兼業で地方創生実現へ。都市部の“副業への期待”と地方の“人材確保”を行う「兼業マッチング支援」

少子高齢化による人材不足は、人口の多い都市部ですら大きな問題となっている。この流れは今後さらに進むと想定され、新しい労働者となるはずの若者は減っていく一方である。

そして、この問題は都市部に人材を奪われている地方ではさらに深刻だ。地方では、そもそも労働人口減少が進んでいる上に、その限られた人材をめぐって同業他社との採用競争も激しくなっているという。人材不足が原因で、事業継続が危うくなる企業も少なくない。

そんななか、副業というかたちで都市部の人材の労働力を地方企業が活用しようとする動きが活発化している。

副業をしたい都市部の人材と新規事業に挑む地域企業をつなげるマッチングWebがオープン

地域中小企業と都市部の若者をつなげる「兼業マッチング支援」を運営しているNPO法人G-netは、人材不足の課題を持ちながらも新規事業などに挑戦する地域企業と、兼業・副業というかたちで地元や興味あるテーマに関わりたいと考える都市部の人材をつなげる兼業マッチングweb「ふるさと兼業」を2018年9月13日(木)にオープンした。

G-netによれば、兼業のマッチング支援の動きが近年活発化しており、マッチング支援を行うウェブサイトは、ここ半年~1年で増加傾向にあるという。一方で、2018年1月には厚生労働省が副業に関するガイドラインを改訂し、副業を容認する動きをみせている。

ふるさと兼業では、こういった時代の流れを背景に、複数の地域団体が連携・運用する仕組みを導入済。各地域を知り尽くした団体が、それぞれの地域ごとに兼業案件を作成・発信できる体制が整っている。

現時点で、北海道、石川、岐阜、鳥取など、全国10地域が連携を予定。オープン時点で5地域15プロジェクトを掲載しており、2019年3月までに、20地域100プロジェクトへと拡大予定とのこと。

都市部で仕事をしながら、スキマ時間を活かした故郷での兼業や、得意分野による地方企業での兼業などニーズは高まりつつある。しかしながら、これまでは兼業に関する地域の情報が乏しく、参画障壁も高い現状があった。

そこでふるさと兼業では、複数の地方団体との連携によって具体的な事業案件を掲載。くわえて受入側・参画側に対する丁寧なフォロー体制を整えることで、この課題の解決を目指している。

ふるさと兼業は、さまざまなかたちで副業したいと考える都市部の人材と、都市部へ流出した人材を少しでも取り戻したい地方の企業がWinWinでつなげる好例になりそうだ。

各地域団体の協働と専属コーディネーターがバックアップ

ふるさと兼業の特徴として、まず各地域団体が協働することにより、各地に密着した情報発信を可能としたことがあげられる。これにより一極集中管理で発見できない埋もれた仕事の発掘を可能とする。

また兼業について受入側・参画側には十分な経験がなく、いろいろな環境が整備されていない現状があり、トラブルのリスクは避けられない。ふるさと兼業では、各地域へ専属コーディネーターを設置し、細やかなフォローを実施。リスクの軽減をはかるという。

いくら故郷で仕事をしたいと考えても、都市部のように十分な採用情報を得られないのが現状ではなかろうか。また遠隔の副業を活用するなら、受入側にも十分な準備も必要となる。ふるさと兼業の体制は、これらの課題を解決してくれることを期待したい。

情報収集のためのコミュニティやお試しプログラムが充実

ふるさと兼業では、都市部の人材と地方の企業をスムーズにつなげるにあたり、他にもいくつかの工夫をしている。

例えば副業・兼業に興味のある人材を対象としたオンラインコミュニティ「パラレルキャリア準備室」を設置。パラレルキャリア準備室では、参加者同士で情報交換したり、実践者の生の声を聴けたりする。

スキマ時間で情報収集をしたいと考えるユーザーには特に便利だろう。

その他、移住しなくても参画が可能な短期間の地域訪問プログラムや、お試し兼業プログラムなども用意。

自宅の近隣で働く場合と違って、都市部・地方と距離感があればすくにそれを縮めるのは困難だろう。ふるさと兼業のこれらの取り組みは、この距離を縮めるのに役立ちそうだ。

時間単位で都市部の人材と地方の中小企業をつなげるサービスも

副業・兼業をしたい都市部の人材と地方の企業をつなげるサービスは他にもある。ユニークなところで注目したいのは、ネクストレベル株式会社が2018年5月にオープンした時間発注型求人サービス「relocal(リロカル)」だ。

relocalでは、兼業・副業したい首都圏の人材がリモートワークというかたちで地方の中小企業のプロジェクトへ参加するためのマッチングを行う。ユニークなのはそのマッチング方法。地方の中小企業は、時間単位で人材を発注することができる。例えば18時~20時で働きたい、仕事を依頼したいといった要望をマッチングするわけだ。

本業やプライベートに影響しない時間を選んで副業・兼業したいと考えるユーザーにとっては最適なサービスと言えるだろう。

地方での柔軟な人材活用の動きに期待

今回紹介したふるさと兼業やrelocalは、都市部の人材を副業・兼業というかたちで、地方で活用しようとしている。副業・兼業したいユーザーにとって、いずれも地方で副業を探すのに役立つサービスといえるだろう。

都市部で本業をもっている人材を、いきなり何もわからない地方へ移住させ働いてもらうのは難しい。地方の中小企業が活性化するためにも、まずは副業というかたちで柔軟に都市部の人材を活用するのは有益だ。

都市部の人材が地方の仕事のことをよく知れば、都市部・地方間で人材が循環する流れにもつながるのではないだろうか。

img:@Press , PR TIMES

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