デジタル大辞泉によると、「不正」とは、正しくないこと。また、その行為や、そのさま。「不正をはたらく」「不正な取引」だという。
組織など人が集まるところには不正が発生する。もちろん、企業も例外ではなく、これまでも数多くの企業の不正が世間を騒がせてきた。
企業規模が大きいほど、社会への影響は大きく、ひいては個人の生活にも影響する。
では、企業の不正の実態とはどうなっているのだろうか。デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーと有限責任監査法人トーマツは、「企業の不正リスク調査白書 Japan Fraud Survey 2018-2020」を発表した。
調査によると、過去3年間に不正事例があったと回答した企業は46.5%に上ったという。
46.5%にも上る「過去3年間で不正事例あり」
この調査は上場企業3,653社を対象に、2018年7月までの不正の実態および不正への取り組みについてアンケート調査を実施し、303社から回答を得た。調査は2006年より定期的に実施しており、今回で6回目の実施となるという。
今回、以下を不正の対象として調査を行った。
- 会計不正
架空売上、費用隠蔽など - 汚職
贈収賄、カルテル、談合、利益相反 - 情報不正
品質・産地・信用情報などのデータ偽装、情報漏洩、インサイダー取引 - 横領
まず、著名企業の不正事案の続出が自社の経営における認識にも影響しているとの回答が「非常に強い」「強い」「やや強い」の合計で40.3%だった。「不正事案が発覚した場合に経営や業績に影響するリスク」への認識が高まった、とする割合が約7割にのぼり、2020年にかけては高まる方向となっている。
次に、不正リスクが経営に与える影響や対策実行の重要性についての理解度と対策実行への協力度は同様の傾向となった。内部監査や法務・コンプライアンス部門が高く、営業・サービス、製造、研究開発の各部門が低かった。
また、「企業理念と行動指針の明文化」と「不正処罰方針の周知」は十分だが、「不正につながる問題の指摘の奨励」「上位役職者に対しても問題を提起できる」などの企業風土は不十分という傾向となった。
そして、「過去3年間で不正事例あり」は46.5%であり、特に大企業、東証1部上場、製造業と流通業では55~60%台と高い割合となった。不正事例は親会社での発生が半数弱を占めるが、国内関係会社も36%台と少なくはなく、親会社、国内・海外関係会社で幅広く発生していることがわかる。
なんと実に46.5%もの企業で不正があり、しかも企業の規模が大きくなるほどその割合も大きくなっている。大企業ほど不正に対する管理や対策が必要となるのが現状のようだ。
また、不正発覚後の対応であるが、不正事実を公表した企業は41.8%で、そのなかでは「発覚直後または一部が明らかになった時点」での公表が23.4%で最多だった。
「是正措置・再発防止策」は、「懲戒処分」のほか「業務・ルールの変更・周知」や「事業・取引のモニタリング強化」が挙がった。
多くの企業が不正防止対策に消極的
そして、不正の発生に伴う想定コストは平均で8.26億円にのぼる一方で、不正防止のためのコストは平均で0.99億円にとどまった。
また、高額の発生対応コストを見込む企業が一定数いる一方で、全体としては低い水準にとどまっている。
不正防止のためには高いコストが見込まれるものの、多くの企業が実際にはコストをかけていない事実が判明した。早急な意識改革と防止対策の執行が望まれる。
不正リスク対応として実施率が高い項目は内部通報制度、ポリシー制定、内部監査、J-SOX活用、防止研修だった。実施率が低い項目は人事施策、リスク評価、従業員意識調査、取引先選定・管理、発覚対応基準となっている。
内部通報制度を利用した年間通報件数は年間平均で15.6件となるが、5件以下が過半数となった。なお、もっとも割合が高いのはハラスメント関連の通報・相談となった。
一方、割合が低いのは、法令(刑法や独禁法)違反の通報・相談となった。ハラスメント関連は個人の問題であるため、通報しやすいが、法令違反は企業全体に関わる問題となるため、通報しにくいといったところだろうか。
早急な企業の不正対策実施が必要
筆者の世代だと、企業の不正といえば「ロッキード事件」が頭に浮かぶ。これは、世界的規模の大汚職事件で、連日、新聞やTVや雑誌など当時のあらゆるメディアで大きく報道されたものだ。
今回の調査では、実に46.5%もの企業で過去3年間以内に不正があったことがわかった。しかし一方で、コスト面からか企業の不正防止施策はあまり積極的ではない現状もわかった。
われわれが今後、豊かな生活を送るためにも、早急な企業の不正対策実施が望まれる。
img:PR TIMES