働き方改革の実感が薄い理由は“紙対応”にあり

「一億総活躍社会」の実現を旗印として、働き方改革を2016年に提唱してから2年が過ぎている。働き方改革というキーワードは頻繁にニュースで話題となり、実際何らかの対応を行っている企業がほとんどだろう。

けれどまだ一部は、働き方改革に関する対策を全く行っていない職場もあるようだ。今回、特に「紙対応」の作業量が多い職場の担当者は、働き方改革の実感が薄いとの調査結果が公開された。

「紙対応」の作業量が「増えた」「変わらない」と答えた人の9割超が働き方改革の効果実感度が低い

社会保険・労働保険の各種手続きなどをシンプルにするクラウド型ソフトウェア「SmartHR」の開発・提供元であるSmartHRでは、2018年9月に20代~60代の企業で働く男女590名を対象として、働き方改革に関する実態調査を行った。

まず勤め先の会社での働き方改革の実施状態について尋ねたところ、ほとんどの方が勤務先において何らかの施策を実施していると回答。

勤務先で働き方改革に関する施策を「一つも実施していない」と回答された方は、全体の20.8%(5人に1人)にとどまった。

なお最も多かった施策は「残業時間の削減」(52.5%)で、「テレビ会議システムの導入」(46.4%)、「ノー残業デーの導入」(40.0%)、「ペーパーレス化」(36.6%)が続いた。働き方改革の一環として、残業の抑制に取り組む企業が多いようだ。

次に、働き方改革の施策がさまざま実施されるなかで、紙を使ったいわゆる「紙対応」の作業量が変わったか聞いた。

結果、「増えた」(4.5%)・「変わらない」(57.3%)との回答があわせて全体の6割を超えており、生産性向上・業務効率化の必要性が注目されているにもかかわらず、「紙対応」の作業量があまり減っていないことがわかった。

さらに働き方改革の効果を実感していない方に限って「紙対応」の作業量の状況をみてみると、実に全体の9割超(92.2%)が「増えた」「変わらない」と答えていた。働き方改革の効果実感度が低い方ほど、「紙対応」の作業量が多いようだ。

前に紹介した問いで、「ペーパーレス化」は勤め先が実施している働き方改革の施策として多くあがっているように、業務効率化を実施するときに紙対応からの脱却をはかろうとする企業は多い。

ペーパーレスを実現しIT化をすすめることによって、確かに業務効率化が実現出来る事例は枚挙にいとまがない。ペーパーレス化の進捗は、企業の働き方改革の進捗度合いを測るよいバロメーターとさえいえるのではないだろうか。

人事職・労務職・総務職の半数以上が「紙対応」の量が「増えた」か「変わっていない」

ほとんどの企業で働き方改革がすすめられるなか、紙対応が多いのはどんな業種だろうか。

今回の調査で紙対応が多い業種を調査したところ、人事職・労務職・総務職のようないわゆるバックオフィス職が、営業職やほかの職員と比較してはるかに紙対応の作業量が多いことがわかった。

さらに、調査対象のなかで人事労務職に従事する人に限って、特に負担を感じる紙対応は何か聞いたところ、「年末調整作業」が29.7%でダントツのトップとなった。

「紙対応」に追われるのは年末調整期の10~12月。労働時間も最長に

くわえて人事労務職に従事する方に労働時間を聞いたところ、年末調整作業が行われる10~12月には、年間を通して最も長い1日10時間以上の長時間労働を強いられている方が多いことがわかった。

年末調整の紙対応に追われる人事労務担当者からは、以下のような不満が聞かれた。

業務のIT化・クラウド化がこれだけすすんだ現代においても、書類の配布や改修、チェックといったアナログの象徴ともいえる紙対応が、人事労務担当者の労働時間を引き延ばす原因になっていることは疑いようがない。

企業は、ここにターゲットを定めてペーパーレス化・IT化・クラウド化をすすめ、紙対応からの脱却をはかるべき、というのは誰の目からみても明らかだ。これらの現場の人も、ペーパーレス化の要望を強く上にあげるべきだろう。

働き方改革推進のためには紙対応からの脱却が必須

働き方改革のモデル企業として名前が挙げられることの多い日本マイクロソフトでは、セキュリティ強化やオフィス外でもどこでも働ける環境づくりなどのために、ペーパーレス化を徹底しているそうだ。

今回紹介した人事労務担当者の不満にもあるように、紙対応に執着している限り、業務の効率化やその先につながる働き方改革の実現は難しい。企業は働き方改革を推進し、スタッフを長時間労働から解放するためにも、紙対応からの脱却・ペーパーレス化を進めるべきだろう。

img:PR TIMES

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