順天堂大学とNTT Com、“アグリヒーリング”のストレス軽減効果を実証する実験を開始

順天堂大学及びNTTコミュニケーションズは、農作業によってストレス軽減をはかる「アグリヒーリング」の効果を医科学的に確立した手法の普及に向け、ウェアラブル生体センサhitoe®(以下 hitoe)をはじめとしたICTによるストレス測定システム開発を行う実証実験を開始すると発表した。

実証の概要は以下のとおりだ。

日本の精神疾患患者数が4大疾病の患者数を上回る

ここ数年で日本の精神疾患患者数は増加しており、平成26年には従来の4大疾病(悪性新生物、糖尿病、脳血管疾患、虚血性心疾患)の患者数を上回って約400万人に達している。

一方で、厚生労働省「平成26年度国民医療費の概況」によれば神疾患患者の年間医療費は医療費全体の約6.5%にあたる約1兆9,000億円となっており、社会的・経済的な損失及び医療費負担は非常に深刻化している状態だ。

精神疾患の要因ともいえるストレスは、職場・家庭など環境を問わず発生しており、人々はストレスを無意識に蓄積する傾向にある。順天堂大学は、このようなストレス社会では、自分でストレスをコントロールする手法やストレスを軽減する環境の創出が重要としている。

順天堂大学が注目する「アグリヒーリング」と実証実験にあげられる問題点

そんななか、順天堂大学が一次予防手法として注目しているのが「アグリヒーリング」などの園芸療法だ。(園芸療法とは、花の鑑賞や農作業の実施によって精神疾患の改善や高齢者の認知レベル改善を行う治療方法である。)

順天堂大学ではアグリヒーリングなどの園芸療法で、心理負担の緩和によるストレス軽減効果の定量・数値化(可視化)に取り組み、その具体的な成果を確認してきたという。

しかしながら、その際に用いた唾液採取セットが高価な上に、取り扱いの制約や、参加者が抵抗感をいだくことがあったりなどの問題があった。そのためアグリヒーリングのストレス軽減効果を医科学的に証明したとしても、会社や学校などで実施されているストレス対策プログラムに採用されづらいという課題があった。

そこで順天堂大学では、ストレス軽減効果の可視化を唾液採取以外の手法でより簡単・高精度に実施するため、ICTによる社外問題解決・企業のビジネス変革を行うデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するDX Enabler「NTT Com」と共同で本実証実験を実施するとのことだ。

アグリヒーリングによるストレス軽減効果の実証実験概要

順天堂大学及びNTT Comは、NTT Comのhitoeと「データ流通プラットフォーム」を駆使し、アグリヒーリングによるストレス軽減効果を医学的に可視化する測定システム開発に取り組むとのこと。

本実証実験の主な概要は以下の2つだ。

  1. 順天堂大学がストレス軽減効果を判定する手法とアルゴリズムを確立

    順天堂大学では、以前から行っていたアグリヒーリング参加者唾液採取によるストレスホルモン計測に加え、hitoeで自立神経をリアルタイムで計測する手法を検証。
    自律神経などに関して得られたデータを分析し、ストレス軽減効果の高精度かつ簡単な計測手法とそのアルゴリズム確立を目指すとのことだ。
  2. NTT Comがソフトウェアおよびストレス可視化アプリケーションを開発。「データ流通プラットフォーム」でストレス測定を実施。

    NTT Comはアルゴリズムを反映するソフトウェアを開発し、それを「データ流通プラットフォーム」へ搭載することで、hitoeが取得した自律神経などのデータよりストレスの可視化を実施。
    くわえて、ストレス可視化アプリケーションの開発により、スマートフォン・タブレットにてリアルタイムでのストレス軽減効果を確認する。

順天堂大学では本実証実験によって、今後は唾液採取でなくhitoeで得られるデータを「データ流通プラットフォーム」上のアルゴリズムで分析することによって、ストレス軽減効果の医学的な根拠データとしての有効性を見出すという。

その上で、その測定システムを使いアグリヒーリングの精神疾患予防や将来的な治療への活用を目指すとしている。

ストレス軽減効果実証実験の今後について

さらに順天堂大学及びNTT Comは、今回の手法を農作業だけでなく食や医療・福祉・介護といったさまざまな分野へ拡大することにより、広い分野でストレス性疾患による社会・経済的損失の軽減に寄与することを目指す方針だ。

img:PR TIMES

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