アクセンチュアは、グローバル調査レポート「CMOの役割の再考(Rethink the Role of the CMO)」を公表した。

調査では、最高マーケティング責任者(CMO)が、これまで以上にビジネスに貢献するには、「CMOコラボレーター」としての役割を担う必要があることが明らかにされている。

CMOは、経営幹部やテクノロジー・エコシステム、代理店パートナーにわたる新たなレベルのコラボレーションを主導することで、現代企業の成長の源泉とも言える「顧客体験(CX)」の向上をより強力に推進できるようになるという。

調査は、委託を受けたフォレスター社により、2018年7月から同年8月にかけて、オンライン調査で行われた。調査対象は、米国、カナダ、英国、ドイツ、オーストラリアの幅広い業界における、マーケティングの意思決定を行う上級役職者250人。くわえて、マーケティングの意思決定を行う上級役職者10人に詳細な電話インタビューも行った。

両方の調査から、顧客体験の構築や提供における現在/将来のCMOの役割と、顧客のニーズを満たすための企業全体のコラボレーションの必要性について評価している。

CXは現代の企業にとって“新たな戦いの場”

CXは現代の企業にとって新たな戦いの場になっているという。調査では、対象企業の約87%が、従来型の体験では顧客を満足させることができない、と回答した。

環境の変化により、CMOの役割は従来型のブランド広告やコミュニケーションの枠を超えて、ビジネスの成功につながる顧客体験の実現計画の推進にまで拡大している。

フォレスターによる過去の調査では、CXスコアが1ポイント上昇すると、年間収益が1,000万~1億ドル(約113億円)増加することが明らかになっている。CXが企業の利益拡大を促す、ということを証明している。

北米のアクセンチュア インタラクティブの責任者であるグレン・ハートマン(Glen Hartman)氏は、次のように述べている。

「多くの最高経営責任者(CEO)が新たな経営幹部の肩書きを模索する理由の1つに、CEO自身が『いまだ誰もCX計画をうまく推進できていない』と感じていることが挙げられます。

CMOが事業部門間やさまざまな関係者をつなぐコラボレーターの役割を果たすことで、彼らの潜在能力は最大限に開花し、売上増加につながるCX計画を強力に推進できるようになるでしょう。

そうすることでCMOは顧客の声を反映し、かつ、企業、代理店、テクノロジー パートナーの連携を図りながら、世界最高の顧客体験の提供に注力できるようになります。」

調査レポートによると、過去2年間において、企業の88%でCMOの職域が変化している。その傾向は今後2年間も続くと考えられる。優れたCXの提供を推進するには、CMOがこの新たな複合的な役割を受け入れ、CMOコラボレーターとして常に考え、行動する必要がある。


CMOには事業部門間をつなぐ役割があると認識している企業の割合

調査レポートには、次のような記述もある。

「CMOコラボレーターは今こそ、企業全体でCXをいかに形成し、提供していくかという重要課題に大きな力を発揮するべきです。

世界トップレベルの体験を提供するには、企業全体を巻き込んだこれまでにないコラボレーションが必須となります。今や企業の90%が、CMOにはさまざまな事業部門をつなぐ役割があると認識しています。」

“CMOコラボレーター”と”従来型マーケター”の違い

本調査レポートでは、CMOコラボレーターの役割について、「チームに企業、部門、場所の枠を超えて行動するよう促すとともに、事業部門間のコラボレーションを促進する新たな文化を醸成する人物」と定義している。

コラボレーションリーダーと従来型マーケターとの大きな違いは、社外パートナーと内部チームをまとめ、協力させるという点だ。

コラボレーションリーダーによって、組織全体がブランドのビジョンにあわせて連携できるようになる。また、CX戦略をビジョンの実現のために調整できるようにもなる。

調査では次の点が明らかになった。


自社の顧客体験が競合企業よりも勝っていると答えたリーダー

  • 自社の顧客体験が競合企業よりも勝っていると回答したコラボレーションリーダーは95%、従来型マーケターはわずか68%
  • コラボレーションリーダーがCレベルの経営幹部らをつなぎ、経営陣レベルでコラボレーションを行う可能性は、従来型マーケターの2倍
  • コラボレーションリーダーを擁する企業の90%が、顧客体験戦略を実行できる体制にある
  • 従来型マーケターがCEOからトップダウンの支援が得られず苦労する可能性は、コラボレーションリーダーの2倍以上

ブランド構築に不可欠なCX

今日の世界では、デジタル技術により相互につながることで、ブランド体験が分断されてしまう恐れが高まっているという。

調査によると、「自社のブランドで体験に関するビジョンを明確に定義している」と回答したマーケターは、わずか36%にとどまった。

さらに、以下の点も判明している。

  • 顧客体験を全社で共有し、その実現のために連携していると回答したコラボレーションリーダーは95%、従来型マーケターはわずか68%
  • 知見に基づく共感的な関係を顧客と築いているコラボレーションリーダーは81%、従来型マーケターはわずか53%
  • 自社が顧客の期待に応えていると回答したコラボレーションリーダーは96%、従来型マーケターは77%
  • コラボレーションリーダーを擁する企業の69%が、自由な創造性と溢れ出るアイデアから恩恵を受けて、顧客体験に「感動」をもたらしていると回答

従業員、テクノロジーパートナー、代理店パートナーによるコラボレーションの必要性

マーケティング部門が、状況に適した、関連性の高い、パーソナライズされたCXを提供するには、テクノロジーに大きく依存することになる。

現在、マーケティングテクノロジーの購入決定の実に50%が、マーケティング部門以外で下されているという状況だ。CMOは、複数のチャネル、事業部門、地域に影響するツールの採用の意思決定において、主要な役割を果たす必要がある。

調査では、さらに約52%の企業が、自社のCMOが代理店とチーム間のコラボレーションを必要としていると回答している。先進性をもつCMOコラボレーターは、競合の一歩先を行くにはパートナーシップが不可欠である、という認識を持つ。

コラボレーションリーダーの83%が、こうした戦略を拡大中、またはすでに導入していると回答。従来型マーケターでは、その割合が60%に留まる。実際、コラボレーションリーダーの91%が、社外の協力者が顧客体験戦略の重要な役割を担っていると考えている。

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