昨今、学生の「就活」に大きな変化が訪れている。インターンシップの在り方や企業および学生、両サイドにおける勧誘やアプローチも変わろうとしている。

これを受け、日本経済団体連合が10月9日、就職活動の時期などを定めた「就活ルール」を廃止する方針を発表するなど、就職活動のスケジュールやルールのあり方について社会的な議論が高まっている。

パソナグループで、社内外の専門家とともにさまざまな社会課題の解決に向けたフォーラム開催や提言を行う「パソナ総合研究所」は、2020年3月に卒業予定の大学生・大学院生を対象に『就職活動のあり方に関する学生意識調査』を実施した。

その結果、約5割の学生は、「就活ルール」の廃止に賛成していることがわかった。

約5割の学生が「就活ルール」の廃止に賛成

この調査方法は、2020年3月卒業予定の日本全国の大学生・院生622名を対象に、実施された。

まず、就職活動の開始時期を定めた、いわゆる「就活ルール」の廃止について意見を聞いたところ、49.4%の学生が「賛成(廃止すべき)」と回答した。

一方で「反対(廃止すべきでない)」との回答も39.7%あり、賛否が大きくわかれる結果となった。

次に、就活ルールを「廃止すべき」と答えた学生にその理由を聞いたところ、「自分のペースで企業選びができるから」という回答が224名となりもっとも多かった。

次いで「早期に内定を得られるから」の116名となった。「その他」の回答は38名で、うち14名は自由記述で「ルールがすでに形骸化している」ことに言及した。

以下がそのコメント内容である。

  • 多くの企業がインターンシップなどで学生の早期選考を行なっており、ルール自体が形骸化している
  • 現行ルールは海外留学経験者などが就職活動を行いにくい
  • 新卒一括採用という仕組みが、雇用の流動性が高まった現代にそぐわない

これらのコメントをみると、現代の学生は「就活」の状況を冷静に判断していることがわかる。

特に、ルール自体が形骸化してしまっている今の就活は、組織の大きさやブランドよりも生きがいを重視する現代の若者には、あまり意味のないことに写るのだろう。

また、就活ルールを「廃止すべきでない」と答えた学生にその理由を聞いたところ、「学生生活全体のスケジュールが立てにくくなるから」という回答が206名となり、次いで「就職活動の期間が長引くから」の62名となった。

「その他」の回答は34名だった。以下がそのコメント内容である。

  1. 早期に就職活動を始めた学生が有利になり、勉強や部活動に真面目に打ち込む学生が不利になる
  2. 1年生など、まだ視野も狭く経験も浅い状態で将来を決めなければいけない状況になる
  3. 本来大学は学ぶための場であり、就職活動のためだけの場ではない

一方で、反対意見の学生の意見も筋は通っている部分もあるだろう。

特に、「本来大学は学ぶための場であり、就職活動のためだけの場ではない」とのコメントは、これまで、多くの学生や企業が大学を事実上「就職活動の場」ととらえていたことに対するアンチテーゼなのかもしれない。

4年生になる前に開始したい学生は全体の75.1%も

また、就職活動のスケジュールを学生が自由に決められるとしたら、いつから開始するのが理想かを聞いたところ、もっとも多かった回答は「3年生の8月(夏休み)」の22.3%、ついで「3年生の12月(冬休み)」の17.0%だった。

このように、4年生になる前に開始したい学生は、全体の75.1%に上っている。自分の進路が早く決まり、スッキリしたいのは誰しも同じところ。大学最後の年は、自由に勉強や、やりたいことで過ごしたいということか。

そして、就職活動のスケジュールを学生が自由に決められるとしたら、就職活動を開始するまでの期間に何をしたいかという問いの結果である。

もっとも多かった回答は「学業」で457名、次いで「インターンシップ」386名、「スポーツ・趣味」371名、「アルバイト」367名となった。

学生の本文は学業である。就職活動でその学業がおろそかになってしまう前に、学業に専念したいということだろう。

学生が本業を忘れずに学生生活を全うできる社会に

このところ、社会においては働くということ以外にも人間としての本来の姿に立ち帰ろうという風潮がみられるようになったと思う。今回の調査結果にもその影響が如実に表れている。

前述したが、学生の本業は学業である。学生が「就活」にとらわれすぎず、この本業を忘れずに、学生生活を全うできる社会になることを願う。

img:PR TIMES