人生100年時代、1億総活躍社会。最近、やたらと大きい数字で見せられる日本の将来。
なんとなく「みんなで頑張ろう」という空気を出したいことは伝わってくるものの、一人ひとりが100年をどう生きていくかのモデルはあまりない。
そんな人々の戸惑いが数値に表れた調査結果が発表された。
「人生100年時代」の歓迎とキャリアへの不安
総合人事・人財サービスを展開するアデコ株式会社は、2018年8月、20代から60代の社会人2,200人を対象に、「人生100年時代」に対する意識や自身のキャリアビジョンについてアンケート調査を行った。
その結果、「人生100年時代」に対して半数がポジティブに捉えているものの、自身のキャリアビジョンを明確に描けていない人は7割を超えた。このギャップは何を示しているのだろうか。
詳細にみていくと、確かに「人生100年時代に対してどう捉えているか」という問いに対して、ほぼ半数の47.9%の人が「ポジティブ」に捉えていると回答している。一方で、「ネガティブ」「ややネガティブ」との回答も40.8%となり、圧倒的なポジティブとはいいきれない。
「人生100年時代」という社会背景への問いから、自身の具体的なキャリア観に問いが移ると、ポジティブさがさらに弱まってくる。
「何歳まで働きたいか」という問いに対しては、「年齢は問わず、元気な限り働きたい」が22.9%と最も多い。これは単純にポジティブな回答とはいえず、年金受給への不安からか、定年後も働きたい、もしくは働かなくてはならない、という意識が高いことがわかる。
さらに具体的なキャリアビジョンの有無を問うと、7割以上の72.8%が「持っていない」と回答した。キャリア構築に対しても76.9%が「不安」と答え、特に学び直しや生活費などにかかるお金への不安が大きいことがわかった。
「人生100年時代」が来る、セカンドキャリアを考えなくてはいけない。それはわかっているが、何をしていいかわからなくて不安。そんな声がアンケートから聞こえてきそうだ。
一方で、明確なキャリアビジョンを持っていると回答した人たちは、情報収集やスキルアップなど、ビジョンに向けた準備を行っていることもわかった。
アデコでは、「今後ビジョンをもっていないと回答した人とのキャリアの差が広がっていくことが予想されます」と分析している。
「人生100年時代」に備えるためのリカレント教育
このキャリアビジョンへの準備として注目されているのが、「リカレント教育」だ。
就労期間の延長に技術の進歩が相まって、一度身に付けたスキルもすぐに時代遅れとなる。就労後も繰り返し学び直し、変化に対応していくとリカレント教育が重要になってくるというわけだ。
リカレント教育というと、会社を休んで大学に通ったり、転職の合間に留学したり、資金的にも時間的にも少々ハードルが高いように思われるが、もう少し気軽なサービスを活用するのも手だ。
2018年7月に株式会社仕事旅行社が始めた「仕事旅行の自由研修」は、企業研修の一環としてリカレント教育を導入できるサービス。
これまで同社が提供してきた、大人向けの1日仕事体験ツアー「仕事旅行」。さまざまな仕事のプロフェッショナルを訪問し、仕事観を聞き、その一部を体験できる。こちらを新たに法人向けに展開させた。
「仕事旅行の自由研修」では、第一線のプロフェッショナルの仕事を「楽しさ」と「学び」の両方から体験できる。150種類の職種から社員が目的や興味に合わせて選択し、1日完結で仕事体験ができる。
同サービスを導入した企業からは、「専門分野外の業務に携わることにより新たな価値観を得て、いい影響が出ている」との評価があったという。
1日という気軽さがポイントで、資金や時間を多く費やすことなく、異なる分野に触れることで得られる刺激は大きいようだ。
日本の職業慣習に合ったリカレント教育とは
もともと労働市場の流動性が高い欧米と異なり、日本は終身雇用からやっと舵を切り始めたところ。働き方の意識としても制度としても、本来の意味でのリカレント教育の普及には時間がかかりそうだ。
そういったなかで、リカレント教育を広義にとらえ、スキルアップ、働きがい、パラレルキャリアなどを見直す機会として「仕事旅行の自由研修」のようなサービスを利用するのは有効だろう。
長くなった就労期間を耐えるのか、学び続けるチャンスと捉えるのかで、人生100年の過ごし方は変わってきそうだ。