9月に入り、そろそろ夏も終わろうとしている。就活生にとってはいよいよ本格的な「就活」の季節の到来だ。

就活といえば、最近話題になっているのは、経団連が2021年入社から会員企業向けに会社説明会や面接の解禁時期などを定めた採用活動の指針の廃止意向を表明したことだ。

具体的には6月1日開始、10月1日に内定という採用活動の規定をなくすことなどが検討され、就職活動の通年化が確実視されている。これにより、就職活動の長期化などが懸念され、就活生はその行方が気になるところだろう。

一方で、最近ではインターネットの普及により、就活の仕方も変化してきている。ネット上の口コミなどで企業の情報収集はより深く、簡単になり、さらに、新卒と求人企業のマッチングサービスなどの登場により、その選択肢はどんどん増えている。そんな中、また、新たな選択肢が登場した。

ウェブ制作の株式会社サーフボードは、2020年度の新卒者を対象にSNS上で合同企業説明会を行う「合説GO!」のサービスを本格的に開始した。通年採用や中小企業のニーズに応え、SNS上で合同企業説明会のサービスを11月より北陸から順次日本全国へ提供するという。

SNSで合同企業説明会を行う「合説GO!」

冒頭でも述べた経団連の発表加えて、リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査 2019年卒」によると、来春2019年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.88倍で倍率は7年連続上昇、全国の求人総数は前年の75.5万人から81.4万人へと増加、求人に対して38.1万人の人材不足、中小企業の求人倍率は過去最高の9.91倍となり、新卒者の採用難は加速しているという。

また、就活生の合同企業説明会への参加やWEBエントリー数も減少が続き、仮に合同説明会に出展しても、中小企業は知名度が低くブースを訪れる就活生が少ないという問題点がある。「合説GO!」はこのような通年採用や中小企業のニーズに応え、業界で初めてとなるネット上での合同企業説明会のサービスを提供する。

企業側のメリットとしては、従来の合同説明会の、ブランド力の高い企業に就活生が集中し、知名度が低い中小企業のブースは閑散としているといった現象を解消する。

「合説GO!」ではブランド力の影響が少なく、参加人数に影響することはないという。ブースの大きさによる人数制限も不要で、時間や場所の制限を受けずにたくさんの就活生とのコミュニケーションが可能となる。

また、ブース装飾、設営や休日開催時の社員動員などもなくなり負荷が軽減、低コストで高い効果が見込める。また距離や開催日時の制約でリーチが難しかったUIターン希望の就活生とのマッチングも実現する。

コーディネーターのガイドに沿ったSNSの投稿をすることで、就活生が求める情報を的確に提供、企業情報を多面的(社風、仕事風景、社員の活躍、福利厚生等)に配信。ブランド力の弱い中小企業でも情報発信を工夫し、積極的に企業PRを行うことができ、就活生の企業に対する理解不足による内定辞退や早期離職の減少も見込めるという。

参加就活生は「つながるボタン」でエントリーでき、用意されたMyページ上でエントリー学生の情報が自動的にデータベース化されるため、その後の管理や選考案内などの連絡や事務作業もスムーズだ。

一方、就活生のメリットとしては、県外へ進学し、IターンやUターン就職を考えている学生や海外に留学している学生が、スマホを使って時間や場所の制約なく参加することができる。移動の時間やコストも節約できる。

実際の合同説明会と異なりいつでも参加できるため、都合が合わず不参加ということがなく、機会を逃すことがない。また複数の会社を同時に比較分析できるため、より充実した企業研究が行えるのだ(本人だけでなく同級生、先生、家族とも一緒に企業研究を行うことが可能)。

関心が高まった企業に対しては「つながるボタン」で簡単にエントリーでき、就活生にとって企業の採用担当者や実際に働く様子を身近に感じることができる。

SNSで合同企業説明会を行う「合説GO!」

同社では2016年春に新卒求人企業向けに内定者&インターン生のWフォローSNSアプリ“Chaku2 NEXT(ちゃくちゃくネクスト)”のサービスを開始、現在北陸や首都圏を中心に約100社が導入している。

この“Chaku2 NEXT”を2017年に熊本日日新聞社が「地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業(九州経済産業局主催)」として「新卒採用支援プラットフォームアプリ:名称“RE-CON”」で導入、2018年春に効果が検証され、2018年度はさらにブラッシュアップして継続する運びになった。これを受け、同社では「合説GO!」をスタートさせることとなった。

今後も続く学生優位の売り手市場

近年は、採用市場は学生に優位な売り手市場といわれている。実際に、株式会社ディスコの調査によると、面接開始時期は2月以前〜3月が増え早期化が進行しており、エントリー、選考応募者数のいずれも、数が減少しているという。また、選考途中辞退や内定辞退も前年より増加傾向にあるという。

企業の2020年の卒業予定者に対する採用計画をみてみると、採用人数の見込みは「増加」が「減少」を上回る結果となり、今後もこの売り手市場は引き続き拡大傾向が続くと考えられるという。

また、採用に関してどの企業もPRをしていかなければ、この売り手市場のなかで採用を勝ち取ることが難しいのではないかと考えていることもわかった。

一方、学生側は就職場所へのカジュアル化が進み、より自分らしくいれる環境を選択する学生が多くなっているらしい。

ネットが大きく変えた就活

売り手市場という言葉からは「バブル期」が連想される人も多いだろう。就職は非常に容易で、その学生によっぽど大きなマイナスポイントがなければ、誰でも大きな企業に入れたといっても過言ではない状況だった。

しかし、同じ売り手市場でもバブル期と現代では事情が違う。好景気、不況などの世情もあるが、一番大きな違いは「インターネット」というかつては思いもつかなかった情報手段の登場だろう。これは、学生側、企業側ともに大きな変化をもたらしている。

今回の「合説GO!」はSNSで合同説明会という新手法を打ち出してきた。これが、就活にどのような影響をもたらすか、今後の動向に注目したい。

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