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東日本大震災・熊本地震・相次ぐ豪雨や台風などで大きな被害が続いており、復興のため、また道路などのインフラの老朽化も問題となっており建設業への需要は高まっている。
一方で少子高齢化の波は建設業にも押し寄せ、需要が高まるなかで人材不足を解消する手立てが求められている。
そんな中で発表された国土交通省の2019年度(平成31年度)予算概算要求では、こういった背景が反映されたものになった。
公共事業関係費の要求額は6兆1,736億円で、例年を上回る増額となる
人材紹介事業で知られるヒューマンタッチ株式会社運営のヒューマンタッチ総研では、国土交通省の2019年度(平成31年度)予算概算要求からみる建設業の将来見通しをまとめた。
それによると、国交省が8月末に発表した「2019年度予算概算要求」では、公共事業関係費の要求額が6兆1,736億円(前年度当初予算比119%)だった。直近4カ年で公共事業関係費の要求費が、前年度当初予算比116%程度で推移していたのと比べると、例年以上の増額要求となっていることがわかる。
それでは、実際にどんな項目において増額要求がなされているのだろうか。
18年度当初予算から大きく上回った主な項目は防・減災、インフラ老朽化対策
18年度当初予算と比べ、要求額の増額が目立ったのは主な項目は以下のとおり。
- 「水防災意識社会」の再構築に向けた水害対策の推進:5,273億円(同133%)
- 地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援:1兆3,431億円(同121%)
- 将来を見据えたインフラ老朽化対策の推進:5,440億円(同121%)
東日本大震災をはじめとして、熊本地震、西日本を中心とした豪雨など自然災害が立て続けに発生している昨今では、防・減災対策は最も重要視すべき課題である。要求額の大幅増加は、そういった日本の現状をあらわしているといえるだろう。
また国交省の試算では、2013年度のインフラ等の維持管理・更新費用は約3.6兆円、10年後の2023年度は4.3~5.1兆円、20年後の2033年度は4.6~5.5兆円程度と推計されている。
ヒューマンタッチ総研では、「防・減災に対する継続的な対策や老朽化する社会インフラへの対策を中心に、今後も予算額は伸び続けるだろう」との見解をしめしている。防災・減災や社会インフラの老朽化は生活に切迫した課題であることから、国民も納得するところだろう。
働き方改革・ICT推進の要求額も大幅に増加
少子高齢化による労働人口不足は、建設業においても深刻な問題だ。そして、この問題の対策となる働き方改革・ICT推進関連でも、以下の通り目立った増額要求がみられるようだ。
- 建設業の働き方改革の推進:1億2,700万円(同153%)
- 誰もが安心して働き続けられる建設業の環境整備:1億円(同175%)
- ICTの全面的活用により建設現場の生産性向上を図る「i-Construction」の推進:23億円(同139%)
ヒューマンタッチ総研では、建設業の人材確保・育成に向け厚生労働省も「建設事業主等に対する助成金による支援」に58億4,000万円(同110%)を要求している点に着目。両省の連携による政策的支援が今後も維持される見込みとしている。
建設業への需要が高まる中、その一方で労働者が足りない問題は、業界としても最優先で取り組むべき課題と言えるのだろう。働き方改革・ICT推進による人材確保・効率化が、対策として重要となることは想像するに難くない。
国土交通省も本腰を入れて取り組む建設業界のICT化
増額要求が目立った項目として挙げた「i-Construction」とは、建設現場へのICT導入で生産性向上を図るという国土交通省が推進するプロジェクトだ。
i-Constructionでは、全ての建設生産プロセスにおいてICT・3次元データなどを活用することによって、2025年までに建設現場の生産性を2割向上させるという目標を掲げており、具体的なロードマップも示されている。
この流れを受けるかのように、テクノロジーによって建設業の生産性を向上させようとするいわゆる「Con-Tech(コンテック / Construction Tech の略)」への投資は増え続けており、関連するサービスも続々登場している。
例えばその中の1つ「ANDPAD(アンドパッド)」は、建設業界に特化した業務改善ツールだ。稼働状況・工程表・現場写真といった情報の、クラウド上での一括管理を可能とする。
デスクワークメインの一般的な企業であれば、業務のICT化は当たり前に行われていることだ。現場での体力作業がメインとなる建設業も人材不足に悩むのは同じで、その解決のためにもICTやテクノロジーの力は必須だろう。建設業のICT化・テクノロジー化が進むことは誰の目にも明らかだ。
建設業への需要が増える中、人材不足の問題にどれだけ立ち向かえるか
ヒューマンタッチ総研も指摘するとおり、防・減災に対する継続的な対策・老朽化する社会インフラ対策を中心に予算は増額され、建設業への需要は増え続けることだろう。
他業種同様に、少子高齢化による人材不足に直面する建設業が、ICT化・テクノロジー化でどれだけこの課題に立ち向かえるかが注目される。