矢野経済研究所は、2018年のユーザーインターフェース(UI)デバイスの調査をスマートフォンなどのモバイル端末向けを中心としたユーザーインターフェース関連デバイスメーカーを対象に実施し、2018年12月5日に指紋センサー世界市場規模推移と予測、需要動向、将来展望を発表した。
それによると、2017年の指紋センサー世界出荷数量は11億1,150万個に拡大し、2018年以降も指紋センサー世界市場は拡大が続くと予測される。
2018年以降も指紋センサー世界市場は拡大が続く
調査によると、スマートフォンやタブレットなどの中小型モバイル端末を中心に、指紋や顔、虹彩、音声などの生体情報を利用したユーザー認証機能の搭載が進んでいることが明らかとなった。特に、指紋認証は指を置くだけでロック解除が出来るという優れた利便性を持ちながら、セキュリティ強化が実現できることから、スマートフォンでの採用が拡大しているという。
中小型モバイル端末向け指紋センサー市場はここ数年拡大を続けており、2017年の指紋センサー世界市場(メーカー出荷数量ベース)は前年比133.3%の11億1,150万個までにのぼる。
今後も、スマートフォンの標準仕様としてミドル・ローエンド品への搭載が進むほか、PINコード(Personal Identification Number)を入力する代わりに、指紋で生体認証を行うことで、支払いが可能なICカードの利用も広がる見通しで、2018年以降も指紋センサー世界市場は拡大が続くと予測している。
また、注目トピックとして、指紋認証デバイス市場動向を挙げている。
それによると、指紋認証は指紋センサーに接触させることで指紋画像を安定的に取得できることや、指紋認証デバイスを低コストで搭載出来ることなどから、スマートフォンの標準仕様として引き続き拡大していく見込みであるという。一方で、従来のボタン式とは異なり、中小型モバイル端末のデザイン性の向上に貢献できるディスプレイ埋め込み型指紋認証デバイスの開発も今後進展すると予測。
この場合には、デバイスメーカーにはディスプレイメーカーとの協業が必須条件となり、今後、協力関係の構築がもっとも重要になると分析している。また、中小型モバイル端末向け以外の用途では、今後、ICカードへの搭載が進む見通しであるという。
クレジットカードに指紋センサーを搭載し、指紋をスキャンするだけで、迅速かつ便利でありながら高い安全性が確保できる決済ソリューションとして利用拡大が期待されるとみている。
2020年の指紋センサー世界市場は15億7,670万個に成長
そして、将来展望として、2020年の指紋センサー世界市場(メーカー出荷数量ベース)は15億7,670万個に成長すると予測している。
指紋や顔、虹彩、音声等の生体認証技術を利用したユーザーインターフェイスはパスワード忘れや盗難、紛失リスクの心配もないことが最大のメリットであり、今後、スマートフォンなどの中小型モバイル端末向けでの搭載はよりいっそう広がっていく見通しであるという。
しかし、生体情報を利用したユーザー認証機能は現段階では一定以上のセキュリティが確保されているものの、安全性が完全には担保されておらず、生体情報の偽造や流出の危険性は依然として存在する。特に、スマートフォンを利用したモバイル決済など、ICTと金融が融合したフィンテック(FinTech)が日常に浸透するなかで、スマートフォンのセキュリティの重要度は益々高まっている
このため、今後、生体認証デバイスのさらなる精度向上や認証システムの高度化による端末のセキュリティ強化は消費者がスマートフォンを購入する決め手の一つになると考えられるとしている。
また、指紋や顔、虹彩、音声等の生体認証技術はボリュームゾーンの中小型モバイル端末のほか、銀行のATM端末、空港の出入国管理システム、民間企業の入退室管理システム、防犯カメラ等各種インフラ機器への採用が広がっている。
生体認証技術は新たなユーザーインターフェースシステムとして、機器採用を左右する基幹技術になっていくことが考えられるという。
中小型モバイル端末での新たなソリューション提案も含めて、今後どういったアプリケーションが立ち上がってくるかをウォッチしておくことで、次にくるであろう需要の波をつかむことがデバイスメーカーに求められると結論している。
矢野経済研究所「2017年の指紋センサー世界出荷数量は11億1,150万個に拡大」