昨今、国内における高齢化・核家族化が進行するなか、家族と離れて暮らす独居高齢者も増加傾向にある。
また、加齢に伴う身体機能・認知機能の低下による独居高齢者の閉じこもりや社会的隔絶が社会問題となる一方、高齢者における日常生活動作の維持向上のためには家族や医療介護従事者の適切な介入・支援が不可欠である。
これを受け、NECは、主に独居高齢者における虚弱状態(フレイル)の重症化防止に向けて、タブレット端末を活用したバーチャルアシスタントによるコミュニケーションシステムの研究開発を開始した。
日々の体調を把握する対話型AIを開発
この研究開発では、NECのコミュニケーションロボット「PaPeRo(パペロ)」の利用実績・ノウハウを盛り込んだ「Tablet PaPeRo」を活用し、季節・時間帯に応じた声かけや服薬・通院などのスケジュール通知、フレイル防止などを行うコミュニケーション機能や日々の体調を把握する対話型AIを開発する。
虎の門病院 大内尉義院長と東京大学 小川純人准教授による監修のもと、高齢者とのコミュニケーションで取得した表情・音声データに基づき、フレイルの進行状況を分析する。
また、ふくろうクリニック等々力の医師・臨床心理士と共同で、重症化対策に効果的な声掛け条件・内容の評価・検証を行う。
さらに、顔認識・音声認識技術やテキスト変換技術の活用により、表情・音声に応じてタブレット端末のディスプレイ上にテキストや画像を表示し、高齢者の家族や医療介護従事者と簡単に情報共有できるSNS機能を開発する。
家族や医療介護従事者からの情報通知機能、高齢者の服薬状況や血圧・体重などのバイタルデータの情報共有機能、医療介護従事者が高齢者宅に訪問した際の情報記録機能なども開発する。
NECでは、この研究の成果や知見を踏まえ、今後も表情・音声などから高齢者の心身の状況を推定するAI技術の開発も検討していく方針だ。