日本発、新しいサブスク型住居サービスが2019年からスタートした。
その名は「HafH(ハフ)」。KabuK Styleが2019年1月からの提供開始を発表し、クラウドファンディングサイト「Makuake」で資金調達を実施。集まった資金はなんと約1,000万円にまで到達した。(※1月8日時点)
昨年11月には、当メディアでも同サービスについて取り上げ、大きな反響を呼んだ。
このHafHを手掛けるのは、株式会社KabuK Sytleの大瀬良 亮だ。大手広告代理店で数々のマーケティング・PRを担い、さらに政府の中枢で広報に携わっていた経歴を持つ。 一見経歴とは何の関係もないように見えるこのHafHというサービス。
一体なぜ彼はこのプロダクトを立ち上げるに至ったのだろうか。
大瀬良氏の同サービスに対する胸懐に触れると共に、2019年注目の新しいサブスク型住居サービス「HafH(ハフ)」に迫る。
- 大瀬良 亮
- 株式会社KabuK Style Co-CEO/Producer
1983年、長崎県生まれ。2007年に筑波大学を卒業後、電通入社。在京若手県人会「しんかめ」を主宰、原爆の実相を伝える「Nagasaki Archive」発起人として、文化庁メディア芸術祭に出展等。2015年から官邸初のソーシャルメディアスタッフに。2018年4月、つくば市まちづくりアドバイザーに就任。2018年11月、「世界を旅して働く。HafH」リリース。
第2のふるさとを提供する新しいサブスク型住居サービス「HafH(ハフ)」
日本だけではなく世界各地を毎月定額支払うことにより住み放題になる。そんな注目の新しいサブスク型住居サービス、それが「HafH(ハフ)」だ。
光熱費・ネット費用・敷金・礼金・保証金がオールインワンで、日本の不動産によくある「2年契約縛り」や「更新料」もない。
HafHを利用することで、旅先の宿泊費が無料となる。本来旅をする際には行き先を決めて宿泊施設を探すが、HafHを利用すればHafHを提供する宿泊施設がある場所の中から行き先を決められる。それにより、知らない街の魅力を知ることができる。
サービス名の「HafH(ハフ)」は、「Home away from Home(第2のふるさと)」のアルファベットの頭文字を繋げた。地元や普段生活している場所とは異なる場所でも、自宅や職場のように過ごしてほしいという意味が込められている。
「自分の居場所」を新しく探すために世界へ出る日本人の増加や、日本に興味を持つ外国人がこのサービスを利用し日本に立ち寄ることで地域活性化にも繋がる可能性を秘めている。
長崎から世界へ。3つの月額プランを解説
先日、1月8日に初拠点となる「HafH Nagasaki-SAI」がオープン。
そこから世界各地を含めた、複数拠点に展開していく予定だ。
2019年1月8日にオープンした「HafH Nagasaki-SAI」
また、同サービスは3つの月額プランから利用が可能となっている。
プランの詳細は以下の通りだ。
- 「いつもハフ」プラン
- 「ときどきハフ」プラン
- 「はたらくハフ」
月額82,000円の料金で専用のベッドが用意されてあり、住民票発行等も可能なプラン
月額32,000円の料金で定住地以外にHafHを利用するプラン
月額12,000円の料金で寝泊まりはせず働く場所としてHafHを利用するプラン
2019年1月1日現在。価格は税込。
上記プランの他にも、1時間〜数日だけ利用したい人のための「ゲストハウス」「コワーキングスペース」として「おためしハフ」としての利用も可能だ。
そして1月8日に同社は、株式会社TRASTAと包括的な業務提携に合意したことを発表。今春よりHafH拠点が大阪・福岡にも展開を予定している。加えて、TRASTA社が今後オープン予定の施設を含む全18施設がHafH Networkとして利用可能になるという。
福岡市中心部、キャナルシティから徒歩圏内の「THE LIFE HOSTEL & BAR LOUNGE」
大阪市、アメ村に近い「STAY in the City AMEMURA」
また国内だけでなく、海外2箇所(マレーシア/クアラルンプール、ベトナム/ハノイ)でHafHを計画しており、その他、ASEAN諸国、台湾、韓国、インドといったアジア諸国、欧米、さらにはアフリカでのサービス展開も目指している。
さらに、TRASTA社と互いの強みを用いて同サービスの会員の宿泊、移動がスムーズになるためのシステム開発を精力的に進めている。
歩んできた人生を詰め込んだビジネスモデル
なぜこのようなサービスを発案できたのだろうか。そこには、大瀬良氏の歩んで来た人生が関係していた。
このHafHというサービスのビジネスモデルには、彼の人生が詰め込まれていたのだ。
株式会社KabuK StyleのCEOであるKJ、こと砂田氏と大瀬良氏は、会社を立ち上げる以前から長く付き合いがあった。彼らは10年前に長崎の空き家を、アーティストレジデンスやシェアハウスにすることを市に提案したことがあった。これこそ、HafHの原点とも言える。
大瀬良「長崎市出島町生まれで地元に対する思い入れがずっとありました。出島は外から来る人と中の人が上手く混じり合って風土がつくられていった魅力的な場所だったはずなんですよ。
しかし、いまは、観光地としてしか利用されておらず、地元にいた人たちが帰ってきても、訪れたい場所になっていない。このままでは、長崎ならではの風土を生み出す装置が活かされてこない、という考えから、現代の出島を別のかたちで復活したいと話してたんです。」
この想いをすぐに実現することは叶わなかったものの、その後東京に出て来た大瀬良氏は「東京から長崎を盛り上げる」活動として在京長崎県人会を主宰。 政府中枢の広報に携わり、出向した約3年間のあいだにおよそ40カ国ほど、地球15周分の距離を移動した。この体験が「世界中、旅をしながら働く」HafHを作り上げる上で重要な要素となる。
大瀬良「パッと起きてとりあえずパソコンと携帯とWi-Fiを持って外に出ると、外国語が飛び交っていて“あ、ここ海外だった”そんなことを感じながら仕事をする暮らしをしていました。この実体験から世界中どこでも働けることが分かって。プライベートでも週末に海外にフラッと行って、向こうでパソコンを開いていると、逆にぜいたくだな、って思えるようになったんです。」
それは日本人だけでなく、海外の人でも同じことだ。行こうとさえ思えば週末に国外に訪れることができる。より多くの国外の文化に触れることができれば、仕事でも生活でも得られる情報の量が何倍にも膨れ上がり、仕事の生産性の向上やQOLの向上にも結び付くと考えた。
注目を集めた「世界を旅して働こう」というコピー
そして転機が訪れたのは、2年前。のちに共同代表となる砂田氏から連絡があり、「飯を食おうと」。
大瀬良「砂田は、金融に長けていて、個人で不動産投資を進めていたんですが、日本の不動産が、外国人をはじめ、シングルマザーだったり、同性同士というだけで途端に部屋が借りにくくなったりするハードルをなくしたいと言っていました。『多様性を多様なまま許容する社会をつくりたい』と。『長崎で面白い不動産つくろう、10年前に言ってたような』と半ば強引に誘われたのがきっかけです。」
そこから、大瀬良がこれまで培った経験値を存分に生かし、HafHの土台が作られていく。
主に外国人向けに住まいのオプションを増やすサービスとして進められていったHafHだが、このビジネスを動かすためには、まず日本で注目を集めなければ、資金調達どころか話題にすらならない。そこで日本人向けに考えたコピーが「世界を旅して働こう」だった。
大瀬良「“世界を旅しながら暮らす”はAirbnbが提唱していますが、“世界を旅して働く”は未だなく、新しさを感じてコピーとして出しました。結果、多くの日本人に刺さったんです。」
このコピーの影響もあってか、クラウドファンディングサイト「Makuake」では約1,000万円以上の資金を集め、さらに話題化。(Makuake URL:https://www.makuake.com/project/hafh/)オープン前から、国内で大きく注目を集めることに成功した。
大瀬良「現在は、複数の投資家から出資の話を頂いたり、長崎だけでなく各地方自治体や各省庁などからもご相談をいただいています。多様な方々と提携方法を模索しながら、チームジャパンとして、世界から選ばれる住まいづくりに挑戦していきたいです。」
「Home away from home」を目指して
注目を集め、急成長を成し遂げ、多くの人々が期待に胸を膨らませるHafH。
今後の展開について、大瀬良氏は「世界中にあなたのHafHを」を最終的に目指していきたいと語った。そして、名前の由来でもある「Home away from home」の役割を担っていくことが目下の目標だ。
大瀬良「あらゆる事情で、生まれ育った故郷ではない場所=Home away from Homeに住まう人は世界に山ほどいます。移動するたびに家具を捨てたりするのは、持続可能な住まい方ではありません。
いつ、何が起きるかわからない時代に、個人にまつわる所有物はできる限り減らして、シェアできるものはどんどんシェアしていく。リビングをシェアする=Co-living(コーリビング)という考え方は、今後、HafHだけでなく、世界から支持される価値観になると考えています。」
今後は、この想いに共感してくれるターゲットへ訴求をしていく。外国人留学生や外国人労働者や、ライターやエンジニアのようなフリーランスの方々だけでなく、大手企業で働く方々向けの「ワーケーション(Work+Vacationの造語)」やリモートワークをする社員も対象となるだろう。直接会って打ち合わせをしなくとも、zoomやSkypeなどテレビ会議ツールを利用すれば、どこでも打ち合わせが可能だ。
大瀬良「例えば、今週は1週間九州で過ごそうと思い立って九州に移動し、日中は長崎で仕事をして、夜は福岡で観光や美味しいご飯を楽しむ。そんな生活がもしできれば、人生は2倍、3倍楽しくなると、僕自身が実感してきたし、こんな働きかたをできる人が、今後は増えてくると思います。」
自分たちでオフィスが持てない個人事業主がオフィスとしてHafHを利用したり、普段は何の変哲も無い雑居ビルで仕事をしているサラリーマンが海の見える場所で仕事できるようになったりする、そんな環境の変化があってもいいのではないだろうか。月に数日でもリモートワークができるなら、自分のモチベーションが上がる場所を選んで暮らし働いてもいいのではないだろうか。
大瀬良「HafHは、1ヶ月まるごと契約しなくても、1週間だけやってみようといった使い方(「ときどきハフ」)もできるようにしている。
最初に話した通り、どんな多様性も受け入れるのがハフがもっとも大切にするコンセプトです。国内外のあらゆる事情をもったあらゆる人たちが満足して住めるよう、成長していきたいと思っています。」
文/阿部裕華