「中国・人工知能企業トップ50」〜ユニコーン企業が14社、創業者の55.6%が博士号取得者

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政府主導で人工知能産業の発展が進む中国。2030年までには人工知能分野で世界のイノベーションセンターの座を狙い、国内人工知能産業における生産高1兆元(約16兆円)を目指すといわれている。

中国はこの目標を達成するために、資金援助、法規制の整備、人材開発、研究施設の建設など多大な投資を行っている。このような後押しを受け中国国内では多数の人工知能企業が誕生している。

その数は一説によると4,000社を超えるともいわれている(北京市経済和信息化委員会・調査)。

一方、中国の人工知能企業についてはさまざまな組織や研究機関が調査を実施しているが、各調査における人工知能企業の定義や調査時期の違いによって、その数にはばらつきがみられる。中国国内の人工知能企業数を600社ほどと推計する調査もある。ダイナミックに変化しているため、その現状把握が非常に困難な市場といえるだろう。

そんななか2018年9月、中国・天津市で開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で中国の人工知能企業の現状をまとめた最新レポート「中国・人工知能企業トップ50」が発表され、多くの参加者の注目を集めた。

中国・人工知能企業トップ50とそのトレンド

世界経済フォーラムで発表されたレポート「中国・人工知能企業トップ50」。中国の経済メディア、チャイナ・マネー・ネットワーク(CMN)がまとめたものだ。

同レポートの特徴は「人工知能企業」を狭く定義している点だろう。その定義とは「人工知能を中核事業としている、またはビジネスミッションを達成する上で人工知能が中心的役割を担っている企業」となる。人工知能を謳っているが、実際そうではない企業が多く、それらを除外し、真の人工知能企業だけを評価対象とするためだ。

また、アリババやテンセント、iFlytekなど上場された大手企業は除外し、スタートアップに焦点を当てている。

CMNの評価によって、中国国内には1,122社の人工知能企業があることが判明。CMNは、これらの企業を5分野12項目で評価しランキング化を行った。評価項目には「技術の可能性」「プロダクトの成熟度」「資金調達」、また「パテントの数」「研究レポート」「売上高」などが含まれる。

トップ10には、世界最大のドローンメーカーとして知られるDJI、人型ロボットを開発するUbtech、画像認識のSenseTime、人工知能向けチップを開発するCambricon、Horizon Robotics、顔認識システムを開発するCloudwalk、Megvii、防犯画像認識システムを開発するYitu、音声認識のUnisound、Mobvoiがランクインした。同レポートでは、トップ10内での詳細なランク付けは行っていない。

DJIは日本でも良く知られた企業だが、他の企業について知る人は少ないかもしれない。

Ubtechはエンタメロボット「Alpha」、ロボティクス学習キット「Jimu」、法人向けクラウドベースサービスロボット「Cruzr」を展開。Cruzrは、政府関連のオフィスや学校に設置され、自動で受け答えするサービスロボットとして活躍している。

また2018年末までには、中国の家具チェーン店Easyhomeの各都市の小売店に2,000台のCruzrが配置される見込みだ。同社は、ロボット警備自動車のリリースと大型ロボットの開発を計画しているという。

法人向けクラウドベースサービスロボット「Cruzr」(Ubtechウェブサイトより)

一方、SenseTimeは画像認識技術を開発する香港発の企業。香港中文大学・情報工学教授のタン・シャオウ氏が2014年に創業した。

タン教授はもともと香港警察の違反車取り締まりの支援で、ナンバープレートを解析する研究を行っていた。その技術を活用していまでは中国政府が1億7,000万台ともいわれる監視カメラで実施している取り締まりプロジェクトの画像解析を担当するなどしている。自動運転車やAR分野にも進出する可能性があるという。

また同レポートではトップ50全体にみられる傾向を抽出し、人工知能企業を取り巻くトレンドを明らかにしている。

それによると、50社のうち27社がBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)または政府関連支援を受けていることが判明。このほかセコイヤキャピタルも中国の人工知能企業に活発に投資を行っているという。人工知能企業を育てる強力な投資基盤があることが浮き彫りになっている。

50社のうち14社が評価額10億ドル(約1,100億円)を超えるユニコーン企業であることからも、投資基盤の強さをうかがうことができる。同レポートによると、人工知能ユニコーン14社を合わせた合計評価額は405億ドル(約4兆5,000億円)。

人工知能ユニコーンの筆頭は、評価額150億ドルのDJI。このほかUbtech(50億ドル)、SenseTime(45億ドル)、Cambricon(25億ドル)、Cloudwalk(20億ドル)、Yitu(20億ドル)などが含まれている。1,122社すべて合計した評価額は6,630億ドル(約73兆5,000億円)。

Cambriconウェブサイト

トップ50の人工知能企業の拠点は北京が最多。2位以下は、深セン、上海、杭州、重慶、香港、南京などとなった。DJI、Ubtech、Dorabotなどトップ50内で深センを拠点にする人工知能企業は多く、上海を上回り人工知能分野における深セン市の影響力の大きさを物語っている。

創業者の55.6%が博士号取得者という点も人工知能分野ならではの数字といえるかもしれない。北京大学や清華大学の研究からスピンオフした人工知能企業は少なくない。修士号取得者は17.7%、学士号取得者は26.7%だった。

これらの人工知能企業に、中国・人工知能市場の課題について尋ねたところ、中国では基礎研究が敬遠される傾向が強く、近視眼的な利益追求型になっており、このままでは将来のブレークスルーが見込めないだろうという回答が多かった。

一方、資金や制度における政府の支援はどの国よりも手厚く、しばらくは成長フェーズが続くとの見方が優勢という。

同レポートが明らかにしたように中国には1,000社以上の人工知能企業が存在する。世界中の人工知能企業は3,400〜5,000社といわれており、中国はその4分1を占めることになる。中国は人工知能分野で世界を圧巻することができるのか、今後の展開にも注視が必要だ。

文:細谷元(Livit

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