建設業界の営業活動に、変化が起こっている。
インターネット上のマッチングサイトは、これまで個人のスキルと企業を結び付けるなど、フリーランスや副業といった新しい働き方を開拓してきた。全国に散らばるプレイヤーを効率的にマッチングし、リソースの有効活用を実現する。
こうした動きが、建設業界でも見られるようになってきた。従来、人と人、会社から会社へと信用を前提に行われてきた営業活動に、あらたなアプローチの仕組みを導入する。
今回紹介するのは、登録ユーザー数19,000人を超える建設業界特化型マッチングサイト、「請負市場(うけおいいちば)」だ。
建設業界に特化したマッチングサイト「請負市場」とは
「請負市場」は、建設業界に特化したマッチングサイトだ。「工事を発注したい会社・個人」と「工事を受注したい会社・個人」とを、インターネット上でつなぐ。
会員制の掲示板サイトという形になっており、会員登録すると記事の投稿・閲覧ができる。記事を見たあとは会員同士、直接のやり取りとなる。基金・セミナー・教材販売・広告などの収入で運営され、入会金・年会費・マッチング料は基本的に無料だ。
現在、登録ユーザーは19,000人、登録案件は5,000件を超える状況となっている。
想定されるユーザーは、建設業界の幅広い参加者だ。ゼネコン・ハウスメーカー・中小建設会社などの企業や、一人親方・職人・一般施主といった個人が利用する。他にも、不動産・運送・設計事務所・リース・建設資材から行政まで、多様な参加者がインターネット上で受発注可能な相手を探す。
仕事を請ける側には、「閑散期に仕事がほしい」「新規取引先を開拓したい」「建設業に新たに挑戦したい」といったニーズがある。仕事を出したい側からは、「繁忙期のみ外注したい」「職人不足で悩んでいる」「同業の連携がほしい」などのニーズがあり、マッチングすることになる。
請負市場では、県内同士はもちろん、日本全国の会員同士でのマッチングが可能だ。2020年のオリンピックを前に、人手不足が懸念されている東京では、地方の力が必要とされている。距離を超えたマッチングサイトによるアプローチが、その可能性を広げるだろう。
請負市場は、さらなる案件マッチングの強化に向けて、サイトのリニューアルを進めている。
「請負市場」がリニューアル。AIによる自動提案、エスクロー決済、評価制度導入など
2018年9月18日、株式会社メディオテックは、同社が運営する「請負市場」のリニューアルの第1弾を実施した。メディオテックは、「請負市場」運営のほか、再生可能エネルギー発電システム販売事業、電気計測機器製造・販売事業などを行う企業だ。
リニューアル第1弾では、メッセージ機能の改修とおすすめ企業・案件ランキングが導入された。メッセージ機能では、従来のメッセージに加え、スタンプで意思表示やステータスの変更ができるようなる。よりスピーディーな取引を可能にする機能だ。
また、評価の高い企業や、お気に入りに登録されている案件のランキング自動表示も始める。リアルタイムの評価を見ながら、受発注を行うことができるようになった。
さらに「AIによる案件自動提案機能」「エスクロー決済機能」「新評価制度」を、年内をめどに追加する予定だ。AIによる案件自動提案機能では、企業情報や閲覧履歴をもとに、マッチしそうな案件や企業を自動提案する。営業活動を抑え人件費削減につながる。
エスクロー決済機能は、一般的にいえば、商取引の際に第三者を仲介させて安全を担保する機能だ。買い手が第三者に代金を預け、売り手は入金を確認し商品を発送。商品の到着が報告されたら、第三者は売り手に代金を送る。報酬を支払ったのに仕事が遂行されない、受注した仕事が完了したのに報酬の支払いが実行されないといったリスクを軽減し、トラブルを防止する。
新しい評価制度として、「PRO認定制度」を導入する。より厳しい基準をクリアした企業に付与され、サイト内で特典を受けられるようになる制度だ。初めて利用するユーザーでも、安心して取引ができるようになる。
他にも有料登録ユーザーを設け、よりよいマッチング環境を提供する。
急に発生した案件を上位に表示する機能・メール通知機能では、リアルタイムの受発注が可能だ。企業ホームページ制作機能も提供する。企業ブランディングをアピールすれば、差別化が図れる。社員教育の動画配信を行い、会社全体のレベルアップを目指す。「PRO認定」を受けたユーザには、インタビュー記事を掲載し、認知度を上げ契約に繋げる。
「請負市場」では集中的に、サイト機能の拡充を行うようだ。
人手不足へのソリューションとなるマッチングサイトの充実
建設業界にITを導入することは、「Con-Tech(コンテック)」と呼ばれる。今回紹介した「請負市場」も、建設業界の営業活動にマッチングサイトを導入するもので、Con-Techの一つといえるだろう。
発表されたリニューアルでは、数多くの機能が追加される。建設業界は人手不足が目立つ業界でもあり、マッチングサイトへのニーズも高いのかもしれない。基本的な掲示板からスタートしているので、追加される機能の一覧は、マッチングサイトに望まれる要素を網羅しているようにも見える。
人手不足は建設業界だけでなく、IT・運送・介護・保育などさまざまな業界で起こっている。リソースの有効活用のためにも、マッチングサイトの充実が進んでいくことになるだろう。