日本年金機構がデータ入力を委託していた会社が規約違反をして、海外業者へ再委託をしていた問題は記憶に新しい。

個人情報の安全性が脅かされる由々しき事態ではあるが、このようなリスクは、なにがしかの業務を外部へ委託する民間の企業にとっても決して他人事ではないだろう。

企業経営のリスク管理におけるコンサルティングなどを行う株式会社GRCSが行った調査でも、多くの企業が外部委託先の管理に課題が感じていることがわかった。

企業の約7割が外部委託先の管理に課題を感じている

株式会社GRCSでは2018年8月に、20~60代の男女(有効回答数:551)に対して、企業の外部委託先管理に関する実態調査を実施した。

その結果、外部委託先の管理に関して約7割もの企業が課題を感じていることがわかった。

課題の内容として、「リスクの可視化が困難(42.6%)」と回答する企業が最も多かった。多くの企業が、外部委託のリスク管理などの面で問題意識を持っていることがわかった。仮に委託先の管理でリスクを把握できず対策に遅れが生じれば、さらに問題が深刻になってしまう可能性がある。

また、その他には「委託先情報の更新が大変(30.9%)」や「委託先が多くすべてに連絡することが大変(28.3%)」との回答も多かった。

企業の多くは複数の委託先を抱え、その管理に負担を感じ、効率化を求めているようだ。委託先が多く、その管理が煩雑になればなるほど、十分な管理が行えずにリスクも大きくなってしまう。

冒頭にも述べたが、日本年金機構が巻き起こした問題は、多くの企業でも起こりえるのだ。企業には、リスク軽減のための業務効率化などの対策が求められるところだろう。

企業の約6割が外部委託先の管理ツールとしてExcelを利用

同調査では、外部委託先の管理にどんなツールを利用しているかについても聞いた。結果、「Excel(57.9%)」との回答が最も多く、それに続いて「紙(31.9%)」を使っているとの回答も全体の約1/3に及んだ。

外部委託先の管理に課題や負担を感じている企業が多い一方で、紙やExcelのような手動での管理にとどまっている企業が多いようだ。

紙やExcelによる管理ではヒューマンエラーも起こる可能性があり、担当者にとっては大きな負担にもなりえる。企業はより手間がかからず品質も高い、専用ツールの利用を検討してもよいのではないだろうか。

ちなみに外部委託先の管理において商用ツールを使っているという企業は、紙に続いて全体の約3割と多かった。商用ツールによって業務効率化・リスク管理を行う企業も一定数は存在するようだ。

BPOサービスの市場規模は2022年には8,769億円に拡大する見込

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)に関連したトレンドや実態調査などのマーケティングリサーチを実施するBPO総研では、2018年8月に業界の現状に関するレポートを発表した。

BPOとは、自社の業務プロセスを外部企業に委託することを指し、アウトソーシングの一種とされる。

この調査によると、2017年のBPO市場は前年比4.7%増の7,346億円を記録した。また2017年~2022年の年間平均成長率が3.6%になると予測し、結果、2022年の同市場規模は8,769億円にもなる見込みとのことだ。

この推算にもみられるように、少子高齢化による人材不足で外部委託の必要性は今後も増していくことだろう。それはその分だけ、委託元である企業のリスクや管理負担も増大化することを意味している。企業は、その対策に迫られている。

AIによる業務代替は人手不足解決の糸口となるか

野村総合研究所と英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究によると、日本国内601種類の職業のうち、10~20年後には約49%がAIやロボットによって代替可能になる推計とのことだ。

特に必ずも特別な知識やスキルが求められない職業、データ分析や秩序的・体系的な操作が求められる職業に関しては、AIにより代替できる可能性が高いという。

実際、AIによる代替は少しずつではあるが始まっており、例えば株式会社タレントアンドアセスメントでは2018年7月から、アルバイトや専門職などの面接においてAIが面接官になるサービス「SHaiN EX(シャインイーエックス)」を提供している。

このサービスでは、AIが人間に代わって採用面接を行い、面接者に企業が求める資質があるか分析し診断結果をレポートする。

AIやロボットにより外部委託の必要性を減らしたり、また外部委託の管理業務にもAIを活用したりといった対策も、企業にとっては有効で、今後は避けてとおれないだろう。

外部委託先の管理の問題に企業が今まで以上に向き合うことが必要

株式会社GRCSが行った調査では、多くの企業が外部委託に課題を抱え、負担を感じていることがわかっている。今後は少子高齢化によってさらに人材が不足すると考えられることから、外部委託の問題はさらに大きくなることが予測される。

企業は今まで以上にこの問題と向き合い、商用ツールやAIの活用などで対策していくことが求められるのではないだろうか。

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