「煙のない社会」が実現すれば、わたしたちはより快適な生活を送れるかもしれない。
非喫煙者からすると、たばこのにおいや煙に不快感を感じるのはもちろん、副流煙による健康被害を懸念する人が少なくない。喫煙者の中にも健康リスクを気にはしながらも、たばこをやめるにやめられないというユーザーもいるだろう。
そういったユーザーニーズに応えて、“加熱式たばこ”や“電子たばこ”という喫煙者や非喫煙者の健康はもちろん、たばこが持つにおいや有害な煙を抑えた商品がこの数年で一気に市場を席巻している。
その中のひとつが、フィリップ・モリス・インターナショナル(以下、フィリップ・モリス)の加熱式たばこIQOS (アイコス)である。
2018年10月23日に都内でフィリップ・モリスがIQOS の新商品、IQOS 3 関連の記者会見を実施した。フィリップ・モリスはこのIQOS を使って、世界中を煙がないスモークフリーの社会にすることを目指している。
火を使わない加熱式たばこは“有害な煙”と“におい”を抑える
記者会見の話題に入る前に、加熱式たばこに馴染みがないユーザーに向けて、フィリップ・モリスが過去に発表している内容から簡単に従来の紙巻たばこと加熱式たばことの違いについてみてみよう。
加熱式たばこというのは、火を使わず、温度を350度以下で制御した加熱ブレードにより、たばこ葉を300度以下の温度で加熱させ、蒸気を発生させるものだ。なお従来の紙巻たばこは、たばこ葉を600度近くの温度で燃焼させるために、独特のにおいや有害な成分を含む煙が発生していたという。
加熱式たばこは「火で燃やさないこと」によって有害な成分を含む煙や独特なにおいを抑え、かつ「低温で加熱すること」によってたばこ葉が本来持つ味わいを提供しているとしている。
今回、記者会見で発表された加熱式たばこは「IQOS 3 」と「IQOS 3 MULTI 」の2種類だ。
IQOS 3 とIQOS 3 MULTI 、その他アクセサリー
IQOS 3 は従来品に改良を加え、ユーザーが使いやすいような操作感と吸うために使用するホルダーの充電時間を短縮させた。IQOS 3 MULTI では、シリーズ最軽量の50gを実現し、IQOS シリーズで初めてとなる連続使用が可能となった。
紙巻たばこ発売からの撤退
記者会見においてフィリップ・モリス・インターナショナル CEO アンドレ・カランザポラス氏は、IQOS の日本市場における成長面から今後の期待を次のように述べた。
カランザポラス氏(以下、敬称省略):「日本市場の成長は現状鈍化しているが、それはどのようなカテゴリーでも起こる自然なことです。今、我々にとって大切なことは様々な利用者の意見に耳を傾けることだと思います。それによって製品面や金額面を改善していくことで、新規ユーザーに対してもIQOS の利用を促すことができるはずです。」
さらに、たばこを取り巻く将来の展望として次のように語る。
カランザポラス:「フィリップ・モリスは紙巻たばこをIQOS で代替したいと考えています。将来的には紙巻たばこの発売自体をやめたいとも思います。とはいえ10億人以上の喫煙者が紙巻たばこを吸っている現状があるため、より良い代替製品を提供できるよう引き続き取り組んでいく必要があるのです。」
カランザポラス氏のコメントから、フィリップ・モリスが真剣に紙巻たばこの代替品として加熱式たばこの開発に取り組んでいることが伝わる。そして、これまで築かれてきたたばこ社会の当たり前を崩そうとする姿勢も伺えた。
スモークフリー社会の実現に向けたフィリップ・モリスの取り組み
では実際にフィリップ・モリスはスモークフリーの社会を目指して、どのような取り組みを実施しているのだろうか。
まずは紙巻たばこからRRP(リスク低減する可能性のある製品)への転換に向けた商品開発だ。フィリップ・モリス・ジャパンは3つの企業ビジョンのひとつに以下を掲げている。
「紙巻たばこの代替となる製品を目指して、紙巻たばこを喫煙し続けた場合に比べ、健康へのリスクを低減する可能性のある製品の開発と市場導入を行う」
つまり、従来の火でたばこ葉を燃焼して味わう紙巻たばこから、RRP(リスク低減する可能性のある製品)である加熱式たばこへとユーザーが切替えられるよう製品開発とその橋渡し、啓蒙活動などに取り組んでいるようだ。このような活動をハーム・リダクションと呼ぶ。
ハーム・リダクションというのは、喫煙のように健康被害や危険をもたらすための行動習慣を直ちに止めることができない場合、その被害や危険を可能な限り最小限にするための取り組みをいう。フィリップ・モリスは、加熱式たばこの研究・開発、科学的評価の検証を通して、たばこにおけるハーム・リダクションを実施しているのだ。
さらに関連団体への働きかけを通して、喫煙やたばこを取り囲む規制やその枠組みを変えることを訴えている。これらの行動を通して、市場に出回る製品をより健康リスクが少ないものへの変更や代替品の提案を続けているという。
また、健康経営を課題に掲げる企業に対して、フィリップ・モリスは定期的な勉強会を実施している。紙巻たばこが引き起こすリスクをはじめ、加熱式たばこが代替品になりえる理由や企業として喫煙対策に必要なコスト、加熱式たばこを導入した他社事例などを共有。
こうした行動が、企業や経営者に対するハーム・リダクションの啓蒙につながるだけでなく、啓蒙先の従業員にとっても加熱式たばこの正しい認知や普及につながるとしている。
ハーム・リダクションが導くスモークフリーの社会
加熱式たばこという代替品を使うことによって、健康被害を最小限に抑えるためのハーム・リダクションがフィリップ・モリスを中心に各たばこメーカーで始まっている。
ハーム・リダクションという概念や思想はまだまだ日本には浸透していないため、これからの製品開発や啓蒙活動がスモークフリー社会を作るまでの時間と、その定着度合いを決めるひとつの指標になるのは間違いないだろう。