公益財団法人日本ユニセフ協会は2018年12月19日、世界初の試みとして南太平洋の国バヌアツの遠隔地の島に、民間の小型無人機ドローンでワクチンを輸送したと発表した。
ワクチンの輸送範囲は、島の西部ディロンズベイの険しい山岳地帯から東部の遠隔地クックスベイまで約40kmにわたり、そこでは13人の子どもと5人の妊婦が公認看護師のMiriam Nampil氏によってワクチンの接種を受けたという。
ワクチン輸送が困難なバヌアツの子供たちをドローンで救助
発表によると、ワクチンはある特定の温度で運ぶ必要があるため、輸送の難しさがあるという。気温が暖かく、約1,300kmの範囲にわたり80以上の、山の多い、遠隔地の島々が広がり、道路の数も限られるバヌアツは、ワクチン輸送にとって特に厳しい環境下にある。このため、同国の子どもの約2割、または5人に1人が子どものころに必要なワクチン接種を逃しているという。
さらに、クックスベイは、小さく、分散したコミュニティで、保健センターも電気もなく、徒歩か小型船を除いてはアクセスできない。
ドローンで届けられた最初のワクチン接種を担当した看護師のMiriam Nampil氏は「ワクチンの旅路は長く厳しいのが常であるため、子どもたちのワクチンを接種しに行けるのは月に1回のみです。しかし今、このドローンを使えば、島の最も遠隔地域で暮らすより多くの子どもにワクチンを届けられるようになると期待しています」と語っている。
バヌアツ政府はさらに広い用途でのドローン利用も検討
今回のドローン輸送では、ワクチンは発泡スチロールの箱に、氷袋と温度の測定記録装置とともに入れられて運ばれた。ワクチンの温度が許容範囲から外れた場合には、電子インジケーターが起動するようになっている。
これに先駆け、バヌアツの保健省がユニセフの協力を得て、Swoop AeroとWingCopterのドローン企業2社の操縦士によるドローン輸送試験を実施した。
オーストラリアのSwoop Aero社は、50kmにわたって多くの島々やウェイポイント(経路上の地点)を越えた後、搭載物を目標地点の2m以内に投下することに成功し、試験の第一フェーズを通過したという。
また、政府が民間のドローン企業と契約を結び、ワクチンを遠隔地に輸送することは世界的にも初めてだという。ドローンの操縦士は入札手続き後に選ばれ、契約ごとに責任を有し、輸送に失敗した場合は費用が支払われないシステムになっている。
バヌアツ政府は今後、長期的視点から、ワクチンのドローン輸送を国の予防接種プログラムに統合し、保健物資を輸送するといったさらに広い用途でのドローン利用も検討する予定だ。
また輸送試験によって得られたデータは、同様の状況に直面している世界の国々において、どのようにドローンが商業利用できるかという点を検討する上でも活用されるという。
このプロジェクトは、バヌアツの保健省および民間航空局が主導し、ユニセフ、オーストラリア外務貿易省のinnovationXchange、および世界エイズ・結核・マラリア対策基金(The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria)が協力している。
img:PR TIMES