キャッシュレス決済やクラウドファンディングなどの普及にともない、銀行と顧客の関係性にデジタルチャンネルが及ぼす影響が大きくなっている。

デロイトトーマツグループは2018年10月26日、デロイトグローバルが実施したデジタルバンキングに関する顧客調査について、日本の調査結果を公表した(※)。

この調査は同年5月に17カ国で17,100名に実施されたもので、うち日本の回答者は1,000名。

世界的には多くの顧客がデジタルバンキングを受け入れている姿が示された一方、日本でのデジタル活用の遅れが明らかにされた。

日本のデジタルバンキング活用の遅れ

顧客の銀行(メインバンク)との関係性をみると、世界的には満足度・支持率ともに60%超とおおむね良好だ。一方で日本では満足度は41%、支持率は31%と、調査対象国の中で最も低い数字になった。

続いて銀行サービスの顧客体験について、支店、ATMなどの物理的な接点と、オンラインやモバイルなどのデジタルチャネルでの接点と、利用頻度によって以下の3つのセグメントにわけて分析している。

  • 従来型利用者

    デジタルチャネルの利用頻度は低く、支店やATMで大半のサービスを利用。
  • オンライン利用者

    デジタルチャネルを利用するが、モバイルアプリよりもオンラインを選好。
  • デジタル開拓者

    デジタルチャネルの利用頻度が高く、モバイルアプリの使用を好む傾向が高い

結果、グローバルでは「オンライン利用者」が43%と最多で、「従来型利用者」と「デジタル開拓者」がほぼ同数。

日本は、調査対象国のなかでも「従来型利用者」が最も多く、「デジタル開拓者」は最も少なくなり、日本の顧客がデジタルバンキングを十分に活用できていない現状が示された。

顧客満足とデジタル活用の相関性

銀行への顧客の満足度・支持率ともに、従来型利用者、オンライン利用者、デジタル開拓者と、デジタルチャネルの活用が進むにつれ向上している。

デロイトトーマツは、顧客との接点を増やすことはブランド認識の改善に向けた最初のステップであり、こうした状況は銀行がデジタルにおけるサービスを改善すれば、顧客との関係性を向上できることを意味していると述べている。

日本の銀行に求められるもの

では日本もチャネルを導入すればデジタル活用が進むかというと、それだけでは足りないようだ。

デジタルチャネルを利用していない日本の顧客に、その理由を聞いたところ、多くは「必要性がない」(オンライン53%、モバイル50%)と答えている。

また、AppleやGoogleなどの優良デジタルサービス企業と銀行を比較したところ、顧客の理解、価値の提供などに関して、デジタルサービス企業が銀行を上まわる結果となった。

同社は、日本の銀行に求められていることは、デジタル化を進めながら、より優良な顧客体験を提供していくことが求められるとの見解を示している。

(※)出典元:デロイト調査:日本の銀行顧客のデジタル活用の遅れが明らかに

img:Deloitte.