自動化、工場・店舗の次はレストランへ。中国人気火鍋店に見る「レストランの未来」

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工場での製造やコンビニなど店舗・倉庫の運営へのロボット活用で定型的なタスクの自動化が進んでいる。これにともない、繊細な作業や企画、コミュニケーションなど人でしかできないことに集中できる環境が生まれている。

いま、これと同じことがレストランでも起ころうとしている。

中国の人気火鍋店ハイディーラオは2018年10月末に北京で、厨房の調理だけでなく注文・配膳をすべて自動化したスマートレストランをオープンした。パナソニックの自動化システムを導入、従業員は接客サービスに一層集中できるようになったのだ。

ハイディーラオはもともと火鍋の味だけでなく、子連れ客や待ち客へのサービスが良いと評価されてきた。従業員がサービスに一層集中できる環境は、同社の評判をさらに高めることになるかもしれない。

2018年9月香港でのIPO実施で1,000億円以上を調達し、評価額ベースでアジア最大のレストランチェーンとなったハイディーラオ。同社の取り組みが外食産業に大きな影響を及ぼすのは間違いないだろう。

今回は人材不足など外食産業における自動化を後押しする要因に触れつつ、中国のロボットレストラン最新動向をお伝えしたい。

中国の人気火鍋店がロボットを導入した理由

1994年に四川省で創業されたハイディーラオ。創業当初は四川省特有の辛い味付け麻辣(マーラー)味の火鍋を提供していたが、店舗拡大・海外展開にともないメニューも多様化していった。現在ではトマト味のスープなども楽しめる。

2018年時点の店舗数は中国国内に300店舗以上、海外では米国やシンガポール、日本、韓国などで29店舗を展開。日本では新宿、池袋、心斎橋、幕張の4カ所で店舗を運営している。

ハイディーラオ・シンガポール(筆者撮影)

スマートレストランは、北京中心の国貿エリアにオープン。テーブル数は93。

客がタブレットで注文すると、キッチンのロボットがスープと具材の準備を行い、配膳ロボットがテーブルまで運ぶ自動化システムが導入されている。配膳ロボット数は6台。また各テーブルの鍋の加熱具合も自動で調整されるという。

この自動化システムを活用したスマートレストランの展開にあたりハイディーラオはパナソニックと2018年3月にシンガポールで合弁会社を設立。新会社の資本金は2,000万ドル(約23億円)、51%をハイディーラオ、49%をパナソニックが出資した。

ハイディーラオは今後世界中に5,000店舗を展開する計画があるが、この目標実現に向けて自動化がカギになると見ている。

1つは自動化による節電効果だ。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)紙によると、各テーブルの鍋の加熱具合の自動調整によって、このスマートレストランでは少なくとも10%の節電が可能になるという。

ハイディーラオのスープ(筆者撮影)

もう1つが深刻な人材不足問題への対応だ。

ハイディーラオでは現在1店舗あたり170人のスタッフが働いている。SCMPによると、同社は自動化によって130〜140人に削減できると考えている。しかし削減するのはキッチンの人材で、接客を行うホールスタッフは削減しない意向だ。ハイディーラオの接客サービスは中国国内で高く評価されており、その質を落としたくないという考えだろう。

また今後5,000店舗まで増やすにあたり、人材確保が難航する恐れがある。同社はこの問題を自動化で乗り切る構えだ。

中国では現在少子高齢化による労働人材の減少が進んでおり、外食だけでなくさまざまな産業で人材不足問題が顕在化している。

中国政府の試算によると、2030年の労働人口は2011年比で1億人以上減少し、8億3,000万人になるという。2050年にはさらに1億人減少し7億人にまで減る可能性もある。

また労働人口の減少にともない、現在高止まりしている賃金上昇率がこの先も続く可能性も予想されている。中国の全産業の賃金上昇率は2011年に11.3%、2012年に10.5%、2013年に9.7%といずれも10%近い上昇率となっている。

また、最近ではデリバリーサービスの急拡大より、レストランからデリバリーへの人材流出が加速しているという報道もある。デリバリー企業は賃金を上げ人材確保に躍起になっているという。国全体で人材供給がひっ迫し人材獲得競争が激化、この状況は今後も続く見込みだ。

中国では、アリババやJD.comなどテクノロジー大手もスマートレストラン事業への関心を示している。

上海にあるアリババ傘下のスーパーチェーンHemaでは、ロボットレストラン Robot.Heがこのほどオープン。調理は人が行っているが、配膳はロボットに置き換えられている。

アリババ傘下Hemaのロボットレストラン(アリババチャンネルより)

Hemaの広報担当者はグローバル・タイムズの取材で、近年外食産業では人材確保が難しくなっていると指摘。その上で、ロボット導入は人材不足を補い、コストを下げられるメリットがあると説明している。今後北京などでもロボットレストランを展開する計画があるという。

一方、JD.comは2020年までにロボットレストランを1,000店舗展開する計画があると報じられている。

ロボット技術の発展に加え、人材不足という追い風を受け、中国外食産業におけるロボット導入は今後1〜2年で一気に加速しそうな様相だ。ロボット導入によって、調理、衛生管理、接客がどのように変わっていくのか、今後の動向から目が離せない。

文:細谷元(Livit

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