「働き方改革」の浸透や企業や働き手の意識の変化で、副業やリモートワーク、フレックスタイム制などのワークスタイルが増加傾向にある。
これらは、もともと企業や働き手にメリットをもたらすものとして導入されているが、最終的な目的はそれによって社会全体に利益をもたらすことである。では、その現状はどうなっているのだろうか?
世界的なワークスペースプロバイダーのリージャス・グループ(IWG)が運営するリージャスは、フレキシブルな働き方がもたらす効果に関する社会経済調査を16の国と地域において実施。調査によると、フレキシブルな働き方が予測どおり増加すれば2030年までに世界で10兆400億ドルの経済効果がもたらされる可能性があることが明らかになった。
2030年までに10兆400億ドルの経済効果が
本調査ではフレキシブルな働き方の社会経済的影響を分析しており、それぞれの国のGVAにフレキシブルな働き方がもたらす影響を既存のデータから導き出された数値をもとに予測した。これらの予測は、時間の節約、スタッフの効率性の向上、スタッフの採用・教育・維持などの要素に基づいて算出。
2017年と2030年の影響を2つのシナリオ(ベースラインシナリオとシナリオの加速)に基づいて推計している。
調査により、まず、フレキシブルな働き方は、この16の国と地域で2030年までに10兆400億ドルの経済効果をもたらすと見込まれることがわかった。これは、日本とドイツの現在のGDPを合わせた以上の金額に相当するという。
米国では、2030年までに、フレキシブルな働き方から年間4.5兆ドルの経済効果を見込んでいる。これは、米国の現在のGDPの20%以上であり、ドイツの現在のGDP総額を超える金額だ。
中国では、フレキシブルな働き方をする人々の割合は比較的小さいものの、関連した経済効果は最大であると予測され、2017年と比較した場合、2030年は193%の増加見込みで、総額1.4兆ドルの増加に相当する。
また対象地域では、2030年までに通勤時間が35億時間以上も節約できると予測されるという。
そして米国でさらに多くの人々がフレキシブルな働き方を実践すれば、約9億6,000万時間の節約が可能だという。これは、米国の労働者全員の休日がほぼ1日増えることに相当する。
中国では時間の節約によって見込まれる利益が最大であり、フレキシブルな働き方をすることで通勤時間が14億時間も節約できると予測されているという。
時間の節約、これは企業、働き手両者にとってもっとも大きなメリットだろう。時間の節約によってさらに両者の生産性は上がっていくのだ。
企業と個人の生産性向上や経費削減の効果も
経済的なメリットとしては、多くの先進国では2030年までに雇用者の8~13%がフレキシブルワークプレイスで業務を行うことが予測されるという。
フレキシブルな働き方の増加により、企業は費用節約とコスト削減が実現し、生産性が向上する見込みだ。最終的には、基幹的な事業全域からサプライチェーンに至るまで経済全体に波及効果がもたらされるとしている。
具体的なメリットとしては、企業と個人の生産性向上、フレキシブルワークスペースの使用によるオフィススペースの経費削減、大幅な通勤時間の節約が挙げられるという。これらすべての要因が、フレキシブルな働き方の付加価値として経済に寄与するとしている。
また、これについて、中国とインドを例に挙げており、両国は、フレキシブルワークスペースによって粗付加価値(GVA)が最大の増加率を示し、GVAが中国で193%、インドで141%増加すると見込まれている。
これは、中国においては年間1兆4,000億ドル、インドおいては年間3,758億ドルに相当する。米国では、フレキシブルな働き方による付加価値の増加率は109%と中国やインドよりも低いものの、粗付加価値はもっとも高く4.5兆ドルになる見通しだ。
リモートワークで節約できる通勤時間はのべ35億3,000万時間に
次に、フレキシブルな働き方が経済だけではなく個人にもメリットがあることが明らかになった。「仕事が好き」といえるリモートワーカーの割合は、同じ業界でオフィス勤務をしている人たちと比べて、約2倍にのぼるという。
この最大の要因は、リモートワークやフレキシブルワークによって個人が時間を節約できることにある。
現在よりも高い割合でフレキシブルな働き方が採用されることを想定した加速的な成長モデルを適用して算出した場合、2030年までにリモートワークで節約できる通勤時間はのべ35億3,000万時間と算出された。これは、毎年201万人が仕事に費やす時間に相当する。
この加速成長シナリオによって通勤時間をもっとも節約できるのは、中国、米国、インド、日本であると予測されている。通勤時間を削減することによって、中国の労働者は時間を2時間多くに使えるようになり、米国の労働者は休暇を約1日増やすことができる。
方向性は間違っていないか
フレキシブルな働き方がもたらす効果は、非常に大きいようだ。ただし、これは予測であって、現実には何が起こるかわからない。
時代の流れとともに、生産性の向上を最大限目指した働き方が今後は加速的に増加していきそうだ。
img:PR TIMES