あと1年を切った消費税10%への引き上げは肯定と否定の企業に分かれる―帝国データバンク

帝国データバンクは、消費税率引き上げに対する企業の見解について調査を実施、2018年11月14日にその結果を発表した。

それによると、消費税率10%への引き上げについて「予定どおり実施すべき」と考える企業が43.3%となった。また、「延期」「現行維持」「引き下げ」など2019年10月の引き上げに否定的な見方をする企業も計43.1%となり、二分する結果となったという。

引き上げ肯定と否定が二分する結果に

消費税率を2019年10月に10%へと引き上げることに対する企業の見解について尋ねたところ、「予定どおり(2019年10月に)実施すべき」が43.3%となり、4割を超える企業が消費税率を予定どおり引き上げるべきと考えていることが明らかとなった。

また、「実施するべきでない(現行の8%を維持)」の24.5%が続いたほか、「時期を延期して実施するべき」(12.0%)や「消費税率を引き下げるべき」(6.6%)を含めて、引き上げに否定的な企業の割合が計 43.1%となり、予定どおり実施すべきと考える企業と二分する結果となった。

規模別にみると、「予定どおり実施すべき」と考えている企業は、規模が小さくなるほど少なくなる傾向もあり、「小規模企業」は「大企業」を5.8ポイント下回った。逆に、「現行の8%を維持」や消費税率の「引き下げ」では「小規模企業」が「大企業」より6ポイント以上高くなった。

他方、前回調査(2014年10月調査。2015年10月に10%への引き上げを予定していた)と比較すると、「予定どおり実施すべき」は 25.3%から18.0ポイント増加しているほか、「時期を延期して実施するべき」は 32.1%から20.1ポイント減少している。これに対し、帝国データバンクでは、消費税率引き上げに対する見解が大きく変化してきた様子がうかがえるとしている。

55.1%が引き上げにより企業活動にマイナス影響あり

次に、消費税率が10%に引き上げられた場合、自社の企業活動にどのような影響があると見込んでいるかとの問いと、そして「マイナスの影響がある」割合の結果が上のグラフである。

これをみると、「(業績に)マイナスの影響がある」と回答した企業が34.2%となった。また、「(業績以外で)マイナスの影響がある」(20.9%)と合わせて、企業の半数超となる55.1%が消費税率引き上げにより企業活動にマイナスの影響があると見込んでいることが明らかとなったという。

また、企業活動に「影響はない」(27.6%)は4社に1社だった一方、プラスの影響を見込む企業は計2.1%にとどまった。

企業活動にマイナスの影響があると見込む企業について業界別にみると、『小売』は81.2%(業績62.8%、業績以外18.4%)にのぼり、8割を超える企業で消費税率引き上げによる影響を懸念していることが浮き彫りとなった。

また、『農・林・水産』(66.7%、同39.2%、同27.5%)が6割台となり、特に業績以外でマイナスの影響を見込む割合がもっとも高かった。以下、『卸売』(57.3%、同36.4%、同20.9%)、『不動産』(57.2%、同38.8%、同18.4%)、『建設』(55.5%、同34.8%、同20.7%)が続いた。

軽減税率制度の導入の対応は「内容の確認」がトップ

また、消費税率引き上げでは、「酒類・外食を除く飲食料品」および「週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)」を対象に消費税の軽減税率制度が導入される予定である。また、軽減税率制度は、軽減税率の対象品目を取扱う事業者だけでなく、物品購入にともなう経費処理など、すべての事業者に関係する制度となっている。

そこで、軽減税率制度の導入に対して、現時点で、どのような対応を行っているか尋ねたところ、実施時期や対象品目、帳簿・請求書などの記載事項、納税事務、軽減税率対策補助金などの「軽減税率制度の内容の確認」が41.8%でトップとなった。

次いで、「影響が生じる事務の確認」(36.7%)、「会計システム等の導入・改修・入れ替え」(23.5%)、「帳簿や請求書等の記載方式変更」(18.0%)、「税率区分に応じた経理処理の見直し」(17.2%)が続いた。

同社では、軽減税率制度の導入に関する企業の対応は、大企業が先行する形で進められているものの、制度の内容や影響範囲の確認が主な項目となっていると分析している。

政府に優先的に取り組んでほしい政策は「景気対策」

最後に、政府に優先的に取り組んでほしい政策を尋ねたところ、「景気対策」が67.8%となり、突出してトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「少子化対策」(37.3%)、「中小企業支援の充実・拡大」(33.2%)、「財政再建」(33.1%)、「税制改革」(32.7%)が3割台で続いた。

この調査によると、企業の見解が二分している状況が浮き彫りとなった。特に規模が小さい企業ほどその傾向が強くみられている。とりわけ『小売』では企業活動へのマイナス影響を見込む企業が8割を上回っている。

この結果に対して、帝国データバンクでは全体の半数を超える企業で消費税率引き上げによる影響を懸念しており、政府の財政再建と景気回復の両立を目指す政策の実現が一段と重要性を増していると分析している。

※この記事の内容や図はすべて帝国データバンク発表の「2019 年 10 月の消費税率引き上げ、企業の見方は二分」より引用。

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