矢野経済研究所は2018年12月3日、2017年度の国内クラウドファンディング市場を調査し、市場規模(新規プロジェクト支援額)、新規支援プロジェクト件数、支援者数、類型別の動向、参入企業動向、将来展望を発表した。

それによると、2018年度の国内クラウドファンディング市場は新規プロジェクト支援額ベースで、前年度比20.3%増の2,044億円の見込みであるという。

2017年度の国内クラウドファンディング市場規模は前年度比127.5%増の1,700億円に

この調査は、クラウドファンディング運営企業、利用企業などを対象とし、同社専門研究員による直接面談、ならびに電話・e-mailなどによるヒアリングを併用した。

まず、市況概況として、2017年度(2017年4月~2018年3月)の国内クラウドファンディング市場規模は、新規プロジェクト支援額ベースで前年度比127.5%増の1,700億円と推計した。

そして、類型別に新規プロジェクト支援額をみると、購入型が約100億円(構成比5.9%)、寄付型は約7億円(同0.4%)、ファンド型約50億円(同3.0%)、貸付型(ソーシャルレンディング)約1,534億円(同90.2%)、株式型が約9億円(同0.5%)となった。

このうちもっとも構成比が高い類型は貸付型で、全体の9割を占め依然として市場拡大に大きく寄与している。購入型はサービス参入企業数がもっとも多いが構成比では5.9%でしかなった。

同社によると、市場拡大の背景には、貸付型の拡大のほか、一つには、2015年に金融商品取引法が改正され、非上場株式の発行を通じた資金調達を行なうための制度として創設された「株式型」が、2017年4月からサービス提供が始まったことがあるという。

また、地方自治体でのクラウドファンディング活用の広がりに加え、大手メディアや運輸業、製造業、物販業等々からの新規参入が続いており、サイト運営事業者と金融機関との事業連携も進み、資金調達の新たな門戸として定着しつつあるという。

そのようななか、インターネットを介して銀行取引が可能なネット銀行もファンド型で新規参入を果たしている。こうしたことなどから、今後さらに国内クラウドファンディング市場は拡大すると見込んでいる。

購入型では大型プロジェクトの達成が続く

次に、注目トピックとして、購入型では大型プロジェクトの達成が続くことを挙げている。

2017年度は新規プロジェクト支援者数が前年度比で倍増し、年度内で延べ137万人となり、15,321プロジェクトを支援したという。なかでも、購入型が大きく寄与しており、支援者数全体の58%(79万人)を占めたという。

また、新規支援プロジェクト件数をみると、2016年度の購入型の件数シェアは約6割程度を占めていたが、2017年度は貸付型(ソーシャルレンディング)の件数が増加したことで、新規支援プロジェクト件数では購入型と貸付型が二分しているという。

貸付型については依然として、利回り競争が過熱しており、投資期間が比較的短期で支援者の投資意欲が旺盛なことから、組成本数の増加に拍車をかけているとしている。

一方、購入型では、2016年度に続き「地方活性化・創生」プロジェクトやものづくりなどの「プロダクト系」が件数増加を後押しした形となり、堅調に推移した。

新規支援プロジェクトの傾向として、購入型は1プロジェクト当たり「10万円未満」の小規模のプロジェクトから、「1億円以上」の大規模プロジェクトまで幅広い成立実績があるとしている。

2018年度はいずれの類型も支援額は増加。市場規模は前年度比20.3%増の2,044億円に

そして、将来展望として、2018年度はいずれの類型も支援額は増加見込であり、2018年度の国内クラウドファンディング市場は新規プロジェクト支援額ベースで、前年度比20.3%増の2,044億円と見込んでいる。

特に、ファンド型においては、以前から扱われていた事業性ファンド等に加え、2017年に不動産特定共同事業法が改正され、小規模不動産に限ってインターネットで投資が出来る、クラウドファンディングを活用した投資環境が整う見込みで、不動産ファンドが扱えるようになることで拡大の見込みであるという。

国土交通省の強い推進によって、不動産事業者が使いやすく、かつ投資家の保護を図る環境が整う見通しであるとしている。

img:矢野経済研究所