配送効率改善やコスト削減につながるとして注目される「デリバリードローン」。

アマゾンの「プライム・エア」やDHLの「パーセル・コプター」がよく知られている。これらは主にラストマイルデリバリーを想定して開発されており、機体はコンパクトで、積載量は数キログラムほどになる。

アマゾンが開発するデリバリードローン「プライム・エア」(アマゾンウェブサイトより)

一方、中国では数年後に積載量1トン以上の巨大なデリバリードローンが登場し、デリバリードローンのイメージを大きく変える可能性が出てきた。

北京航空航天大学からスピンオフした企業Beihang UASが開発しているのは、機体の全長11.9メートル、翼幅19.6メートルの固定翼ドローンだ。飛行距離は1,500キロメートル、最大積載量は1トン、トップスピードは時速400キロメートルに達する。

同社の開発デザイン責任者チャン・シュオ氏がチャイナデイリーに述べたところによると、2018年末までにデザインを最終化し、2019年にプロトタイプを作製、2020年に試験飛行を実施、その後2025年までにドローンを中心としたデリバリーネットワークを構築する計画という。

Beihang UASは、デリバリードローン開発でアリババ傘下のロジスティクス企業Cainiaoと戦略提携を結ぶ計画もある。

この巨大デリバリードローンは、ラストマイル・デリバリーではなく省間の配送、山間部や離島への配送を想定している。

またサウス・チャイナ・モーニング・ポストによると、Beihang UASは、全長14.4メートル、翼幅14.6メートルの多目的水上離着陸ドローンも開発している。このドローンは1.5トンのコンテナを積載し、2,000キロメートルの飛行が可能という。

アリババは次世代ロジスティクスを構築するために1,000億元(約1兆6,500億円)を投じる計画を明らかにしている。その一環でドローン開発へも資金が投じられる見込みだ。

巨大デリバリードローンを開発しているのはBeihang UASだけではない。

2018年3月に中国当局からデリバリードローンの運用ライセンスを取得した第1号企業として注目を集めたロジスティクス企業SFエクスプレスも最大積載量1.5トンの巨大ドローンを開発中だ。

SFエクスプレスは、中国国産小型飛行機「Yun-5B」に無人飛行システムを搭載し、最大積載量1.5トン、飛行距離1,200キロメートル、巡航速度180キロメートルのドローンを作り上げた。Beihang UASのドローンと同様に山岳地帯や離島など遠隔地へのデリバリーを想定している。2018年10月に中国モンゴル自治区ボグト市の砂漠地帯で試験飛行が実施され成功したと地元メディアが報じている。

SFエクスプレスのデリバリードローン試験飛行の様子(CGTNチャンネルより)

中国国家統計局によると、2017年には国内だけで400億個以上の小包が配送され、配送サービスの売上高は5,000億元(約8兆1,700億円)に上ったという。一方、人口14億人のうち依然として半分ほどがロジスティクス・インフラが整っていない農村部に住んでいるといわれている。これら遠隔地への配送アクセスを整備することで、Eコマースやロジスティクス市場はさらに拡大する可能性があると見られている。これを実現する上で巨大ドローンは欠かせない存在になるはずだ。Beihang UASやSFエクスプレスの取り組みはどのようなインパクトを与えるのか、今後の展開にも注目していきたい。

文:細谷元(Livit