野村総合研究所(以下「NRI」)は、2024年度までのICT(情報通信技術)とメディアに関連する主要市場について、国内市場及び一部国際市場での動向分析・市場規模の予測を実施。その結果を公開した。
2024年には、いわゆる「2024年問題」が注目されている。通信業界ではPSTNがIP(Internet Protocol)網に一斉に切り替えられ(固定電話→IP電話へ)、日本の人口については歴史上初めて50歳以上の人口が5割を超えるとの予測されている。
同社は、いかなる企業も2020年頃に実用化すると推測される5G(第5世代移動通信システム)や、急速に進化するAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)といったデジタル技術により、持続的に成長可能なビジネスモデルの再構築が可能か否かが問われると見解を示している。
なお今回の予測の主な概要の一部は以下のとおりだ。
- デジタル時代のなか、デバイス市場は規模拡大・好循環に突入
- クラウドとIoTによってプラットフォーム市場は拡大
- xTech市場は、あらゆる領域において誕生・拡大
デバイス市場はデジタル時代の波にのり規模拡大の好循環へ
デジタル技術によって企業経営やビジネスモデルの変革を進める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」への注目が高まるなか、デバイス(端末機器)市場でもさらなる発展が期待されている。
また、コンピューティングパワーの拡大、大量のデジタルデータの創出、シェアリングエコノミーなどビジネスモデルの変革によって、AIによる「データ駆動型のアプローチ」で産業間の融合が進むことにより、NRIはこれを実現するデバイスへのニーズがますます高まりつつあるとしている。
図1:全世界の携帯電話端末販売台数の推移と予測(地域別)
一方、携帯電話は2015年から年間20億台以上販売されており(図1)、人口普及率は全世界で100%を超えている。NRIは携帯電話網がモバイル決済などのかたちで人々の生活へ溶け込み、日々大量のデータをうみだす巨大インフラ化していると分析している。
図2:スマートスピーカーの保有世帯数予測(国内)
スマートフォンに関しては、AI機能搭載により、データ創出インフラとしての位置づけが高まるだろうと分析。スマートスピーカー普及(図2)に伴ってヒューマンインターフェイスの変革が進むに伴い、さまざまなデバイスを通じ得られたデータ獲得を巡る競争が激化すると予想している。
そのほか、デバイスへのAI搭載が進んで、データへのアクセシビリティ(アクセスのしやすさ)が競争力のひとつとなっているなかで、デバイス市場は、①データの創出→②そのデータをAIに読ませることによるアプリケーションの利便性向上→③デバイス市場の更なる拡大といったポジティブサイクルに突入するとの推測だ。
プラットフォーム市場、クラウドとIoTの牽引により拡大
NRIはこれまで企業の情報システム投資の中心にあった、「コーポレートIT」向け投資に加え、ビジネスの価値向上を目指す「ビジネスIT」への投資が市場拡大をけん引するとの推測だ。
特にビジネスITの分野では、さまざまなB2B(事業者向け)プラットフォームの登場、社会インフラとICTが融合したスマートシティなど、企業の枠を超え、データやシステム間の連携が進んでいるとしている。
図3:クラウドサービス、データセンター、法人ネットワーク市場規模予測
NRIはプラットフォーム市場を牽引するのは主にクラウドサービスとIoTであると指摘。前者は2018年度の約2.9兆円から2024年度には約5兆円の規模に(図3)。
図4:クラウドサービス、データセンター、法人ネットワーク市場規模予測
また後者は2018年度の約4.3兆円から2024年には7.5兆円を超える規模へ大きく成長する見込みとの予測している(図4)。
xTech市場は、デジタル技術を駆使し領域を問わず誕生・拡大
xTech市場とは、クラウド・IoT・AIといったデジタル技術の活用によって、さまざまな分野・業界において新しいサービスを展開したり、業界構造そのものを変革したりする動きから出てくる新市場のことだ。
その範囲は幅広いが、「ITナビゲーター2019年版」では、FinTech(金融)、RetailTech(小売)、AdTech(広告)、AutoServiceTech(自動車関連サービス)、EdTech(教育)、HealthTech(ヘルスケア)、SporTech(スポーツ)、AgriTech(農業)・AquaTech(漁業)といった分やの動向分析・市場予測を行っているとの見解だ。
図5:国内法人型カーシェア市場予測
たとえばAutoServiceTech市場では、「所有から利用へ」というライフスタイルの変化に伴い成長を継続。法人型カーシェア市場では、個人顧客にとどまらずに法人顧客も取り込んで、都市部から地方部へ展開しながら、2018年度の3.3万台から2024年度には8.9万台に達すると予測される(図5)とのことだ。
需要は存在しながら、国内では収益事業としてのサービス提供が違法であるライドシェアに関しては、2019年に規制撤廃が実現すると仮定すれば、NRIは2024年度には12.7万台の市場規模になる見込みになるとしている。
一方、xTech市場において最も先行する市場の1つ「FinTech」では、次々と出現しているFinTech企業と既存金融機関の連携によって、新しいサービス・ビジネスモデルが興っていると指摘。
今回新たに予測した個人向けのスコアレンディングおよび法人向けのトランザクションレンディングの融資実行額を合わせたスマートレンディング市場においては、2018年度の約580億円から2024年度の約4,700億円にまで成長すると予測している。
AIなどを活用して自動的に投資運用を行うロボアドバイザー市場(当該サービスの運用総額)に関しては、2018年度の約2,700億円から2024年度の約1兆7,000億円まで成長すると予測されるとしている。
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