日本の企業は今、少子高齢化による深刻な人材不足に悩まされている。厚生労働省によれば、2018年の日本の有効求人倍率は1.58倍で、44年ぶりの高水準となった。
職を求める側からすれば喜ばしい数字ではあるものの、企業からみれば求める人材を探しにくく、採用のための負担やコストも大きくなっていることを意味している。そしてその対策として、政府では外国人労働者の受け入れを進めている。
政府は2025年頃までに50万人の外国人労働者受入を見込んでいる
外国人総研は、2018年9月18日に、外国人総研レポート「日本における外国人材受け入れへの取り組み」を発表した。外国人総研は、外国人雇用に関するニュース配信やマーケティングリサーチなどを行い、企業の外国人雇用のサポートを行うシンクタンクだ。この記事では、本レポートの概要を紹介する。
レポートでは、日本政府が「骨太の方針2018」において、外国人の労働者としての受け入れを大幅に推進していることを挙げている。政府は2025年頃までに、建設や農業をはじめとした5分野において、総計50万人の外国人労働者の受け入れを見込んでいるとのことだ。日本の労働力不足が深刻化する中、外国人労働者の受け入れは待ったなしで進めなくてはならない事項だろう。
日本は2022年までに2万人の高度外国人材認定を目指す
日本では2012年5月から、外国人の学歴や職歴、年収などを点数化し人材受け入れの判断材料とする「高度人材ポイント制」を導入している。この制度では、学歴などの項目によって割り出された点数が70ポイントを超えた外国人を「高度外国人材」と認定。高度な専門知識や技術をもつ、外国人の受け入れ促進に活用してきた。
2015年には高度外国人材に特化した在留資格「高度専門職」を新設。中でも「高度専門職1号」なら5年、「高度専門職2号」であれば無期限の在留期間が付与されるようになった。この制度に基づき、2012年~2017年までの5年間で1万人以上の外国人が、高度外国人材の認定を受けた。日本では、2022年までに2万人の認定を目指している。
来日する外国人に点数をつけることに対し賛否があるかもしれない。しかし日本の企業に大きく貢献してくれる外国人を確保するためにも、彼等を優先的に受け入れられる体制を整えることは価値があるだろう。
外国人採用の4つのメリットとは?
外国人総研によれば、高度外国人材を受け入れている企業では、彼等の活躍によって多彩な文化や価値観に合わせた新しいビジネス創出を実現しているという。
経済産業省によると、外国人材採用のメリットは以下4つの視点に分類されるとのこと。
- 事業の海外展開・新規顧客の獲得
- 外国人材目線での商品開発・サービス提供
- 新たなビジネスモデル構築
- 社員の意識変革
例えば1の事例として、新潟県のフジイコーポレーション株式会社の取り組みがあげられる。同社では、4ヵ国語のホームページを制作することによって海外での売り上げが大幅に向上したとのことだ。同社では外国人材に対し「日本永住型」の他、将来母国で活躍してもらう「のれん分け型」などのキャリアパスを用意して、国内外で活躍する社員育成につとめていると言う。
また2については、沖縄ワタベウェディング株式会社の事例がある。同社では東アジア出身の外国人を採用して、海外顧客の嗜好にあった沖縄リゾート婚サービスを開発。外国人顧客の満足度向上に貢献したとのことだ。
これら2つの事例にみられるように、訪日外国人が増加し、日本に興味を持つ外国人が増える現代においては、日本企業にとって有能な外国人材は重要な戦力となりそうだ。
人手確保が難しい5分野で新たな在留資格を新設
「骨太の方針2018」では、人材確保が難しいと言われている介護・農業・建設・造船・宿泊の5分野について新たな在留資格を新設し、単純労働で外国人労働者を受け入れることが検討されている。
この資格を付与するにあたり、日本語能力・技能に関する試験は実施するものの、技能実習の修了者であれば試験が免除されるという。在留資格を取得する手段が増えることから、日本に働きにくる外国人の数は増えることだろう。
現在、日本国内で働いている外国人労働者は約128万人(※)存在するが、政府はこの方針によって、50万人の外国人労働者増加を目指している。外国人総研は、外国人労働者によって、日本のさまざまなビジネス領域で新しい風がもたらされるだろうと語っている。
※2017年10月時点 厚生労働省調べ
外国人労働者をどう受け入れていくか
日本の労働路力不足を補うためにも、外国人労働者の受け入れを推し進めることは必要だろう。この記事で紹介した事例にあるように、特に外国人との取引において、日本の企業と外国人の重要な橋渡し役として外国人労働者は活躍してくれるだろう。また単純労働の現場においては、既に外国人労働者が欠かせぬ戦力となっている現場も多い。
そんな中で、文化や価値観が大きく異なる外国人労働者と日本人の間で、軋轢や衝突は多かれ少なかれ発生すると考えられる。日本の企業が彼等をどう受け入れ、どうやって活躍してもらうか、試行錯誤していくことが重要となるだろう。
img:PR TIMES