ここ数年、「コワーキング」という言葉を良く耳にするようになった。コワーキングとは、専用の個室スペースを持たず、他の事業者とスペースを共有するワークスタイルだ。
近年、日本でもこのスタイルでのワーカーが増え、コワーキングのためのオフィスである「コワーキングオフィス」も増加している。
これまでは、個人やスタートアップ企業がオフィスコストを抑える目的で利用する、小規模なコワーキングオフィスが多数を占めていたという。
しかし、最近では大規模なコワーキングオフィスが増えてきたことで、生産性向上や従業員の利便性を高める手段のひとつとして、大企業もコワーキングオフィスの利用を検討するようになってきているという。
CBREは、特別レポート「コワーキングオフィス - 新たな働き方のプラットフォーム」を発表した。このレポートは、コワーキングオフィスとその他のフレキシブルオフィスの分類を明確にしたうえで、コワーキングオフィスの現状と今後の見通しについて考察したもの。
これによると、コワーキング市場は、当面は拡大が続くと予想されるという。
東京都内のコワーキングオフィスは346拠点
同社によると、東京都内におけるコワーキングオフィスの市場規模は、2018年9月時点で346拠点、6.6万坪だ。これは東京23区の賃貸オフィス全体の面積の約1.0%に相当する規模でしかない。
しかし、東京23区の賃貸オフィス成約面積に対する、コワーキングオフィスの開設面積の割合でみると、2018年上半期(1月~6月)時点で7.9%に達しているのだ。
このレポートでは、コワーキングオフィスのこれまでの増加の背景として、
- 起業数の増加
- 空室率が高止まりしていた局面でのオーナーのリーシング戦略
- リモートワークの必要性の高まり
- 生産性向上がより一層求められていること
などを挙げている。このため、起業数の増加は今後も続くとみている。
この背景をもとにレポートでは、東京においては2020年にオフィスビルの大量供給を控え、労働需給がタイトになっているためリモートワークを含む新しい働き方を推進する企業は今後も増えると予測している。
これに加え、人手不足が続くなかで、起業にとって生産性向上がこれまで同様に課題となるという。これらにより、コワーキング市場は、当面は拡大が続くと予想している。
また、エリア別でコワーキングオフィス市場規模が最も大きいのは、「丸の内・大手町」、次いで「六本木・赤坂」、「渋谷・恵比寿」だった。
一方、既存のオフィス市場に対する割合で見ると、高い順に「城西」、「渋谷・恵比寿」、「六本木・赤坂」、「丸の内・大手町」と続いた。これらのエリアでは、IT、金融(Fintech)、スタートアップ企業の集積地を中心にコワーキングオフィスの浸透が進んでいるからだ。
そして、全346拠点のコワーキングオフィスのうち、80%にあたる276拠点がGrade B未満のオフィスビル、あるいは住宅、ホテル、物流施設、公的施設といったオフィスビル以外の用途の施設に入居している。
企業がコワーキングを利用する際には、従業員の安全を確保するためにも一定のグレード以上のビルへの入居を選択する。しかし、現状ではこのような例は非常に少ないという。
コワーキングオフィスの利用料を坪単価でみると、ランニングコストは一般オフィス賃料をやや下回るという。たとえば、数の多いGrade Bでみると、一般オフィスの25,500円/坪に対し、Grade Bは23,600円/坪といった具合だ。
CBRE ワークプレイスストラテジー ディレクターのリトー・ルホン氏は、「コワーキングオフィスのユーザー層は、スタートアップやミレニアル世代だけではなく、一般企業からの需要も増えていくことが予想される。オフィスの果たす役割はますます重要になっていくであろう」とコメントしている。
また、CBRE リサーチ アソシエイトディレクターの五十嵐芳生氏は、「企業の主力事業のライフサイクルがますます短くなっている。そのため、オフィスの契約にも、フレキシビリティが求められるようになってきており、コワーキングオフィスの利用を検討する企業も増えてきている」とコメントしている。
対等な関係でお互いをサポートするコワーキング
コワーキングオフィスのメリットは賃料の安さはもちろんだが、利用者同士がコミュニケーションできるという点だ。組織のなかのような縦関係ではなく、対等な関係でお互いをサポートできるのだ。
「働き方改革」の進行やミレニアル世代の台頭で、世の中のワークスタイルに対する意識が変化するなか、今後もコワーキング市場は拡大すると予測される。コワーキングオフィスの動向も引き続き注視していく必要があると思われる。
img:PRTIMES