自動車販売台数で世界最大の中国。2018年後半に販売台数の伸びが失速したといわれているが、2位の米国、3位の日本とは大きな開きがあり、当面の世界最大市場の地位は変わらない見込みだ。
国際自動車工業連合会によると、2017年の乗用車販売台数は中国が2,496万台、一方米国は609万台、日本は439万台だった。
また中国政府は、2025年までに年間販売台数を3,500万台、このうち電気自動車の占める割合を20%に高める目標を明らかにしており、中国のモータリゼーションは今後も進行すると見られている。
そんな中国では、自動車購入後のアフターサービスへの需要が高まっており、大手企業やスタートアップの参入が増えている。
中国Eコマース最大手アリババは2018年8月、自動車販売事業への参入のため子会社を設立。自動車販売サイト「car.tmall.com」の補完を目的とし、修理、車検、ペイント、自動車保険などを取り扱うという。
アリババの自動車販売サイト「car.tmall.com」
アリババはこの一環で2018年12月、自動洗車ロボットを開発する杭州のスタートアップ1KMXCに戦略的投資を行ったと伝えられている。地元メディアによると、今回1KMXCによるラウンドBの資金調達となるが、調達額は明らかにされていない。
1KMXCは2013年に設立、2017年頃から中国国内のガソリンスタンドなどに自動洗車ロボットを導入している。同社ウェブサイトによると、現在中国28都市355カ所に洗車ロボットを配置、また47カ所で設置工事を進めているという。さらに107カ所での導入が計画されている。
自動車販売台数が増え、自動車の所有者が増えるにともない洗車需要も高まっている。一方、中国では人材不足や人件費高騰などで、人手による洗車サービスでは高い収益率が見込めないと考えられている。1KMXCの洗車ロボットは、こうした課題を解決する手段の1つとして大きな注目を集めているのだ。
全自動で24時間稼働するのはもちろんだが、安く早いということに加え、スマホアプリで利用し支払いを済ませられる利便性も急速な拡大を後押ししていると考えられる。
1KMXCの洗車ロボット(1KMXCウェブサイトより)
利用者は洗車ロボットのQRコードをスマホアプリで読み取り、3分、5分、7分の洗車時間を選ぶことができる。費用はそれぞれ10元(約160円)、12元(約192円)、15元(約240円)。中国で人手の洗車サービスを利用する場合、30〜45元(約480〜720円)かかるが、1KMXCの自動洗車サービスはこれらの半額以下で利用できることになる。人件費の上昇にともない人手の洗車サービスの利用料は今後も上がっていくと考えられる。
また、水の利用を最小限にする工夫もされており、環境意識の高い層の取り込みにもつながっているようだ。既存の洗車サービスに比べ利用する水の量を90%節約でき、洗剤なしを選択することも可能だ。
同社ウェブサイトによると、既存洗車サービスと比較した場合の現時点の節水量は4,168万リットル、節約した洗車費用は987万元(約1億5,800万円)、節約した洗車時間は20万時間に上る。
さらに1KMXCの洗車ロボットはクラウドとつながっており人工知能によるデータ分析が可能で、これにより自動車のブランド・モデルごとに洗車を最適化することができるという。
今回アリババによる資本注入を受け、1KMXCはアリババのサプライチェーンを活用し、事業展開を加速する計画だ。また、アリババのECサイトtmall.comを通じて洗車サービスを利用できるようにもなるという。生活のさまざまなシーンで自動化が進む中国。洗車サービスに続き次は何が自動化されるのか、今後の展開からも目が離せない。
文:細谷元(Livit)