SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を目指す“ユニバーサル農業”とは

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伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)とCTCの特例子会社のひなりは2018年12月13日、ICTを活用した未来型ユニバーサル農業の実現に向け、静岡県浜松市の京丸園とともに実証実験を開始したと発表した。

注目集めるユニバーサル農業とは

同社によると、近年、人口減少や高齢化が進むなかで農業分野と福祉分野が連携した「農福連携(ユニバーサル農業)」が注目されているという。

これは、障がい者や高齢者の社会参画を進め、その効用を農業経営の改善や担い手の育成に活かす取り組みだ。

さまざまな工程がある一連の農作業を「工程分解」し、誰にでも作業ができる形に切り分けることで、農作業の効率化と障がい者の仕事の創出につなげる。

ひなりでは、障がいのある社員がサポートマネージャーとともにチームで連携農家の業務を行う。業務を請け負う際にはサポートマネージャーが農家とともに工程分解を行い、作業に必要な補助具などとともに作業手順書を準備する。

品質管理、衛生管理、安全管理を含めて業務管理を行うこの形態は「ひなりモデル」といわれているという。

実験の目的はICTを活用した未来型農業モデルの検証

実証実験の概要は以下のとおり。

  1. 環境センサーデバイスを圃場に設置し、リアルタイムに圃場の状態をモニタリング
  2. 予め設定した環境センサーの異常値を検知するとタブレット端末やスマートフォンにアラートを通知
  3. 圃場内にデジタルサイネージを設置し、圃場のカメラ映像と環境センサーで収集したデータを見える化。気象状況などとあわせて農作業者が作物の栽培に関して積極的な意見交換ができる状況を整備し農業の働き方改革につなげる
  4. 圃場から収集した画像と環境センサーのデータを蓄積し、AIを活用して野菜の育成に最適な環境を分析・推論

実証実験は京丸園が栽培している「姫みつば」の圃場で行われる。

姫みつばは、長さ15cm(一般的なみつばの1/2)ほどの香味野菜で、日射量によって葉やけ(葉の表面上に変色した部分ができる現象)が発生しやすく、葉やけが発生するたびに、該当箇所を除去する必要がある。

今回、姫みつばを栽培するビニールハウスにカメラ1台と環境センサー(日射量・温湿度・水温の測定)を設置し、栽培過程のデータから、AIで葉やけの発生原因や成長状態を分析。

分析結果をもとに、ビニールハウスの環境を維持していくことで、将来的に農作業の効率化と障がい者の仕事の創出につなげる方針だ。

今後、ひなりのユニバーサル農業に関するノウハウとCTCの技術力を連携させることで、ICTを活用したユニバーサル農業モデルの確立とCTCグループのマテリアリティ(重要課題)が掲げる「地域経済への貢献」を通して、SDGs(持続可能な開発目標)の目標8「働きがいも経済成長も」の達成を目指すとしている。

img:NIKKEI

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