日本企業がロシアの野菜調達課題を救う?MIRAIが人工光型植物工場を展開

人工光型植物工場とは、蛍光灯・LEDといった人工光を用いて、完全に閉鎖された空間で野菜を生産するシステムのことをいう。

気候によらず1年中安定して野菜を生産できたり、土がない狭い場所でも野菜を育てられたりすることから、食糧を安定的に供給できる方法として注目を浴びている。

そんななか、日本のMIRAIがロシアへ大規模人工光型植物工場の展開をすすめる旨が発表された。

MIRAI、ロシアで大規模人工光型植物工場のシステム導入など各種契約を締結

2018年10月11日(木)ロシア・モスクワで開催されたロシア農業省主催「黄金の秋2018(ロシア農業展示会)」の日本の農林水産省主催の「スマート農業に関する日露農業セミナー」枠において、MIRAIはモスクワでの大規模人工光型植物工場のシステム導入、および運営コンサルティングを含むロシア・ATB社との各種契約の締結を発表。あわせてその場で、調印式をとり行った。

ATM社は2016年春より、極東ハバロフスクで人工光型植物工場を運営している。ここではすでに、MIRAIの宮城・多賀城工場のシステムや工場運営をベースとしたリーフレタス(日産1万株相当)のシステムが導入されている。

今回は、その2棟目を導入するプロジェクトを改めてMIRAIへ依頼したかたちだ。

事業を行うにあたって、システムに限らず工場運営や販売に関するノウハウの共有、ロシア国内での植物工場事業の展開を鑑みて、MIRAIとタッグを組むことに合意。今回の契約締結に至った。

葉物野菜の品質や国産調達に課題のあるロシアを人工光型植物工場が救う

ロシアでは極東のみならず全ての地域で葉物野菜の品質、国産調達に課題を抱えている。課題を解決するため、太陽光型の施設園芸をはじめ、人口光型の植物工場事業にも関心が高まっているのだ。

一方のMIRAIには、日本の千葉(柏の葉工場)および宮城(多賀城工場)で、植物工場による葉物野菜の生産者としての実績があり、レタス・ハーブ類の工場運営から販売までの一貫的な取り組みによってノウハウも蓄積している。

さらに海外においても、ロシアだけではなく中国でもパートナー企業「未来智農(北京)科技有限公司」を介し、すでに2件のMIRAI式システム・ノウハウの導入を実現済みだだ。ほかの国・地域でも導入に向けた覚書を交わすなど、積極的に事業展開をすすめている。

MIRAIは今後も「『植物工場』産の野菜を栽培し、広げたい、という声やそれら生産物を『買いたい』『使いたい』『食べたい』という声に対し、日本国内外問わず、あらゆる形で関わっていく」と述べている。

テクノロジーで食糧問題を解決しようとする動きはシンガポールにも

テクノロジーを用いて自国の食糧問題を解決しようとする動きはシンガポールにもある。

日本でも旅行先として人気が高く、巷にはさまざまなグルメが溢れるシンガポールでは、食べ物の90%以上を輸入に頼っている状態だ。

そんななかで、近年の気候変動や中間層の拡大、地政学的なリスク増大などにより世界の食料需給がひっ迫しており、シンガポール国内の専門家たちはシンガポールのフードセキュリティが脅かされていると指摘し、政府に対策を求めている状態だ。

そして対策の一環として取り組まれているのがシンガポール農業のハイテク化であり、そこで誕生したのが世界初と言われる「低炭素・水力式垂直システム」により農作物を生産する「スカイ・グリーンズ」だ。

高さ9メートルのフレームに38段の鉢が並べられ、そこでさまざまな農作物が生産されている。鉢には十分な日光がとどくよう、水力で上下に動く仕組みになっている。

スカイ・グリーンズでは人工光の植物工場でよく使われているLEDライトを使用しないため、大幅なエネルギー消費の節約が可能。さらにスペースを垂直方向に活用することによって、平面農地と比較し最大で10倍もの生産量を確保できるということだ。スカイ・グリーンズではレタス、空芯菜、カイラン、ほうれん草などが生産されている。

その他シンガポールでは、LEDライトを活用しシンガポールでは本来育たない作物を生産するスタートアップも増えているとのことだ。国土の狭いシンガポールにおいても、テクノロジーの活用により、食料自給率を現在の10%から20%まで高められるといわれている。シンガポールでも、テクノロジーが食糧問題解決の手段として活躍しているのだ。

img:MIRAI

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