IT専門調査会社IDC Japanは、日本と中国における産業用ロボット利用動向に関する調査結果を発表した。本調査では産業用ロボットサプライヤーの認知度と産業用ロボットを導入する際の事業者の選定要件について調査している。
調査結果は以下の3点に集約される。
- 産業用ロボットサプライヤーの認知度は、日本企業ではファナックが最も高く、中国はABBが21.7%で最も高い
- 日本の製造業は、産業用ロボット導入事業者にロボットの選定、カスタマイズ、導入までを期待。一方で中国は、用途別に必要機能を満たす産業用ロボットが調達できることを重視する傾向
- 中国市場における現地サプライヤーとの競争に対して、国内産業用ロボットサプライヤーはITを活用したロボット間連携などに取り組むことが重要
産業用ロボットサプライヤーの認知度について
日本ではファナックと安川電機が上位に挙がった。これらの企業は1970年以降、自動車や電機電子部品の製造現場を中心に自社の産業用ロボットを数多く導入したことで認知度を高めたと推測される。
一方、中国では21.7%の回答者がスイスの重電メーカーABBを挙げた。国内サプライヤーではパナソニックが上位に入る。
ABBは1990年以降、産業用ロボットの現地生産から販売までを行うサプライチェーンを構築し、中国の製造現場の需要を適切に把握することで中国市場を牽引してきた。また、パナソニックは、2000年以降、溶接ロボットの現地生産と積極的な技術者養成により販売を加速し、市場の認知度を高めたと考えられる。
産業用ロボットの導入事業者の選定要件について
日本の製造業は、「産業用ロボットの導入、機能調整、プログラミング、導入試験が可能」と回答した企業が21.7%、一方中国の製造業は「顧客の用途に応じて、必要機能をモジュラー単位で提供、またはカスタマイズの選択肢を提供できる」が25.0%と最多だった。
さらに、日本と中国双方の企業に共通して多かったのが「顧客要件や導入予算を把握し、最適なソリューションを提案できる」ことであり、両国に共通する導入事業者の要件であることが判明した。
中国市場では、産業用ロボットの需要拡大に伴い、新松机器人や上海新時達電気などの現地サプライヤーの存在感も増す。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの藤村成弘は「今後激しくなる中国の現地サプライヤーとの競争に対して、国内産業用ロボットサプライヤーはITを活用した産業用ロボットと搬送ロボットの連携など、ロボット間連携に向けた機能強化に取り組んでいくことが重要である」と述べている。
img:IDC