日立が工場で高精度に状況認識するAI技術を開発。今後は見守りサービスなどへの応用も

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スマートファクトリーの実現に向けて、工場内のIoT化が進んでいる。このため、設備の保守点検についてもセンサーなどが利用され始めている。

一方、センサーを使わない音を利用した設備点検法もある。これは、従来、熟練者が音を聴いて経験に基づき設備の稼働状態を診断する方法が一般的だった。

しかし、近年の熟練者不足などにより、自動での診断サービスのニーズが高まってきている。ところが、工場内などでは、環境音や反響音など多様な種類の雑音が混在しているため、音に基づく正確な状況認識が難しく、設備の稼働状態を高精度に把握することが困難だった。

このような課題に対し、日立製作所は2018年11月5日、周囲の雑音に影響されず音に基づいて高精度に状況を認識することができるAI技術を開発したと発表した。

この技術は、周囲環境から発生するさまざまな音や周囲の物体や反響音などの雑音が含まれる音を、音源の方向や音色の違いなどの複数の観点に基づいて分解し、分解された音をもとに状況認識を行うという技術だ。

これにより、設備の稼働状態や人の活動状態を高精度に認識することができるという。

多様な種類の雑音が存在する環境でも高精度な状況認識が可能に

この技術では、まず、複数のマイクロホンで音を録音し、マイクロホン間での音が到達する時間差から推定される音源の方向や、音色の違いから推測される反響音かどうかなどの複数の観点に基づいて、雑音が混ざった音を分解する。

さらに、複数の脳の神経回路を模擬した素子のネットワークを多層構造にしたものであるディープニューラルネットワーク(DNN)に分解した音をそれぞれ入力し、設備や人などが置かれている状況と一致する確率をそれぞれ計算する。

そして、最後にその計算結果の多数決により、総合的な状況認識結果を出力するという仕組みだ。

これまでは、それぞれのDNNが受け持っている一つの観点だけに頼ると雑音に影響されやすいという問題があったが、複数のDNNの多数決による結果を確認することで雑音に影響されにくくなる。

これにより、多様な種類の雑音が存在する環境でも高精度な状況認識が可能になったと同社では発表している。

今回、日立は、IEEE AASP TCが公認する、音響認識分野で最大の国際コンペティション「DCASE 2018 Challenge」のTask 5(家に設置した複数のマイクロホンを用いて収録された音のデータから、「料理中」、「食事中」、「仕事中」、「会話中」、「テレビ視聴中」などの9カテゴリの日常活動のいずれの状況かを認識するタスク)において第1位のスコアを獲得し、技術の効果を確認。

今後、日立製作所では、この技術を、音に基づいて設備の状態を自動診断するサービスや人の活動状態を自動認識する見守りサービスなどへの応用を考えているという。

機能向上などの開発を進め、この技術の実用化を目指す方針だ。

Img:日立製作所

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