2020年の次世代植物工場の世界市場規模は165億円超に。遺伝子組換え植物が市場拡大をけん引か

矢野経済研究所は、高機能・高付加価値型「次世代植物工場」世界市場の調査を実施。高機能・高付加価値植物(遺伝子組み換え植物、生薬植物、機能性野菜)の動向や主要企業・研究機関の動向、それらを踏まえた世界市場の将来展望を11月1日に発表した。

それによると、2020年の次世代植物工場の世界市場規模は2017年比4.6倍の165億円超になると予想している。

栽培植物の高付加価値化を図る傾向に

この発表では、まず市場の概況から解説している。それによると、植物工場は栽培環境を制御することで植物の生育をコントロールできる。このため、植物が本来持っている機能性成分を高濃度化、または高含有化することが可能であるという。

また、栽培環境の最適化により、機能性成分の含有量や品質のバラつきを抑えながら、年中安定生産できる点も特長であるとしている。

一方で植物工場は、概して初期投資と運営・管理維持費用ともに高額となる。たとえば、一般的なレタス類の生産コストは高く、露地物と販売価格において競合するには、超大型植物工場でないと見合わないのが現状だという。

こうしたなか、中小規模の植物工場のなかには、採算性改善を考慮し、栽培植物(遺伝子組み換え植物、生薬植物、機能性野菜)の高付加価値化を図るところが増えているという。

実用化に向けて解決すべき課題が山積

また、注目トピックとして、実用化に向けて解決すべき課題が山積であることを挙げている。

日本を始め、世界各地において高機能・高付加価値植物として遺伝子組換え植物や生薬植物、機能性野菜を植物工場で生産するための取り組みが活発に行われている。

このうち機能性野菜については、摂食で生活習慣病の改善や予防が期待されるなか、生鮮野菜や健康補助食品として販売が徐々に拡大しているという。

一方で、遺伝子組換え植物や生薬植物は、実用化がもたらす影響が大きく、高い潜在需要を有するものの、栽培技術の構築や販路の開拓、生産コストなどにおいて解決すべき課題が多く存在するという。

現在抱えている課題をいかに早く解決できるかが今後の市場拡大には重要であると考えるというのが同社の見解だ。

2020年の世界市場規模は165億5,300万円に

そして、次世代の高機能・高付加価値型植物工場市場が本格的に立ち上がり期を迎えるのは、遺伝子組換え植物を利用した複数のヒト用・動物用ワクチンの実用化が実現する2020年になると見込んでいる。

同年における世界市場規模(遺伝子組み換え植物※、生薬植物、機能性野菜)は出荷金額ベースで165億5,300万円になると予測している。
(※遺伝子組換え植物は宿主植物ではなく、有用物質を製品化した当該製品の出荷金額ベース)

また、同社では2020年以降も生産量では機能性野菜が依然として大半を占めると見込んでいるが、金額では高価なバイオ医薬品などに用いられる遺伝子組換え植物が市場拡大をけん引していくと見ている。

これにより、2025年の世界市場規模(同)は出荷金額ベースで1,618億9,500万円になると予測している。

img:矢野経済研究所

モバイルバージョンを終了