.3%)がトップ

他の国と比べ日本でハウスキーパーとして働く魅力はなにか聞いたところ、「給与・社会保障(医療保険・労災など)」(78.3%)でトップに。当該制度ではハウスキーパーの報酬を「日本人と同等以上」と定めており、パソナでは「諸外国と比べ、待遇面での魅力が高いと思われる」と推測している。

くわえて諸外国ではハウスキーパーが住込みで働く場合が多く、雇い主との関係に課題があったり、プライベートな時間や空間が限られたりするケースもある。一方日本では「住み込みでない」ことを魅力に感じているハウスキーパーも65.7%に及んだ。

パソナは、これらにくわえ、「勤務時間が安定している」「雇用主が企業である」という回答も、同様の理由が背景にあると推測している。また「日本人の人柄がよい」(60.2%)も、高い回答率となっていた。

日本でハウスキーパーとして働く際の問題は「日本語」(84.9%)がトップ

日本で働くにあたってチャレンジだと感じたこと(難しかったこと)を聞いたところ、「日本語」(84.9%)との回答が圧倒的多数をしめた。そのほか、国家戦略特区として指定された地域が東京・神奈川・大阪といった都市部であり、電車・地下鉄・バスといった公共交通機関の利用に難しさを感じた回答者が多く、「移動手段が煩雑」(56.0%)との回答も多かった。

来日後の研修で最も多かったのは「掃除のやり方とテクニック」(89.2%)や「日本語」(74.7%)

ハウスキーパーたちの89.2%は来日後に、「掃除のやり方とテクニック」の研修を受講しており、パソナでは前問の結果(「洗剤や家電の使い方」「家事のやり方が違う」は比較的低い)とあわせて考え、一定の役割を果たしていると推測している。たいして「日本語研修」(74.7%)の受講率も高いが、日本語を働く上での課題と考えるハウスキーパーは多い。

ハウスキーパー・日本企業との関係は75%が改善の余地ありと回答。その理由は「言語の壁」(75.8%)がトップ

ハウスキーパー・日本企業間の関係については、全体の75%が「改善の余地がある」と回答。その理由として「言語の壁」(75.8%)、「コミュニケーションスタイル」(41.9%)と答えた割合が多かった。

パソナでは、日本語の難しさはもちろんのこと、たとえばホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)という言葉にみられるような、日本企業で当たり前に共有さてれているビジネスコミュニケーションスタイルへの対応に課題を抱えているハウスキーパーが多いようだ、と推測。

企業では、各国の文化を尊重するのに加え、日本流のコミュニケーションスタイル研修などを強化して、双方が歩み寄り、より密なコミュニケーションをとることが重要と思われると話している。

「また日本で働きたい」ハウスキーパーは全体の97%

ハウスキーパーとしての3年間の勤務後に、「また日本で働きたい」と答えたハウスキーパーは実に97%にも上った。改正入管法で親切される在留資格についても、「非常に興味がある」「どちらかというと興味がある」と答えたハウスキーパーは、あわせて98%に及んだ。

また新しい在留資格で働く際の希望の産業を聞いたところ、「食料品製造業」(72.3%)がトップ。「外食業」(57.2%)、「ビルクリーニング」(31.3%)が上位に並んだのに対し、漁業や製造業、建築業は少ない傾向だった。この点についてパソナでは、アンケート回答者がハウスキーピングに携わる女性スタッフであったためと推測している。

img:PR TIMES