VRの活用はコンシューマ向けのエンターテインメント分野のみならず、医療分野やものづくりでの設計シミュレーションや遠隔コミュニケーションなど、さまざまな分野で広がっている。
しかし現実の世界とは異なるVR体験中の生体情報の把握には制約も多く、心拍などの簡便な単一指標のみの計測に留まるか、特別に仕立てた複雑な機器を用いた特殊な実験環境の構築が必要とされていた。
今回、国立大学法人東北大学と日立ハイテクノロジーズのジョイントベンチャーであNeUと、FOVEは、自社で持つ視線追跡型VRヘッドマウントディスプレイ「FOVE 0」にNeUのNIRS脳活動計測センサー「HOT-1000」をビルトインした、VR視聴時の視線情報および脳活動の同時取得が可能な一体型デバイス「NeU-VR」を共同開発したと発表した。
高精度な視線情報および脳活動の一括計測を実現
NeUは世界初の視線追跡型家庭用VRヘッドマウントディスプレイを開発したFOVEと協業し、脳活動と視線情報の同時計測を可能とした一体型デバイスを開発した。PCとヘッドマウントディスプレイだけのシンプルなシステム構成で、高精度な視線情報および脳活動の一括計測を実現したという。
NeUは脳血流計測を軸としたニューロマーケティングサービスを展開しており、すでに50社以上の受注・検証実績をもつ。ヒトの共感や作業記憶を司る前頭前野の脳血流を計測することにより、広告や商品などへの興味関心や記憶の定着を評価するノウハウを強みとしている。その経験と実績を活かし、今回の「NeU-VR」の開発となった。
NeU-VRは、視線追跡型VR再生装置と、脳の前頭前野をカバーするNIRS脳活動計測センサーが一体型となった専用ヘッドマウントディスプレイ、およびPC上の専用アプリケーションよりサービスを提供。VR体験中の脳活動、心拍および各種視線情報(視点座標・瞬目・瞳孔径)の同時計測が可能だ。
また、視線や瞳孔径などの生体指標からも、被験者の好みや集中度などが類推できることも知られているという。これら複数の生体指標を組み合わせることで、VR視聴中の興味関心や没頭度を精度高く可視化、客観化できると同社では考えているという。
サービスの対象としては、第一に企業のデザイン設計の範囲での活用を見込んでいる。たとえば、施設や住宅のデザイン、各種ショールーム、クルマのデザインなどを挙げている。
次に、VRコンテンツの評価があるという。VRによるシミュレーション体験は、多様さを増しているこれらVRコンテンツ体験者の脳活動および視線情報を分析し、興味関心や集中・注意を明らかにしていく方針だ。
NeUが提供するニューロマーケティングサービスメニューとして、調査設計・データ取得・解析まで一貫して提供する。サービス開始時期は、11月初旬を予定している。
デザイン設計分野でどう成果を上げるか
VRはエンタメ分野だけではなく、われわれの生活を変える新しい技術と注目されている。
NeUは、サービスの対象としては、第一に企業のデザイン設計の範囲での活用を見込んでいるというが、まずはこの分野でどう成果を上げるか、注目したい。
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