チャットツール全盛の時代ともいえる今、ビジネスチャットという分野には多くの競合がひしめき合っている。
なかでもチャットワークやSlack、LINE WORKSなどが有名なところだが、それ以外にも多くのビジネスチャットツールが生まれてきている。
以前AMPでも紹介したチャットツール「Symphony」が日本に上陸したことはご存知だろうか。
ブルームバーグキラーとも称される同サービスは、米国を中心に事業展開するSymphony Communications Services(本社:米国カリフォルニア州パロアルト、創業者兼CEOデービッド・ギューレ、以下、Symphony社)のコミニュケーション・プラットフォームであり、金融業界の特性とマッチしているため国内での活用が期待されている。
今回、日本語版のサービス提供開始にあたりメディアラウンドテーブルが行われ、シンフォニー 北アジア地域ジェネラルマネージャー クィニー・チャン氏、みずほ証券株式会 グローバル パンアジアン エクイティ COO 今泉ライアン氏、シンフォニー バイス・プレジデント セールス・エンジニアリング 上原 玄之氏が登壇した。
金融業界のコミュニケーション・プラットフォーム「Symphony」
2018年9月20日より、統合型メッセージング・ファイル共有・オーディオ/ビデオ会議・画面共有およびワークフローを自動化する機能を搭載した、堅牢な情報セキュリティと徹底したコンプライアンス機能を誇るコミニュケーション・プラットフォームの日本語版をリリース発表をした。
なお初の非英語UIを日本語とし、世界の顧客企業340社、約35万人のユーザーに向け段階的に提供されるようだ。
世界的に利用されているシンフォニーはチャットサービス「Perzo」を買収し、2015年9月にサービスを開始。そしてゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの世界主要金融機関やベンチャー・キャピタルらから総額3億米ドルの資金調達を過去に行っている。
今回、新たに増資が決定した同社は提供商品の拡大、保険や法律、医療サービスなどの新たな産業への事業拡大を加速させるとしている。
シンフォニー 北アジア地域ジェネラルマネージャー クィニー・チャン氏
シンフォニーが金融業界で活用が期待されている理由の一つとして、外部からの侵入を許さない堅牢な情報セキュリティが挙げられる。
システムに“End-to-End Encryption”(エンドツーエンドの暗号化)を採用しているため、管理者のみならず、政府ですらメッセージデータにアクセスすることができないというものだ。
エンドツーエンドの概要は以下のとおり。
- エンドツーエンドの暗号化
暗号化鍵は自社で保有(オンプレミス) - 情報が発生した時点から暗号化
コンテンツを「送信」および「アップロード」した時点で暗号化を実施 - 情報の送信先で暗号化
受信予定者に情報が届くまで複合化しない - 物理的で独占的な暗号化鍵を入手
スマホやエンタープライズHSM(専用暗号化プロセッサ)など - 漏洩しても情報は使用不可能
情報が漏洩したとしても、暗号化されているため読み取ることができない
さらに金融サービスにおける法令に対応した外部への円滑的なコミュニケーションを実現。
金融業界において、従来のツールは使用を組織内のみに限られていたが、シンフォニーであれば高い安全性が担保されているため、外部とのチャットツールとしても活用することが可能になる。また堅固なセキュリティによるチャットサービスもさることながら、チャットボットによる顧客対応などの情報支援も行うことができる優れものだ。
さらにはチャットボットを用いることで、自社で所有する複数のソフトウェアシステムから各顧客に適したインサイトを瞬時に引き出すことができ、また自社の業務にマッチしたチャットボットを開発できることから、飛躍的な生産性の向上が期待できる。
これらを搭載したシンフォニーは、セキュリティやコンプライアンスが必要とされ、また制限された環境下での業務効率の向上が推進される日本の金融業界において次世代インフォメーションハイウェイとなりうるだろう。
シンフォニーが実現する金融業界でのコミュニケーション
今回、メディアラウンドテーブルを行なった際に、シンフォニーを導入しているみずほ証券株式会社 グローバル パンアジアンエクイティ COO の今泉ライアン氏が同サービスを活用した感想を述べた。
みずほ証券株式会 グローバル パンアジアン エクイティ COO 今泉ライアン氏
「日本を含めた世界中の証券会社では、過去に金融機関が法令違反を起こしたゆえに、社内やお客様との情報交換などにおいてプロテクションをしなければなりません。そのためコミュニケーションツールを業務で使用するといった概念がありませんでした。しかしシンフォニーは非常にセキュアなプラットフォームであり、情報漏洩のリスクが非常に少なく、お客様ともしくは社内での情報交換を可能にしています。
われわれの業務は非常に手作業が多いため、効率化によるコスト削減や、お客様に当てる時間を確保することが課題となっています。そのため“自由なコミュニケーション”を可能にするシンフォニーを導入することで、これらの問題が解消すると考えています。」
また今後、シンフォニーを日本企業が活用するにあたっての課題についても述べている。
「日本企業の課題として人員が確保されているため、『人がいればできる』という考えが根強く残っています。業務をどのように自動化したらいいか、どうやって改善すればいいか、というアイデアはなかなか乏しいのが現状です。しかしこのようなツールを用いて業務に取り組むことでクリエイティブなアイデアが生まれ、イノベーションが起こると考えています。
証券会社で例えると、スピーディーでより正確に複数のシステムを使いこなさないといけません。シンフォニーはこれらを可能にし、お客様に有益な情報を提供する事ができる。これによりお客様からビジネスをもらえるライフサイクルがあります。自分たちの利益に結びつけるような情報提供としてシンフォニーを使えるというのは、無限大の可能性があると思っています。」
顧客情報の保護はどの業界でも重要事項であるが、金融業界では情報交換をするにあたり、コンプライアンスを徹底するがゆえに、業務スピードが落ちているのが現状だ。
シンフォニーを活用することで、業務が効率化されることはもちろん、それによって顧客との有益な関係値がもたらされるということだろうか。
シンフォニーは金融における業務を効率化してくれるイメージが想像に難くないが、実際の機能はどのようなものか、Symphony Japanの上原氏はこう述べる。
シンフォニー バイス・プレジデント セールス・エンジニアリング 上原 玄之氏
「シンフォニーはチャット機能に登録されているユーザーやメッセージを簡単に検索することができ、コンプライアンスに反さないよう管理者が社内のメッセージの監視、あらゆる機能を管理できるよう工夫が施されています。
チャットルームでは、顧客や銀行、あるいはプロジェクトやリサーチなどのグループ別によるリアルタイムでの通話、映像や画面をシェアする機能を備えています。
またチャットボットに話しかけることにより、チャットのなかで事前に連携したポートフォリオアプリを別画面で開くことなくみることができます。またオリジナルチャットボットを開発できるため、自社にあった業務の効率化が可能になります。」
こうして聞くと、シンフォニーの機能はSlackやSkypeと類似していると考える人も多いのではないだろうか。しかし金融業界においては、堅牢なセキュリティが施されたシンフォニーが適役だということは揺るがない部分だろう。
またシンフォニーはチャットツールだけではなくチャットボットが搭載されていることも特徴の一つだ。チャットボットを自社で開発できるとなれば、各業務に適したボットが開発されるため、業務効率・生産性の向上が見込めることになる。さらには開発されたボットを売買や共有できるよう、シンフォニーマーケットというプラットフォームを設けているとのことだ。チャットボットによるこのような顧客対応の情報支援などは、プラットフォーム化され、取引できるようになることで、今までにないスピードのはやさで利便性の向上を実現できそうだ。
シンフォニーがもたらす金融業界の働き方改革
国内では大手証券、メガバンク、大手アセットマネージャも導入しており、今後も多くの金融機関へサービス展開する意向を示した。またセキュリティやコンプライアンスを重視する非金融機関の顧客も獲得をしていく予定だという。
昨今、第三者によるサイバー攻撃や社外への持ち出しなどのヒューマンエラーによって、情報漏洩をしてしまうケースが頻出している。情報化社会の現代において、コンピュータのセキュリティの確保や個人によるセキュリティリテラシーの徹底は必須であるといえるだろう。
厳格な法的規制がある金融業界においてシンフォニーを活用することは、情報漏洩のリスクを格段に減らし、働き方改革の業務効率化という目標をスマートに実現してくれるものになるだろう。
今後の動きとして、シンフォニーではまず選択と集中を行なった業界へのサービス提供を目指していくという。金融業界だけではなく、他業界でも情報保護へのセキュリティの向上、それに伴う意識のアップデートが今後なされることで、情報化社会の恩恵を安心して享受できるのではないだろうか。