深層学習(ディープラーニング)技術の発展によってさまざまな情報の高度な認識が可能になってきた。しかし、開発当時はこの技術を製造業の現場で手軽に扱えるような仕組みがなく、受託開発企業と共同でPo(概念実証)に取り組める企業のみが多く先行しているような状況だった。
これは、印刷製造業も例外ではなく、業界では業務効率化という課題に対して深層学習技術を活用する取り組みを進めてきた。このようななか、印刷製造業向けのAIアプリケーションを開発するスタートアップ、タクトピクセル株式会社は、印刷製造業向けAIプラットフォーム「POODL プードル」をリリースした。
計算資源の調整を低コストで行えるアーキテクチャを採用
プードルは、印刷製造業界の課題解決のためのツールという位置づけで、同社ではこれを基盤とした特化型のアプリケーションの開発を目指しているという。
最大の特徴は、Amazon Web Service(AWS)上で構築され、深層学習の学習処理のために必要に応じて計算資源を調整することでコストを抑えるアーキテクチャを採用していることだ。
Dockerコンテナ技術を用いて開発されているため、セキュリティ要求の厳しいオンプレミス環境での立ち上げも可能だ。
また、高額で突発的な計算資源が必要な学習処理のみをクラウドにし、データの管理や学習データの作成作業(アノテーション作業)をオンプレミスで行うといった、ハイブリッド型のアーキテクチャも想定されているという。
さらに、深層学習フレームワークとしてはデファクト・スタンダードとなっているTensorFlowを使用しており、各工場での課題に適用するため、課題の性質に応じて学習のアルゴリズムやデータの前処理を工夫するなどのチューニングをサポートしている。
また、製造現場で要求される高精度な予測モデルを作成のための大量かつ高品質なデータである数十万枚規模の画像を高速に安定して学習するために、最新のGPUを活用するほかメインメモリ上に乗り切らない画像データを効率よくキャッシュする仕組みを開発した。
学習モデルを実際に利用する場合は、Webブラウザ上から利用する方法の他に、インターネットからWeb APIを通じた利用や、学習モデルをオフライン環境にダウンロードして既設の装置へ組み込むといった方法がある。
Web APIはマイクロサービスの仕組みを採用しており、REST APIによって今後の機能追加やサードパーティ製品との連携を想定している。そのため印刷現場の既存装置との連携も容易で、製造設備を支えるシステムインテグレータ企業とも連携しながら導入を進めているという。
今後は、印刷製造現場の課題である品質保証のほか、デザインデータの作成、生産計画の策定、印刷機の調整作業など、順次サービスを拡大していく予定である。
目視チェック工程の効率化が可能に
同社では、POODL プードルによる業務効率化の事例として、印刷後の目視チェックの自動化を挙げている。
それが、上の図である。依然として人の目による目視チェックが不可欠な印刷現場において、従来の画像処理手法では、難しかった入力情報を用いた微妙な識別や、品質検査の効率と歩留まりの維持など、従来の画像検査に加えてこの製品の仕組みを活用することにより、目視チェック工程の効率化が可能となるという。
印刷製造業の業務効率化に大きく寄与
POODL プードルは、既存設備への導入の容易さ、低コスト、特化型のAIという特徴を持つ印刷製造業向けのAIアプリケーションだ。セキュリティ要求の厳しいオンプレミス環境での立ち上げも可能ということで、印刷製造業の業務効率化に大きく寄与してくれることは間違いないだろう。
img:PR TIMES , Tactpixcel