現在、さまざまな分野のサービスとITテクノロジーを合わせた「~Tech」という新サービスが花盛りだ。たとえば、教育とITのEdTech、ヘルスケアとITのヘルスTech、住宅とITのホームTechなどがある。
中でも、ITを活用した新しい金融関連サービスであるフィンテックが注目を集めている。国内金融機関では、新たなビジネス創出、商品/サービス強化を目的にフィンテックの提供、利用が本格化。
また金融機関、スタートアップ企業でもFinTechの取り組みは本格化しており、「個人資産管理」「会計/経営支援」といった従来からサービスが広がっている分野に加えて、「金融情報/投資支援」「決済」「暗号通貨」の分野でもサービス提供を開始する金融機関、スタートアップ企業が増加している。
さらに大手流通業、サービス業などにおいても「決済」分野を中心に積極的にサービス提供を開始しており、今後サービス間での競争激化が見込まれている。
このような中、IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社は、国内金融機関、並びに他の産業分野の企業も含めたフィンテックの提供、活用に伴うIT支出への波及効果を発表した。それによると、2018年の国内金融機関のフィンテック関連IT支出規模は、219億円が予測されるという。
FinTech関連IT支出規模は2022年には520億円に拡大
この調査によると、国内金融機関におけるフィンテック関連サービスの提供、活用のためにスタートアップ企業と連携、または自社で開発する目的でのIT支出規模(国内金融機関のフィンテック関連IT支出規模)は、2018年に219億円、2022年には520億円に拡大を予測している。
また、同社の分析では、フィンテックの取り組みは金融機関の既存業務、または他の産業分野の企業のビジネスにも影響が及びつつあるという。
このため、国内金融機関(既存システムを含む)、および他の産業分野の企業を含めてフィンテック関連サービスの提供、活用によって喚起されるIT支出規模(国内「フィンテックエコシステム」関連IT支出額)は、2018年に419億円、2021年には1,681億円に拡大するとみている。
またIDCによると、金融機関も含めて多くの企業では、付加価値としてマーケティング支援、トランザクションレンディングといった融資サービスの提供を開始している他、他社と連携してのエコシステムの構築を模索しているという。
特に大手金融機関、流通業、サービス業などでは自社がエコシステムの中核となるべくプラットフォームの構築に注力している。
これを背景に、今後、国内外の流通業、情報サービス業などの有力企業がフィンテックを活用した金融サービスを本格的に提供することによって、国内金融機関のビジネスに大きな影響を及ぼす可能性があるという。
これについて、IDC Japan ITスペンディンググループ リサーチマネージャーの市村仁氏は「国内金融機関は、自社ビジネスを拡大させるためにはフィンテックサービスの拡充、他社とのエコシステム構築による利便性向上が求められる。ITサプライヤーは金融機関のエコシステム構築に向けて積極的な支援が重要になる」と分析してる。
今後も市場拡大が予測されるフィンテック
フィンテックについては、もちろん政府も注目しており、経済産業省が2016年に発表した「産業・金融・IT融合(フィンテック)に関する参考データ集」によると、ビッグデータ、IoT、ウェアラブルデバイス、AI、生体認証ブロックチェーンといった関連技術が考えられるという。
このような多岐にわたる関連技術も今後さらなる技術向上と市場拡大が予測されるため、フィンテック市場も今後拡大を続けていくことは間違いないだろう。
img:日経電子版