いまやCMは、テレビだけではなくクロスメディアで展開される。
誰もがスマートフォンやPCでニュースをみたり動画を楽しんだりすることがあたり前になり、インストリーム広告にも日々触れていることだろう。
そのなか、脳科学やAIに基づく感情分析を活用したCM手法が登場した。
脳活動を計測して、印象に残る動画広告を制作
CMerTVとNeUは、スマホ動画広告効果を最大化する新ソリューションとして、脳活動計測に基づく新しいCM編集・配信手法を開発した。
この手法は、事前検証で脳活動が高かった部分を抽出し、それらを繋ぎ合わせたダイジェスト動画を作成。CM終了後にダイジェスト動画をリピート配信することで、商品の印象を強く残すことを狙っている。
広告効果に脳科学の知見を活用したところがポイントとなるわけだが、検証結果を詳しく見ていくと、まず通常のCMを視聴して、興味・関心、記憶に関する脳活動を計測する。
次に脳活動の上昇値が高かった部分を抽出し、この部分をリピートする動画を作成。作成した動画を属性の同じ別の被験者が視聴して、その際の脳活動を計測する。
結果として、リピート部分の脳活動は興味・関心、記憶ともに上昇傾向が確認できた。特に、記憶に関する脳活動の上昇値はCMのみを視聴した場合と比べて全体で約1.6倍となり、CMをより強く印象付ける結果を得られた。
今回の手法を使ったダイジェスト動画は、主にCMerTVのスマートフォン動画広告ネットワークである「Perfect View™Network」で配信することを想定しているという。
AIによって“感情”を可視化
さらに海外では、AIによる感情分析を動画広告配信に活かした事例が注目されている。
英国発のベンチャーRealEyes(リアルアイズ)社と、グローバルで動画広告配信ソリューションを提供するGlassView(グラスビュー)は、視聴者の感情を元に動画広告を最適化する新サービス「GlassView Emotion(グラスビュー エモーション)」を、2018年7月に開始した。
「GlassView Emotion」は、RealEyesの持つAIを用いた顔認識技術と、GlassViewが持つ動画広告配信テクノロジーを組み合わせたマーケティングサービスだ。
このサービスでは、個人が持っているweb端末のカメラを通して、動画広告を見ている視聴者の微細な顔の表情を「喜び、驚き、混乱、悲しみ、嫌悪、恐れ」に分類し、リアルタイムに反応を確認することができる。
これによって、これまでは目視やアンケートなどでしか判断できなかった視聴者の広告に対する反応を定量的に計測でき、ターゲティングの最適化や広告予算の分配などの指標として活かすすことができるようになる。
先行導入したLGエレクトロニクス社では、本サービスを利用して米国での認知向上を目的に動画キャンペーンを4カ国で配信したところ、キャンペーン利用意向が128%上昇する高いパフォーマンスを得る結果となった。
その他にも、動画広告クリエイティブのA/Bテストや、クリエイターとのコミュニケーションツールとしても活用されている。
テレビでもスマホでも、感情の動く動画体験を
さまざまな分野に効果が期待される脳科学やAIに基づく感情分析が、動画広告配信にも活用され始めた。
テレビから、スマートフォンやPCへとメディア体験が多様化するなかで、視聴者の感情の動きも、デバイスや視聴環境によって変わるだろう。
「どの瞬間に一番いい反応をしているのか」といった“感情”を定量的に確認できるソリューションの誕生は、マーケティングへの活用はもちろん、視聴者としても新たなエンターテイメント体験が登場するのではないかと期待したい。