企業が業務効率化や働き方改革を進めるにあたって、情報のデジタル化や自社に眠るデータの活用は必須である。

そのためにデジタル投資を惜しまない企業も多い。それに伴い、企業の責任者たちの役割も変革が求められている。

例えば、これまで企業の金庫番として活躍してきたCFOがその立場を超え、企業のデジタル投資を指揮・けん引する役割を担うようになってきているようだ。

CFOが財務の総責任者という役割をこえ、組織全体を指揮するプロデューサーへ

世界最大級の総合コンサルティング企業「アクセンチュア」では、2017年12月から2018年4月にかけ、数十億ドル規模のグローバル企業に対して調査を実施。

その結果を同社の最新調査レポート『パラダイムシフトするCFO:金庫番から、企業価値創出プロデューサーへ(The CFO Reimagined: From Driving Value to Building the Digital Enterprise)』にまとめた。

調査対象者は、これら企業に勤める財務管理の担当者(世界であわせて900人以上)、およびCFO・CEOなどの上級職(50件近くのインタビューを実施)だ。

このレポートによれば、企業の財務部門の総責任者であるCFOの実に81%が従来の役割をこえ、ビジネス全体に変革をもたらす分野を見極めることを、自身の主な役割としてとらえていることがわかったとのこと。

さらにCFOの77%は自身の権限において、全社的な業務改革を促進できると考えていることが判明。

CFOの仕事の範囲は財務の枠を超えて、組織全体に影響がある分野へと広がっているのだ。

デジタル投資で新たな企業価値創出を模索するCFO

AIや予測分析など、近年ではデジタル投資の重要性が増しているのはいうまでもない。

CFOは今や、これら企業のデジタル化を推進する立場としての役割も担っているようだ。レポートでは回答者の77%が、デジタル技術の活用によって業務改善を進める取り組みを統括していることがわかったと報告している。

さらに同じ77%が、先進技術による創造的破壊を進め、自社・他社をも巻き込むエコシステムに恩恵をもたらす方法を模索しているとのこと。

また、自動化・担当部門における業務処理速度向上・改善を推進するとともに、他部門のデジタル化を先導。ビジネスモデルの改善・新しい収益源の創出を目指し、新しいテクノロジーの活用も積極的に模索しているという。

CFOがもともとの立場を超えて活躍する背景

会計や管理、法令順守といったCFOがもともと監督していた部門の定常業務は、自動化が進んでいる。現時点で財務関連業務の34%が自動化済であり、2021年には自動化の割合が全体の45%にまで達すると見込まれている。

このような背景から、財務部門は定常業務から解放され、よりやりがいのもてる新しい仕事に力を注ぎこめるようになっている。

そしてCFOはデータ分析をもとにみえてきた課題に対し、経営幹部と連携し取り組む余力が生まれたわけだ。

CFOの役割が、企業の金庫番から戦略的な計画の策定、さらにはアドバイス、分析などの業務へシフトしている。デジタルによる業務の革新によって、CFOがその能力を新しい領域で活かせる時代になったといえるだろう。

アクセンチュア・ストラテジーの財務・経営管理のシニア・マネジング・ディレクターであるクリスティアン・カンパーニャ(Dr. Christian Campagna)は、CFOのデータ活用の範囲が他部門へ広がり、企業全体のデジタル化などを先導することが求められていると語っている。

CFOには、より幅広い能力が求められている

CFOの役割が進化するのに伴い、求められるスキルも変わっているという。現在の財務部門においては、データの可視化や柔軟な思考力などの幅広い能力が求められているということだ。

CFOの76%は財務スキルについて、従来の財務中心のものから、デジタルや統計、オペレーション、コラボレーションに至るまで高度なスキルへ変わっていくだろうと考えている。

さらに78%のCFOは、従来の財務職務が陳腐化し、今後急激に変革が進められるだろうと回答している。

レポートでは、CFOにこれから課せられる最も大きな役割は、データを集め、その洞察をもとにした人材採用や教育にあると述べている。

CFOの81%は、今の財務プロフェッショナルに必要とされるのは、データからストーリーを読み解くスキルであると回答している。

柔軟な考え方と協調的な態度を持ち、他部門リーダーと円滑に連携をはかり、戦略的なアドバイザーとしての役割を果たすことが重要となってきているとのことだ。

世界的に進むIT化・デジタル化は、企業の在り方を大きく変えている。

デジタル投資による業務革新により企業の組織図も変わる

今回のレポートでは、デジタル化が進み、自身の部門の業務自動化が進んだことから、CFOが金庫番の役割を超え、デジタル投資をけん引する役割を担うようになったと報告している。

デジタル投資による業務の革新は、今後もさらに進んでいくことだろう。CFOと同様に、その他の企業責任者の役割もかわることが求められることが予想される。

業務のボーダーレス化の時代を生き抜いていくために、日頃から柔軟性や対応力を磨いておくことが重要だろう。

img:PR TIMES