総合不動産サービス大手ジョーンズ ラング ラサール(JLL)は2018年12月17日、2025年大阪万博が大阪の不動産市場に与える影響を分析した調査レポート「2025年万国博覧会 大阪開催決定 – 大阪不動産市場への影響と世界的都市ブランドの確立」を発表した。

それによると、インフラ整備や再開発によって大阪不動産マーケットの価値が向上しているという。

大阪Aグレードオフィスの賃料上昇率は前年同期比11%増に

2018年11月23日に開催された博覧会国際事務局(BIE)総会にて、2025年万国博覧会(万博)の開催地が大阪に決定した。

国際的な大イベントに向けて、道路や鉄道などの都市インフラの整備や都市機能を担う不動産の開発が促進され、国際都市としての「大阪」の魅力を発信、また世界の資本・ビジネス・人材(ヒト・モノ・カネ)を吸引するための絶好の「ショーケース(機会)」になると予測される。

このレポートでは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致決定を受けて、東京では大手不動産デベロッパーによる大規模再開発やインフラ整備が進んでいるとしている。

同様に、万博開催地の夢洲までの鉄道延伸など大阪でも交通インフラの整備を呼び水に、万博開催の経済波及効果を見据えた不動産開発が計画・実施される可能性が高いという。

再開発には行政の折衝も踏まえると少なくとも5年超を要するが、万博まで7年の猶予がある。民間資本による都市再生が大阪の不動産マーケットの価値を一段と高めていくと予想している。

大阪Aグレードオフィスの平均賃料は、2018年9月末時点で月額坪あたり20,267円、空室率は1.1%で、賃料上昇率は前年同期比11%と二桁増を記録しているという。

今後も、限定的な新規供給、ひっ迫した需給環境は続くと予測され、加えて2025年万博に向けての不動産開発や経済活動を背景に、今後も賃料上昇は続くとみられるとしている。

また、2018年大阪圏では100億円以上の大型取引が15件あり、2018年第3四半期の取引額は過去最高額を記録したという。

投資家は、オフィスビルの新規供給が限定的である大阪を、さらなる成長が見込める有望マーケットとみており、引き続き不動産投資市場も活況を呈すると予測している。

万博は大阪の国際化とブランドを確立する絶好の機会

万博会場となる夢洲は、高度経済成長の波に乗り整備された郊外エリアの象徴であり、隣接する咲洲(南港)などとともにバブル崩壊によって遊休地化・不採算化した「負の遺産」の側面もあるが、万博決定を機に夢洲を含めた大阪湾エリアが「レガシー(遺産)」となり得るとしている。

JLLの調査レポート「2018年版 都市比較インデックス – 世界都市の10類型」によると、大阪は“国内成長エンジン”の都市類型に属し、人口・経済規模は大きいものの、世界規模で都市(経済圏)としての魅力が十分に理解されているとは言い難いという。

経済規模は世界8位にあり、経済圏としては東京を含めた世界主要7都市“ビッグセブン”と遜色のない「大都市」といえる一方、世界的な認知度を表す「ソフトパワー」や海外との結びつきを評価する「ゲートウェイ機能」の項目では低迷している。

万博は、大阪の都市としての国際化とブランドを確立する絶好の機会であるとしている。

このような、複数の都市が連携した経済圏や都市づくりは世界でも見られ、成功事例として「サンフランシスコベイエリア(サンフランシスコ、シリコンバレー、オークランド)」や「オランダメトロポール(アムステルダム、ロッテルダム、ハーグ・ユトレヒト)」などを挙げている。

レポートでは、大阪の場合も、国際的なMICEも多数開催される観光都市・京都、先端医療をはじめとする学術研究開発拠点を擁する港湾都市・神戸などとお互いの特徴を生かし補完し合うことで、東京とは異なる国際都市圏に飛躍するポテンシャルを秘めているとしている。

img:PR TIMES