「働き方改革」の進行などにより、有給休暇の取得に注目が集まっている。ところが、わが国の有給の取得率は極めて低い。
厚生労働省が2017年12月に発表した「平成29年就労条件総合調査の概況」によると、平成28年(また平成27会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く)は労働者1人平均18.2日(前年18.1日)、そのうち労働者が取得した日数は9.0日(同8.8日)で、取得率は49.4%(同48.7%)となっている。これは、世界でも低いレベルなのだ。
これに対し、さまざまな企業が従業員の有給休暇取得のための施策を打ち出している。
ヘルスケアサービス、医療系人材サービスを行うグッピーズは、有給休暇取得率を向上させるための新たな取り組みを行った結果、有給休暇取得率を54.34%から83.73%に向上させることに成功したと発表した。
今回は同社で行った、会社にも従業員にもメリットがある、有給休暇取得率を向上させる施策を紹介する。
4連休以上の連休を取得しても構わないルールを策定
冒頭でも述べた日本の状況に対し、政府は「第4次男女共同参画基本計画」で2020年までに有給休暇取得率を70%にするという目標を掲げている。
また、働き方改革関連法において、「年10日以上有給休暇がある従業員について、5日以上は有給休暇を取得させること」が義務付けられた。
改正された労働基準法に基づく新しい有給休暇の制度は2019年1月1日から適用される。違反した場合は、30万円以下の罰金が課されるという。
グッピーズでも以前から有給休暇の取得率は50%程度で、取得率を上げることが課題だったという。
そして、今回、有給休暇取得率を80%以上にするための施策を従業員と一緒に考え、新たなルールを策定し実施した結果、有給休暇取得率を大幅に上げることに成功した。
その有給休暇取得の新たなルールとは
- 勤続3年目以上の従業員は、3カ月に1回計画的に4連休を取得すること
- 勤続2年目以上の従業員は、半年に1回計画的に4連休を取得すること
- 勤続1年未満の従業員は、年に1回計画的に4連休を取得すること
- 有給休暇取得の時季はチーム内で調整すること
- 4連休以上の連続休暇を取得しても構わないこと
だという。
またこのルールを作った経緯としては、有給休暇取得率を上げるため、当初は3カ月1回3連休(土日を含む)を取得できるルールを考えたが、従業員から「3連休は祝日があるときには取れるのであまりうれしくない、それより4連休にしてほしい」という意見があったため、金曜日にある全社会議を木曜日に変更し、金・土・日・月の4連休を取れるルールとしたもの。
そして、同社では会社のメリットとして以下をあげている。
- 有給休暇消化率が向上し、採用活動にもイメージアップ
- 従業員が旅行に行く機会が増え、その経験が仕事にフィードバックされる
- 年度末に残った有給休暇を駆け込みで消化することがなくなった
また、従業員のメリットとしては
- ルールがあることで、会社や他の従業員に遠慮なく連休が取れる
- 4連休を取得できることで、国内旅行だけでなく海外旅行にも行ける
- 義務的な消化ではなく、旅行や自身の予定に合わせて計画的に有給休暇を取れる
2014年11月からこのルールを開始したが、現在100%このルールが運用されているという。
有給を消化すると5万円もらえる制度も
ここで、日本企業の有給消化促進の取り組み例として、ユニークなものご紹介したい。
まず、医師人材総合サービス、産業医の選任を中心とした産業保健サービスを提供するエムステージの「有給休暇消化率50%以上」という取り組みだ。
この取り組みでは、有給休暇消化率50%以上、月平均45時間未満の残業時間、非喫煙、無遅刻・無欠勤、BMI標準値(18.5以上25.0未満)を年間で達成した場合、「健康増進達成手当」として年額5万円が支給されるのだ。
「健康増進達成手当」の制度変更は、有給休暇取得を推進することはもちろん、手当の指標にも組み込むことで、健康的な働き方への社員の自主性を高めることが狙いだという。
世の中の取り組んできたことが実った成果
グッピーズの今回の成功例は、政府や企業が取り組んできたことが実った成果として、喜ぶべきことだろう。日本には、古くから「身を粉にして働くこと」を美徳とする風土がある。
しかし、この風土も徐々に過去のものとなっていっているのだ。今回紹介にあげた二社のような取り組みが国内に波及していくことで、労働者と企業により良い影響を与えてくれること期待したい。
img:PR WIRE